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「グングニルを消して。それから、動機を聞かせてほしい。わかってると思うけど、僕は普通の槍従士じゃない。ライセンスも持ってないし」
「じゃあ、先にこれをほどいて」
「いや。先にグングニルを消してもらおう。一回消したら、しばらくは発現できないからね」
「わかった」
伊達沢の目の色が、元に戻った。
それを確認してから、ジュンは砂をすべて呼びあつめる。
伊達沢の手足を縛っていた砂も崩れ、ジュンの足元にかたまった。
棒人間の形になり、勝手に踊り始める。砂の量が少ないので、手のひらに乗るぐらいの大きさだ。
「踏まないで」
「わかったわかった」
「で、なんでグングニルで店を壊したの」
「彼氏に、やれって言われたから」
「それだけ?」
「うん」
「じゃあ、なんで今日、グングニルを出したの? この店を壊す理由なんてないでしょ」
「私が、自分でやった」
「だから、なんで?」
「怖くなったから。殺そうと思って」
「俺を?」
伊達沢が、急に泣き出した。
しばらく、ジュンは待った。
「だって、もう私一人だし。ニュースになったとき、最初は彼氏もふざけて楽しそうだったけど、警察が動いたっていうふうにニュースで流れたら、急に俺は関係ないからって言い出すし、私とももう会わないって」
「だから、俺を殺すんだ?」
ジュンがそういうと、また伊達沢は嗚咽し始めた。
「うわー。センスなさすぎて、こっちまで泣きたくなってくる」
「ここで優しくするのよ、バカねえ」
「だからセカンド童貞なんだよ」
踊っていた棒人間を、ジュンは踏み潰した。
それから、別の砂を使って、棒人間を埋めて、小さな箱状に砂をかためた。
「俺が知ってる限りだと、グングニルから、グングニルを出すなんてできないはずだけど。君はどうやってあんなことができるようになったの?」
「わかんない。最初から、できた」
「そもそも、なんであんなに大きなグングニルを出せるの?」
「わかんない。それも、最初から」
「学校には、行ってる?」
「バイトはしてる。学校には、行ってない。店長とかにもそれは言ってない」
「何歳?」
「17」
ジュンはため息をついた。
どうしよう。
まさか、女の子だとは思わなかったし。報告するつもりでいたからなあ。
しかし、グングニルを何体も出すなんて聞いたことない。
どうしよう。
太田さんに聞いてみるか。




