第4話 初めての召喚
無事、町に到着し解散となった。
これから俺は、一人でこの世界を生きていかなくてはいけないのかと再認識していると、サラリーマンの人たちが話しかけてきてくれた。
「どうも、初めまして」
「あ、これは初めまして」
「神崎さんは、これからお1人で過ごされるのですか?」
「ええ、まずはレベル上げとこの辺りの石像を探してみようかと……」
「あの、もしよろしければ私たちと一緒に行きませんか?」
もしかして、お誘いってやつかな?
俺に話しかけてくれた人たちを見れば、全員サラリーマンの姿をしている。
どうやら、同じ職種で最初は過ごしてみようというわけだろう。
「あ~、申し訳ございません。
俺はゲームでもじっくりゆっくりやるタイプなので、一人の方が都合がいいんですよ。
なので、お誘いは大変うれしいのですが……」
「そうですか……。
では、せめてフレンド登録をさせてもらってもよろしいですか?」
「フレンド登録とは?」
俺が分からないと聞き返すと、サラリーマンは背広の内ポケットからカードを取り出した。
その取り出したカードは、自分の名前だけが書かれたカードだ。
あ、思い出した!
この人、若返っているが俺にアイテムボックスの中を確認するように言ってくれた中年のサラリーマンの人だ。
「神崎さんもこのカードはお持ちですよね?」
「ええ、持ってますよ」
俺はそう答えると、アイテムボックスの中からカードを取り出し相手に見せた。
すると、相手は俺の取り出したカードに自分のカードを重ねて…。
【フレンド登録】
そう言うとお互いのカードが一瞬光った。
「これで、フレンド登録ができました。
何かあったときは連絡も取れるみたいですよ」
「便利なカードなんですね~」
俺がカードをまじまじと眺めていると、サラリーマンさんは自分のカードをしまっていた。
フレンド登録、後で確認しておこう。
そう思いながら、アイテムボックスへ仕舞う。
「では神崎さん、またどこかでお会いしましょう」
「はい、またどこかで」
サラリーマンたちを見送り、周りを見るといつの間にか俺一人になっていた。
え~と、確かまずはギルド登録をして身分証を手に入れよう。とか書いてあったな。
でも、今どこかのギルドに行くと鉢合わせしそうだな……。
「……宿を探して、明日ギルドへ行くか」
▽ ▽
「ふぅ……」
案内された宿の部屋に入り、ベッドに腰掛けると一息つく。
宿はすぐに見つかった。
町へ入った時に通った南門の近くが宿屋街になっているみたいで、何軒もの宿屋が並んでいた中で『大和亭』なる宿屋が目に止まり、この宿に泊まることにしたのだ。
宿の名前が気になったため選んだが、一泊朝食のみで銀貨三枚という安さに選んでよかったと思う。
俺の部屋は三階の最初の部屋だが、広さは六畳といったところだ。
ベッドと小さな机と椅子が二脚、後はクローゼットがあるだけのシンプルな部屋だ。
夕食は料金に入ってないから俺が用意するが、まだその時間じゃない。
「夕食までに、あのカードや召喚の確認を済ませておくか……」
アイテムボックスから、カードを取り出し名前が書かれていた面を見ると『フレンド』の表示と乾 正司という名前が追加されていた。
「フレンド登録すると、登録者の名前が追加されるのか……」
この世界でできた友達も登録できそうだな。
できるかどうかは分からないが……。
とりあえずカードは今のところ良しとして、次は召喚だな。
「女子高生の一人が妖精を召喚していたな……」
もしかして、俺にも妖精がついてくれるのかな……。
【妖精召喚】
すると、周りから光の粒が俺の目の前に集まり人の形になっていく。
ただ、その大きさはアニメのフィギアと同じぐらいのサイズだ。
三十秒ぐらいで光の粒が完全に集まり、人形サイズで固定するとポンという軽快な音とともに女の子の妖精が誕生した。
『呼んでくれてありがとー、マスター!』
「……ああ」
どこか、あの女子高生が連れていた妖精と違う軽いノリの妖精だな……。
俺の目の前で羽を動かしてホバリングしながらこの部屋を見渡している。
『マスター、私に名前を付けてちょうだい』
「名前、ないのか?」
『無いわけじゃないけど、その名前を使ったら召喚された妖精はみんな同じ名前になっちゃうじゃない』
腰に手を当てて、仕草でわかるように怒っているように見える。
……なるほど、小さいから身振り手振りが大きいわけか。
「それってどういうことだ?」
『……あ、マスターは契約召喚を少し誤解しているんだ』
「誤解?」
『そうよ、召喚される召喚獣はそれぞれ同じ種族の別々の個体だと思ってない?』
「え、違うのか?」
『全然違うわよー。召喚獣は契約される石像が元になった、いわば分身体なのよ?!』
ない胸をそらして、偉そうに解説してくれる妖精。
でも、召喚される召喚獣は別々の個体ではなく分身体か……。
ということは、あの石像がオリジナルで召喚された召喚獣が分身。
この場合は、分身の術ではなく影分身の術といったところか。
『そんなことより、私の名前は?』
「おお、そうだな『リリ』っていうのはどうだ?」
『リリ………リリ……可愛い名前ね、私にピッタリ!』
そう言うと俺の周りを飛び回る。
『気にいったわ、ありがとうマスター! これからよろしくね!』
「ああ、よろしく。分からないことがあったら聞いていいかな?」
『勿論、私はマスターのサポート妖精ですもの!』
俺の目の前に移動して、再びない胸をそらして偉そうにする。
リリは明るい性格になっているようで、俺にはこれぐらいがちょうどいいのかもな。
……でもリリでこれだと、戦乙女はどんな性格になるんだろうか?
第4話を読んでくれてありがとう。
次回もよろしくお願いします。