第3話 契約と移動
『料理の石像と契約しました。スキル「料理(食堂)」を習得しました』
『妖精の石像と契約しました。スキル「異世界言語翻訳」を習得しました』
『宝箱の石像と契約しました。スキル「アイテムボックス(小)」を習得しました』
順番に石像に手で触ると、契約していく。
そして、契約とともにスキルも習得することができた。
このことを確認する間もなく、俺は転送され周りの景色は草原に変わった。
転送後、俺は周りをキョロキョロと確認していく。
ここは草原のど真ん中らしく、芝生のような草が半径百メートルぐらい広がっている。
俺が転送されてきたところには、高さが三メートルぐらいのオベリスクが立っていた。
また、俺の前に転送された人たちがこのオベリスクから少し離れたところに集まっている。
それを確認した俺が、その集団に近づいていくと高校生の男子の声が聞こえてくる。
「……で、いろんな石像に触って契約していった方が良いっていうのか?」
「そうだよ、さっきも石像と契約してスキルを覚えただろう?」
「そういえばスキルを獲得したって……」
「そこだよ、石像との契約でいろんなスキルが得られる。
ということは、強くなるためのスキルもどこかの石像と契約することで得られるってことだよ」
「そういうことか……。
でも、必要ない石像との契約って抵抗があるな……」
「そうね、それに契約って上限があるんじゃないの?」
男子高校生同士の話し合いに、周りで見ていた女子高生の一人が参加する。
「そのことは、この赤い本によれば契約の数に上限はないようだ。
上限に関しての記述はなかったからね」
「それなら安心ね」
どうやら、男子高校生たち同士で今後どうするかという話し合いから、契約やスキルのことについて話し合っていたようだ。
近くにいたサラリーマンの人に聞くと、高校生たちの提案で全員そろってから町へ移動しようということになっているらしい。
それと、そのサラリーマンの人にアイテムボックスの中を調べるように言われたな。
俺は少し皆と離れてから、おもむろにアイテムボックスと念じながら手を中へ入れる。
「……ん? ボックス内に何か入っているな……」
入っていた何かをつかむと、俺はそれを取り出した。
目の前に出てきたものは、この世界の服一式と巾着袋に免許証サイズのカードだ。
とりあえず今、服を着替える場所がないのでボックス内に戻して巾着袋の中身を確認する。
すると、中にはこの世界のお金が金貨9枚と銀貨99枚に銅貨100枚入っていた。
「これは、この世界のお金か……」
俺は大事なお金も巾着袋に入れなおし、ボックス内に戻す。
あとはカードだが、このカードには名前が入っていた。
『名前 神崎 耕太』と表示しているだけ。
カードの表裏を見ながら疑問に思っていると、俺の後ろから声がかかる。
「山崎、全員転移してきたぞ~!」
「おお、知らせてくれてありがとう。
では、皆さん! ここから近い場所にある町までは一緒に行きましょう!
俺たちは同じ転移者です!
この世界をどう生きるか分かりませんが、せめて町までは一緒に行きませんか?!」
この高校生の呼びかけに、この場にいる全員が賛同したことでそろって近くの町へ歩くことになった。
▽ ▽
皆で歩きながら町へ進んでいる時、俺は一緒に召喚された皆を見ていた。
どうも何かが引っ掛かっていた。
それが何か分からず、ますます皆を見ていてようやく理解した。
そう、お年寄りがいないのだ。
さらに、中年のサラリーマンたちもいない。
それに気が付いた時、俺は天使が言っていて言葉を思い出した。
『サマルナの地に召喚された時、お年を召された方は若返るようになります』
おそらくこれだ。
確か三十歳以上は若返るとかなんとか言っていた記憶がある。
ということは、四十歳の俺も若返っているということだ。
……ここに、鏡はないか。
それなら、町に行ってから確認するしかないな。
「お~い、ここに石像があるぞ!」
「なら、契約しておこうぜ!」
先頭を行く高校生たちが、街道の途中に石像を発見した。
土台の上にあった石像は、女性騎士の像だ。
全身鎧をつけて、兜を右脇にした女性騎士。さらに、左手には細身の剣が握られている。
顔ははっきりとした人の顔ではないが、髪はポーニーテールにしていた。
また、全身鎧は、女性の体のラインに合わせて作られている。
「この女性騎士の像と契約すれば、戦力は確保できるわけか……」
「ですね、これで道中の安全は少し上がりましたね」
「だな」
俺の前に並んでいるサラリーマン達が話している。
五十人からいる俺たちは、日本人の癖か、きれいに列を作って契約のために並んでいる。
サラリーマンたちの言うとおり、これで戦力が確保される。
あと、俺たちに足りないものは……と考えてしまうな。
『戦乙女の石像と契約しました。スキル「剣術(見習い)」を習得しました』
剣術(見習い)か、やっぱり習得できるスキルにもレベルがあるようだな。
俺自身のレベル上げも必要だけど、習得できるスキルのレベルも上げないといけないってことなんだろう。
となれば、使い続けることでレベルが上がっていくのかな……。
▽ ▽
戦乙女の石像があった場所からさらに街道を進むと、石でできた大きな塀を発見する。
おそらくあれが、町を守る塀なのだろう。
「ミミィ、あれが町なの?」
『はい、この辺りで一番大きな町「ローレンド」です』
「ほんと、ミミィは物知りなのね~」
俺の前を歩いている女子高生の一人が、召喚した妖精に話しかけている。
彼女が今話していた『ミミィ』なるものは召喚した妖精型ナビだ。
この妖精型ナビは、どうやら俺たちのサポートのために用意してくれたものらしい。
現に、地図も入っているらしく妖精ナビは正確に地名とか教えてくれる。
ただ、やはりか石像の位置はわかるが何の石像かは分からないらしい。
なので、あくまでも旅のお供に妖精ナビということだ。
五十人という人数で移動しているので、魔物に襲われることもなく、妖精ナビで迷うことなく町につくことができた。
だがこれからは、皆別行動ということになるだろうな……。
第3話を読んでくれてありがとう。
次回もよろしくお願いします。