第11話 召喚できるもの
日が暮れてからそう時間が経ってないとはいえ、夜の町は寂しい感じだ。
魔法や魔道具による明かりは、各家々の窓から漏れ出ているが日本のように夜の町が明るく照らされているわけではない。
冒険者ギルドへ向かう道も、街灯もない暗い道となっていて俺はそこをリリ達と一緒に歩いて行く。
何ごともなく、冒険者ギルドに到着するとギルドの入り口から明かりが漏れていた。
リリの言ったとおり、冒険者ギルドは夜も開いているようだ。
ギルド内に入ると、食事ができるところで酒が入って騒いでいる人がいると思いきや誰もいなかった。
ギルド内も人はまばらで、受付嬢も一人常駐でいるだけのようだ。
「すみません、依頼を終わらせてきました」
「では、ギルドカードをお見せください」
俺は懐からギルドカードを取り出し、受付嬢に渡す。
すると、受付嬢はカードをカウンター内にある水晶に差し込むとすぐに引き抜き俺に返却してきた。
「はい、確認しました。
『ゴブリン討伐依頼』ですね、ではゴブリンの魔石を提出してください」
受付嬢にそういわれたので、俺はアイテムボックスから袋に入ったゴブリンの魔石百個をカウンターに置いた。
「えっと、これ全部ですか?」
「はい、仲間と一緒に討伐しましたので……」
「……なるほど、召喚獣でしたか。
では確認してきますので、後ろのソファで座ってお待ちください」
受付嬢は魔石の入った袋を持ち上げると、奥の部屋に入っていった。
俺たちはおとなしく、ソファに座って待つ。
エルは、カグヤを抱っこしてとろけるような笑顔を見せているが、リリは少し険しい顔だ。
「どうしたんだリリ、そんな顔をして……」
『ん~、さっき依頼書が貼られている掲示板を見てきたんだけど、おかしな依頼書があったのよ』
「おかしな依頼書?」
『そうよ、あれは何の目的で出しているのか分からない依頼書ね』
『それはどんな依頼書なんです?』
「うん、俺も気になる……」
『それは「魔王」を召喚できる召喚士を探してほしいって依頼よ』
俺は驚きを隠せなかった。
それはエルも同じだったようだ。
「……えっとリリ、聞きたいんだが『魔王』って召喚契約できるのか?」
『できるわよ、魔王の石像もちゃんと存在しているし』
「……と言うことは『勇者』なんていう石像もあるのか?」
『勿論、勇者の石像も存在しているわね。
他にも、精霊王や妖精王、竜王なんてものもあるわよ。変わりどころでは……』
「いや、もう結構。 十分わかった……」
まさにこの世界は、召喚士の世界だってことを再認識させられた。
……そうだよな、戦乙女なんて召喚できるんだからどんなものでも召喚できるよな。
リリ達と雑談で時間をつぶしていると、受付嬢に呼ばれる。
「お待たせしました、魔石の鑑定が終わりましてすべてゴブリンの魔石と分かりました。
こちらが報酬の銀貨十枚です」
受付嬢から渡された小袋から銀貨を取り出し枚数を確認。
確かにある事を受付嬢に言うと、笑顔で頷かれる。
「魔石を入れていたこちらの袋はお返ししますね。
またのご利用をお待ちしています」
「ありがとうございます」
受付嬢にそう挨拶をすると、俺たちは冒険者ギルドを後にした。
そして、宿へと帰っていく。
『ねぇ、これからもこの町の周りの石像を探すの?』
「そのつもりだけど?」
宿への夜道、リリがこれからどうするのかを聞いてきた。
『私としては次の町へ行くことを薦めたいわ』
『そうですね、私もそれがよろしいかと』
『キュ~』
「ふむ、この町の近くにもう石像は無いってことなのか?」
『そうじゃないわよ、まだ石像はあるけど……』
『マスター、今の私たちでは石像までたどり着けないんですよ』
「……それって、実力が不足しているってことか?」
『そうよ、だから次へ行って実力を上げないか?って提案しているの』
『キュ~キュ~』
リリ、エル、カグヤが俺を見ている。
この世界に来てから最初の町で、契約できる石像とはすべて契約できたってことなんだろう。
さらに契約するには、今の俺では実力不足。
……ならば、俺のとるべき道は決まっている。
「それじゃあ、明日、この町を出て次を目指すか」
『ええ、これからも私がサポートするわよ!』
『マスター、護衛はお任せください!』
『キュー!』
……どうやら、俺がなかなかこの町から離れないから心配していたようだな。
うん、明日は次の町を目指そうか。
そんな会話をしているうちに宿へと到着。
夜遅かったため、夕食は間に合わなかったがぐっすり寝て明日に備えようか。
第11話を読んでくれてありがとう。
次回もよろしくお願いします。