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召喚士の世界へようこそ!  作者: 光晴さん
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第10話 かわいそうな石像




『キュー!』


カグヤはジャンプして左の耳を振りぬく。

すると、そこから衝撃波が起こり敵の魔物に向かって飛んでいった。

その衝撃波に当たったゴブリン達六匹は、一斉に吹き飛び二メートルほど後ろに飛ばされた。


『『『ギャッ!!』』』


「エル、止めを刺すよ!」

『はい!』


そこへ倒れたゴブリンめがけて、俺とエルルーンが剣を構えて飛び込み一匹ずつ確実に屠っていく。

カグヤとエルと俺の見事な連携がそこにはあった。


「リリ、もう一つの石像はまだ先なのか?」

『え~と、もう少し歩けば開けた場所に出るから、そこから見える池の側みたいね』

「池があるのか?」


『かなり大きな池みたいよ、湖って言ってもおかしくないくらいの』

「それは楽しみだな」


エルとカグヤが倒したゴブリンの魔石回収と後始末をしている中、俺とリリは周りを警戒しながら次の石像の場所の話をしていた。


そして、エルが魔石を持って来ると、いつも通り水で洗い回収。

ゴブリンの死体を地面に埋めて始末し、再び歩き出す。




十分ほど歩くと、急に森が開け目の前には大きな池が現れた。


「へぇ~、確かに大きな池だな……」

『マスター、これは湖と言ってもおかしくない大きさですよ』

『でしょ? ほら、あそこに石像があるわよ!』


大きな池の側に、確かに石像が立っていた。

……ただ、かなりの間人が触れていないのかコケだらけだったが。


「……ここって、契約する人が来なかったみたいだな」

『すごいコケですね……』

『そうね、こんなにびっしりとコケまみれとは……』


『キュ~』


コケに覆われていても、石像が何を表しているかは分かる。


「これって食料貯蔵庫の地下で見た女の子みたいだな……」

『そうね、姿形も同じみたい』

『確か道中で話してくれた、精霊の石像でしたか?』


「ああ、地下に水の精霊って変だなって話したあれだ」

『う~ん、もしかして精霊の石像はみんな同じ姿なのかも……』

『……あっ、それでここは放置されているとか』


……もしかしたら、同じ精霊の石像だから契約する必要なしとか思われて放置されたってことか?


「同じ石像かどうかは、契約してみればわかるさ……」


俺は手をコケまみれの石像に触れて、契約してみる。



『水の精霊の石像と契約しました。スキル「水魔法(中級)」を獲得しました』



「………同じ水の精霊だった」

『それでは二重契約になるのでは?』

「いや、スキルの水魔法が初級から中級に上がったみたいだ」


『それだけ?』

「ああ、それだけ……」

『なるほど、この石像に召喚士が来なくなった理由が分かったわ』


リリは、石像の周りをゆっくり回りながら問題の答えが分かったようだ。


『リリ殿、その理由とは?』

『この石像は町の食料貯蔵庫の地下にあった水の精霊の一つ上の石像なのよ。

ただ、スキル表示にもあるように水魔法の中級。


となれば、もう一つ上の水の石像があってしかるべきでしょ?

勿論そのスキルは水魔法の上級ということになるわ。

……ね?この石像と契約して中級を獲得するか、もう一つの水の精霊の石像を探して上級を獲得するまで我慢するか、そういう問題になったのよ。


で、選んだ結果が我慢するだったってわけ』


それを聞いた俺たちは、目の前にたたずむ石像を見て居たたまれなくなった。

この石像は見捨てられた石像なんだと……。



「……リリ、この石像を掃除してもいいかな?」

『……そうね、せめてきれいにしてあげましょう』

『私も手伝います!』

『キュー!』


俺たちは石像についたコケを落とし、水魔法を使いきれいに洗った。

少し時間がかかったが、掃除が終わった後はスッキリした気持ちになれた。



奇麗になった石像を見ていて、俺はリリにある提案を質問してみた。


「なあリリ、この石像を動かすことってできないのか?」

『石像は動かすことはできないわよ。

ここにこの石像があるのは必要があってここに存在しているのよ。

場所を変えたとしても、一日たてば元の場所に戻るそうよ』


「赤い本に書いてあるのか?」


『ええ、昔石像を守り石像にしようと動かしたことがあったそうよ。

ところが一日たてば元あった場所に戻っていたってあるわ。

何度動かしても、一日たてば元通り。

それで守り石像にすることをあきらめたっていう話があるのよ』


『不思議な話ですね……』

『キュ~』

「本当にこの石像って何なんだろうな……」



召喚士の世界、契約、召喚される者たち、この世界はほんと不思議な世界だ。


少し石像と池を見ながら考えていると、リリが声をかけてくれる。


『ねぇ、もう帰らない? ここにいてもすることないわよ?』

「そうだな、町へ帰るか」


そして俺たちは、再び森の中を進み町へと帰還した。

ただ、森に入った時間が昼を過ぎて入ったため町についたころには夜中だった。


門のところで、見張りに立っている兵士の人にいろいろ聞かれたが、エルやカグヤが召喚したものだと分かるとすんなり通してくれた。


ただ、夜になってからの町の出入りは少し注意されてしまったが……。


「夜遅いけど、冒険者ギルドへ行って討伐依頼の完了を報告しておくか」

『こんな時間に行って、だいじょうなのですか?』

『キュ~?』


『大丈夫よ、冒険者ギルドは基本一日中開いているわよ』

『「へぇ~」』

『キュ』


そうリリに聞かされ、夜の街を冒険者ギルドへ急いだ。








第10話を読んでくれてありがとう。

次回もよろしくお願いします。

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