加護食い~勇者達が餌に見えて辛い~
子供の頃に魔族の最後を看取った事がある。
幼馴染みと村の近くの森で遊んでいたときに行きだおれていたのだ。
最初は大人たちを呼んだが魔族に関わりたくないらしく、助けを得られることはなかったのでウチに運ぶことになった。
幸い俺の両親は王都に揃って出稼ぎに出ているため、誰も文句を言わなかった。
ただ、看病の甲斐もなく2週間程で最後を看取ることになった。
魔族は俺に感謝したらしく、とある能力を託してくれてから逝った。
その能力は『加護食い』
天職以外に世界に愛された証を食べて自分のものにする力。
★
俺達が12になると教会で天職が与えられた。
未だに仲の良い2人の幼馴染みの女の子は聖女と剣姫らしい。
回りは物凄く興奮していた。
ちなみに俺は魔法剣士。普通の中級職だ。
村人とか無職じゃないと成り上がれないぞ?とか言う言いがかりをつけられた。意味がわからない。
その夜、夢に神様が現れて『加護食いがなかったら最上級の魔導騎士だったんだけどねぇ』とため息をつきながらぼやいてた。
知るか。
ただ問題もあった、天職が与えられた後、幼馴染みがとても魅力的に見えるのだ。
聖女と剣姫になっても態度が変わらない2人が視界に入る度に思ってしまう。
(美味そうな加護だな)と……
聖女と剣姫には良質な加護がついていたのだ。
まさか、昔貰ってしまった能力に食欲?がついてるとは思わなかった。
……我慢できなくなる前に早く、勇者とか現れて連れていってくれないかな?
★
天職を与えられてから3年がたったとき、ふと思い立ったこの欲求は食欲より性欲に近いのではないかと……
なら、発散できるか?
「ちょっと、街に言ってくる」
まだ、仲の良い2人に告げる。
「何しに行くの?」
怪訝な顔をする2人。聖女の質問に答えをはぐらかす。
「野暮用」(ちょい娼館で脱童貞)
剣姫にフルボッコにされた。
解せぬ。
ちなみに幼馴染みに暴力を奮われたのは初めてだ……ダメだ興奮しない。
それから、幼馴染みは俺が街を出ないように監視するようなるし、君たちあれだよ?魔王退治に言って最近王都で噂の勇者様か王貴族とかと結婚するんだよ?
こんな地味男に執着してどうするのさ。
★
それから1年は大変だった。
近隣に幸運な頭目のいる盗賊団が現れたり。
強大な魔力の持ち主のいる宗教団体が村勧誘に現れたり。
豪腕な団長のいる野蛮な傭兵団のたまり場として村が目をつけられたり。
他にも色々あったが……
まぁ、流石聖女と剣姫だよねと……
ああ、頭どもの加護は美味しかったです。
★
そこから、半年してようやく勇者が幼馴染みを勧誘に来た。
これで、目の前に美味そうな加護をぶら下げられなくなる。
しかし、勇者様の加護は美味そうだ。
目の毒だから早く旅って欲しい。
何故か、俺も行く事になった。
なんの陰謀だ?
俺は料理や裁縫が趣味な村人だよ?
所詮中級職に豪腕・幸運・神速・天魔・索敵等々の加護がついたところで役にはたたないよ?
★
旅に出てから1年がたち、魔王城に到着した。
ここまでにも色々あった。
他のメンバーが料理できなくて、飯炊き係になったり。
街につく度に装備を衝動買いする仲間のせいで金庫番やったり。
大きい街で別行動中に娼館にいこうとする度に何故か見つかって、半殺しにあったり。
各四天王相手に囮を買って出て、属性の加護を食べたり。
魔物にも加護ってあるんだね……特に邪龍や大悪魔とかなかなか良質な加護で美味しかった。
ああ、勇者たちが餌に見えて辛い。
と言うか勇者君ね?
据え膳の美女共に手ぇ出せや。
結構ワクワクしてたのに……
その中性イケメンフェイスはなんのためにあんの?
なんで幼馴染み達はまだ俺に迫ってくんの?
たまにこっち見てくるけどホモなの?
こっちは欲望抑えるの大変なんだよ?
途中で仲間になった賢者エルフちゃんもそう思うよね?
ちなみに彼女も加護持ちなので餌に見えます。
★
魔王は強かった。
初戦はこちらが防戦一方のまま押しきられ仕方なく俺が殿を務めて撤退することになった。
あまりにも悔しかったので魔王の加護を食ってやった。
とても美味しかったです!!
何故か再戦は楽勝だった。
不思議だ……まさか勇者君手抜いてた?
★
王都に行き国王に魔王討伐の報告をすることになった。
ついでに国王に加護食いのこともぶちまけた。
幼馴染みも勇者もエルフちゃんも目を見開いて驚いてた。
別に危険因子と処罰されてもよかった。
また、目の前の加護を我慢する生活が辛いから。
そして俺は……
勇者の抑止力として貴族(子爵)になった……
意味がわからない。
何故か正直に話したのが国王に気に入られたらしい……挙げ句の果てに姫をやるとか言い出した。
その場の勢いだと信じたい。
★
くそっ!
油断した。
まさか貴族になってから自宅で襲われるとは……
血で汚れた寝具をみてため息をつく。
まさか剣姫が夜這いをかけてくるなんて……
コイツ、村長の娘何だよな……
これ、責任とんなきゃダメなのかな?
その日から剣姫はベタベタしてくるようになった……
ああ、加護は無事です。
やっぱり、性欲に近いらしい。
★
また、油断した……
まさか、薬を盛られるとは……
今まで食べた加護のお陰でそういうのは効きづらいはずなんだけどね?
流石聖女……さっきまでは性女?
馬鹿なこと言ってないで血を拭きなさい。
ああ、地元領主の娘とやっちゃった……
いっそ、開き直って加護食べようかな?
★
言い訳しよう、今度は油断じゃない。
ただ、単純に警戒をすり抜けられた。
流石、エルフの長の娘。
気配を消して寝込みを襲うなんて楽勝なんだね……
そろそろ処女よりビッチに襲われたい……
ああ、加護が美味そうだ。
★
油断以前に抵抗できなかった。
まさか勇者が女だったとは……
加護しか見てないから気づかなかった……
しかも、姫様と2人で夜這いとか。
てか、姫様も加護持ちかよ……
これ、逃げたら知り合いのどこまでが処刑されるかな?
★
結局、押しきられて、姫様正室にハーレム築く事になりましたよ。
幸い、嫁さん達と協力して加護食いの衝動を減らす事ができた。
ただ、ゼロにはならない。
『もう、魔王はいないから食べていいよ?』と全員に言われたけど流石にダメだろ……
ああ、嫁さん達が餌に見えて辛い。