Epilogue/いつかの未来
結弦は気がつくと、どこか懐かしく感じられる公園に佇んでいた。
なんの変鉄もない公園だが、結弦はその風景を見ていると、なぜだか暖かな気持ちになっていく。
公園では、無邪気に子供たちが走り回り遊具で遊んでいる。
「ゆーづるっ」
背後から声をかけられ、なんだろうかと結弦は振り向いた。
「ーーあっ」
そこに居た少女を見たことにより、結弦はここがいったい何処なのか理解した。
同時に、目の前で微笑みかけてくる少女が誰なのかも思い出す。
「ゆ、結愛……なのか?」
「なに言ってるのよ、当たり前じゃない」
少女は嬉しそうに笑うと、結弦の手を握り公園のベンチへと誘導した。
二人は肩と肩が触れあう近さで並んで座る。
「久しぶりだな、結愛。その、遅くなって悪かった」
「もう、本当に待ったよ! でも、お仕事大変なんでしょ? 深い眠りだと、なかなかわたしの居る領域には来れないし」それに……と、結愛はつづける。「どうにせよ、こうやって会いに来てくれたんだし、針千本は許してあげるっ」
結弦の肩に、結愛は首を傾け頭を乗せる。
「夢なのに、緊張するもんなんだな……」
どこか恥ずかしい気持ちになり、結弦は自然とそう呟く。
「当たり前じゃない。夢だって、世界は世界なんだからさ。喜怒哀楽も感じるし、こうして夏の暑さだって、五感だってちゃんとあるよ、そりゃ」
「それもそうだな。俺が認識すれば、俺にとっては夢も現実……だもんな」
「それだけじゃないわよ?」
結愛はベンチから立ち上がると、青い海の色をしている空へと手を伸ばすように両腕を広げた。
「結弦の暮らすセカイは、例えるなら、神『結愛』のからだであるっ!」
「は、はぁ?」
「例え話よ、たとえばなし。誰だっていいわよ、どうせ例えなんだから。で、結弦や裕貴さん……だっけ? は、神『結愛』の細胞の一つ、台風や地震は神『結愛』の体調不良とかが原因。そうするならばーー」
結愛は結弦の方へ勢いよく振り向いた。
「わたしの暮らすこのセカイは、神『結弦』のからだなだけよ。結弦の細胞のひとつが、このわたしってわけ」
「凄いなソレ、つまりは今、このセカイには神が降臨してるってわけか」
「自己を考慮しちゃったら、厳密には神の子イエス・キリスト的な立ち位置だけどね」
裕貴相手だとわけのわからない話も、結愛の話だと自然と受け入れられる、と結弦は感じる。
今回の夢は、まだまだ覚めそうにない。
「今まで会えなかった分、いろいろお話しようね、結弦」
「ああ、言いたかったことも沢山あるしな」
汗が不思議と流れない、心地好い夏の暑い太陽の日射しを浴びて、爽やかな気分にさせてくれる気持ちの良いそよ風に吹かれながら、二人は笑顔のまま、さまざまな話を交わしていく。
それは、結弦の目が覚めるまで、長くも短くもある時間つづくのであった。