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ゆめを蝕むクスリ  作者: 砂風(すなかぜ)
9/9

Epilogue/いつかの未来

 結弦は気がつくと、どこか懐かしく感じられる公園に佇んでいた。

 なんの変鉄もない公園だが、結弦はその風景を見ていると、なぜだか暖かな気持ちになっていく。

 公園では、無邪気に子供たちが走り回り遊具で遊んでいる。


「ゆーづるっ」


 背後から声をかけられ、なんだろうかと結弦は振り向いた。


「ーーあっ」


 そこに居た少女を見たことにより、結弦はここがいったい何処(どこ)なのか理解した。

 同時に、目の前で微笑みかけてくる少女が誰なのかも思い出す。


「ゆ、結愛……なのか?」

「なに言ってるのよ、当たり前じゃない」


 少女は嬉しそうに笑うと、結弦の手を握り公園のベンチへと誘導した。

 二人は肩と肩が触れあう近さで並んで座る。


「久しぶりだな、結愛。その、遅くなって悪かった」

「もう、本当に待ったよ! でも、お仕事大変なんでしょ? 深い眠りだと、なかなかわたしの居る領域(ゆめ)には来れないし」それに……と、結愛はつづける。「どうにせよ、こうやって会いに来てくれたんだし、針千本は許してあげるっ」


 結弦の肩に、結愛は首を傾け頭を乗せる。


「夢なのに、緊張するもんなんだな……」


 どこか恥ずかしい気持ちになり、結弦は自然とそう呟く。


「当たり前じゃない。夢だって、世界は世界なんだからさ。喜怒哀楽も感じるし、こうして夏の暑さだって、五感だってちゃんとあるよ、そりゃ」

「それもそうだな。俺が認識すれば、俺にとっては夢も現実……だもんな」

「それだけじゃないわよ?」


 結愛はベンチから立ち上がると、青い海の色をしている空へと手を伸ばすように両腕を広げた。


「結弦の暮らすセカイは、例えるなら、神『結愛』のからだであるっ!」

「は、はぁ?」

「例え話よ、たとえばなし。誰だっていいわよ、どうせ例えなんだから。で、結弦や裕貴さん……だっけ? は、神『結愛』の細胞の一つ、台風や地震は神『結愛』の体調不良とかが原因。そうするならばーー」


 結愛は結弦の方へ勢いよく振り向いた。


「わたしの暮らすこのセカイは、神『結弦』のからだなだけよ。結弦(かみ)の細胞のひとつが、このわたしってわけ」

「凄いなソレ、つまりは今、このセカイには神が降臨してるってわけか」

自己(セルフ)を考慮しちゃったら、厳密には神の子イエス・キリスト的な立ち位置だけどね」


 裕貴相手だとわけのわからない話も、結愛の話だと自然と受け入れられる、と結弦は感じる。


 今回の夢は、まだまだ覚めそうにない。


「今まで会えなかった分、いろいろお話しようね、結弦」

「ああ、言いたかったことも沢山あるしな」


 汗が不思議と流れない、心地好い夏の暑い太陽の日射しを浴びて、爽やかな気分にさせてくれる気持ちの良いそよ風に吹かれながら、二人は笑顔のまま、さまざまな話を交わしていく。


 それは、結弦の目が覚めるまで、長くも短くもある時間つづくのであった。


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