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風呂の短編集  作者: 風呂
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故に/されど、刀を振るう

お題『僕が愛した凶器』

『あなたの好きな武器はなんですか?』

 こう訊かれて、余程の忌避感を持っていなければ、答えられない人はいないだろう。

 剣、槍、弓、銃やその他、個人が携帯出来るものを越えて兵器の範疇も含めれば、戦車や戦闘機等といった解答が得られるだろう。

 子供だって、子供向け番組のヒーローヒロインが手にする、何とかソードや何とかステッキなんて答えを返してくれる。

 しかし、『あなたの好きな凶器はなんですか?』と訊かれたら、答えられる人はどれだけいるだろうか?

 剣も槍も弓も銃も先程と変わらない、ただそこにあるだけなのに、(少なくとも)一般的な感性の持ち主であれば答えに詰まってしまう筈だ。

 武器、それは即ち凶器である。

 それは正しく真理なのに答えられないのは何故か。

 それは実際に使用する場面を想像するかどうかである。

 他人を傷付けるのが怖い。もしくは自分が傷つけられるのが怖い。またはその両方。

 武器の存在意義を果たす場面を想像するという事は、その時に必ずあるであろう痛みや恐怖すらも想像するから。だから質問に答えられないのである。

 で、あるならば、それでも答えられる自分はどういった存在なのか。

 いつもその『答え』を見る度、触る度に、程度の差こそあれ、そんな事を考えてしまう。

 先程の質問の『答え』。それは剣の一種。主に片刃で刀身が緩やかな曲線を描くもの。

 刀、である。

 夜の道場。

 正眼に構えられたそれは、電灯を点けていない薄暗いこの場所で、強い月明かりに照らされて、その存在を主張していた。

 これを武器ではなく、凶器として考え、何の臆面もなく答えられる自分とは。

 自問自答しながら。今日も刀を振るう。

 一閃、二閃と続けられるその動作。長年かけて身体に染み込ませたその動きに追従するのは、刀身の煌めきと、板張りの床を踏み込む時に鳴る足音のみ。

 習得した通りの剣の型、しかしまだ習熟したとは言い難くも、それなりの所作の美しさと凄みがあると自負している。

 続ける。習った事を一から十まで再現するように続ける。

 繰り返し続け、更に無駄をそぎ落とす為に幾度も続ける。

 洗練され、刀と身体が一体化するかのようになるまで、何度でも続ける。

 そこまで鍛えることによって、漸くこの刀が武器として、凶器としてその存在意義を全うできるようになる。

 その為の担い手として、今日も自分は刀を振るい己を鍛えるのだ。

 たとえ、その所為で自分が真っ当な人間ではないのではないかという怖れを抱いたとしても。

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