どうしようもない僕の話。
終わりも夢もない世界へ行きたいなと、貴方は言う。
どういうことだと僕が問えば、
貴方は驚くほど綺麗な笑みで
終わりがなければ今が続き、
夢がなければ今が最高と勘違いできる。
だから、そんな世界へ行きたいの。
なんて紡いでみせた。
その言葉に乗ってきた驚きは
この口を噤ませる。
黙り込みに不思議を抱いたらしい。
貴方は首をひとつ傾げ
どうしたの、何かおかしなことでもあった?
とても純粋な声と瞳で問うてきた。
純粋さに気圧された僕は、
いいや、おかしなことは何もないよ。
そう返すので精一杯で
でも貴方は、こんな返事でも
だったらよかった。
なんて、満足気に笑みを浮かべるから。
僕は何も言えなくなった。
僕は何も紡げなかった。
勘違いしなければ今は最高と思えないのか。
夢を失くさなければならない理由は何処なのか。
勘違いの基準で最高と評価を下した世界で、
貴方は永遠を願っていいのか。
そこまでして時間を止めたい、と願う理由が
貴方の未来に存在するのか。
幾つもある聞きたいことを、紡げなかった。
貴方の笑みは、それらを暗に拒絶していた。
だから、僕は代わりにと。
言葉を紡げない代わりにと。
貴方の傍らに立つことを選択する。
貴方の支えになることを選択する。
横並びになった僕らの影は前に仲良く伸びていて
貴方はそれを見て仲良しだと笑っていて
その無邪気な笑い声に救われそうな僕がいた。
浮遊感に背中を押されて目を閉じ、貴方の姿も映さぬまま
僕がずっと隣にいれば、貴方が好きな今は終わらないね
なんてことを提案する。
うっすら開いた世界の中、貴方の目は数度瞬き
薄い唇は緩やかな弧を描き
そうだね、それもそれで素敵な世界
と、僕の提案を肯定した。
貴方のその無邪気な声や表情の裏を読めず、
何も言えやしない、救えそうにない、そんな僕が
救われそうだと感じたことを、この僕を
心の底から憎みたい。
だがそんなのできるはずもなく。
変わらず嬉しさを感じるこの気持ちは、
なんて自分勝手なことだろう。
貴方のためと思いながらも、自分のためなこの気持ちは
なんて身勝手なのだろう。
自覚していても、それでも隣を願う僕は
きっとどうしようもない阿呆の塊で。
きっとどうしようもない馬鹿なのだ。