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アマドーラ帝国の雫  作者: emily
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アマドーラの雫1

 ラルムが19歳になったと同時に、誕生石を(ストーン)手にすることは当然の事…。

 しかし、そのストーンが百年に1度出現すると言われている本物の【アマドーラの雫】だと世の中に知れわたることになったら大変なこと…。

 今は庶民から貴族に至るまでその身分を問わず【アマドーラの雫】伝説がブームであるし、碧色のエメラルドは若い女性達の憧れのストーンである。


 外の花壇で水やりをしているラルムの姿をダイニングから眺めつつ、ミラは小さなため息をついた。


 それにしても…ラルムは美しい女性に成長した。

 かつて【ルルドの雫】と吟われた母のリリア様と本当に良く似ていらっしゃる。

 しかし、その美しさ故、悲劇は起こった。


 ミラは近くのサイドボードの引き出しから1通の封書を取り出して膝の上に置いた。


【アマドーラの雫】。別名を【ルルドの雫】とも呼ぶ。ルルド地方では【ルルドの雫】の定義は広く、宝石に例えられる美しい女性を表現する言葉としても使われている。


 その昔、アマドーラ帝国は大干魃に見舞われた時期があった。時を同じくして皇帝陛下はこのルルド地方で、ルルドの雫と謳われた美しい一人の娘と出逢い恋に落ち二人は結ばれた。

 その娘は【アマドーラの雫】を誕生石として持つ地方貴族の娘であった。

 当時の皇帝陛下は【火】を司る強大な超能力(パワー)の持ち主であり、その力は無意識であっても自然界のバランスに影響する。大干魃の元凶は時の皇帝陛下のパワーと感応した結果だったのだ。そのような強い能力を持つ皇帝陛下の出現はおよそ1000年に1度。そして、アマドーラの雫の出現と時が重なる不思議。その後、大干魃はなくなり、アマドーラ帝国は豊かな大地を取り戻した。

 これが【アマドーラの雫】の伝説となり、またルルド地方に古来から伝わる【ルルドの詩】はその事実を告げているのである。


マテリアス家の滅亡の原因が【アマドーラの雫】伝説だとしたら…。今後、ラルムはあの時と同じように命を狙われる危険にさらされるかもしれない。

 それならば…この人物にラルムの未来を託した方が良いと考えていたのだが…。

 ミラは再び膝の上の封書に視線を戻した。それはラルムの誕生日の1週間程前に、スモン家のアドリアンから秘かに届いたものだった。

 ―マテリアス家の長女はラルムなのではないか?

 ―僕にラルムを預けてほしい。

 ―僕の母方の養女にして、ラルムとの結婚を進めたい。

 彼の真剣な思いが丁寧に綴られていた。

 しかし、その矢先にラルムがルルドの森に飛ばされ来た。しかも原因はアドリアンだという。


 アマドーラの雫が拒否したのなら、やはりアドリアンはラルムの運命の相手ではないと言うことか…。

 また同時にアマドーラの雫の力をラルムの誕生日当日に引き出したのはいったい誰なのか…。

 その理由として考えられる事はただひとつ。

 本来結ばれるべき運命の相手である者に会うことでアマドーラの雫は本来の力に目覚めたからに他ならない。



 ―どうしたものか。

 皮肉な事にも、ラルムはそのアドリアンに想いを寄せているようにみえる。

 ミラは小さな溜め息をついて、庭のラルムに再び視線を戻した。


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