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アマドーラ帝国の雫  作者: emily
25/34

波紋1

 帝国将軍の息女クララ アントスは、戴冠式の祝賀会で新皇帝レオナルシスのパートナーの一人に選ばれた。彼女が先ず思った事は、将軍家のプライドに恥じないように自分の役割を果すということである。今年で20歳になる彼女には許嫁がいない。それは父であるアントス将軍が、将来は皇太子レオナルシスの即位と共に願わくば我が娘を后妃にという思惑があるからに他ならない。しかし、祝賀会を終えた今でも当の本人であるクララはレオナルシスに皇帝陛下としての価値、謎に充ちたパワーの持ち主として興味関心は有るもののそれ以上の想いは持てずにいた。

 ―陛下はまさに…生まれながらの王者だ。高貴な威厳と風格を持ちそれでいて美しくてクール。あまり多くを語らず感情に揺れない…噂通りの方だ。父の言うように結婚相手としては申し分のない方なのだろう…クララはどこか他人事のように思った。

 クララの住む邸宅は帝都アマドールの中でも特権階級の貴族だけが住む【特別区】の中央に位置していた。広い屋敷の中でも一番気に入っている中庭の見えるサロンで、クララはお茶を飲みながら大きな溜め息をついた。

 まず、もう一人のパートナーであった隣国のマリン王女の陛下に対するアプローチが凄くて…このまま負けるわけにはいかないっ!!と少々躍起になって陛下に猛アタックした事を今更ながら悔やむ。しかしその甲斐もなく…陛下は3曲目のダンス以降は姿を消されてしまった。あれだけ二人で火花を散らしてアプローチ合戦を繰り広げていれば仕方のないことだと思う。

 《クララ、近く皇帝陛下にお前との縁談を持ちかけようと思う。それまでに出来るだけ陛下と距離を縮めるのだ》

 祝賀会のパートナーに決まってから毎日のように聞かされた父からの言葉…。

 ―私は本当にレオナルシス様と結婚するのだろうか…まるで実感が湧かない。


 そしてクララは祝賀会以降、実は最も深刻に悩んでいた事を思い出してまたひとつ大きな溜め息をつく。

 それは…帝都の騎士ルカについてだ。

 クララとルカは同じ【特別区】エリアに住み、幼い頃からの知り合いであった。母親同士が開くティーパーティーでもいつも顔を会わせていた。クララは物心つく頃より、5歳上の優しくて楽しい彼が大好きだった。しかし、ルカが帝都の騎士としてデビュー後、徐々にプレイボーイ風情を気取るようになってからは軽蔑すべき対象としていつも冷たく接していた。それなのに…その一方でいつも彼の姿を追っていたことも事実である。


 ―祝賀会でレオナルシス様を虜にしてルカに見せつけてやるんだからっ!!

 あの日…クララは意気込んでいた。

 隣国のマリン王女と競ってアプローチを繰り返したもうひとつの理由だ。

 クララは祝賀会が始まってしばらく経った頃、いつものように何気なくルカに視線を向けた。


 ――ちょっと…あれは、何!?

 祝賀会の席で、彼が今まで見たこともない美しい女性をパートナーとして同伴しているではないか!クララの目が大きく見開いた。

「えっっ…!?」

 クララはあの時の衝撃を今でも忘れられない。

 ―あの女性は、いったい誰っ…何者!?

 舞踏会でもずっとルカが彼女をリードしていた。私には全く見せたことのない笑顔で…。しばらくすると彼女は姿を消して、その後ルカはいつもの取り巻きメンバーとダンスを踊っていた。

 後半、私はレオナルシス様が姿を消されたことよりも…ルカがエスコートしていた女性に…更にはルカ自身に気をとられてしまった。

 《お前が!そんなことだからレオナルシス様を逃したのだっ!!》

 祝賀会の後、将軍である父からこっぴどく怒られたのは記憶に新しい。


 皆、男性はクララの長い黒髪とスレンダーな長身と豊かなバストを絶賛して美しいと称える。それなのに…帝都の騎士ルカはそんなクララをいつまでも子供のように扱う。それも気に入らない。

 でも…あのゴールドの髪の女性は“要注意”クララの女としての直感がそう告げていた。

 クララは生まれつき静止物体を移動させるパワーを持っていた。両手を頬に添えたまま…目の前のティーポットを傾けてカップにお茶を注いだ。

 ―やっぱり…あの女性を調べよう。

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