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半身との再会

「トシの奴、遅いな」


 その夜、斑鳩は縁側で月を見上げていた。


 夜空に浮かぶ月は雲に隠れてその輝きを淡いものにしている。


 青白い光はどこか寂しげで、今の自分の心を映し出しているかのような気がしていた。


 斑鳩はそこでずっと歳三を待っている。


 昼間にあんな別れ方をしたので、せめて寝る前にもう一度話したかったのだ。


「といっても、何を言えばいいのか分からないままなんだけどさ」


 自嘲気味に笑う斑鳩。


 そう。理由はどうでもいい。


 ただ、顔が見たかっただけなのかもしれない。


 そして歳三を待つ間、彼女に突き付けられた言葉について考える。


「俺はさ、多分、怖いだけなんだ」


 誰かの命を奪う事で、背負ってしまうものの大きさを自覚するのが怖かった。


 それはとても重くて、押しつぶされてしまいそうなほど大きなものだから。


 今まで自覚したことはなかったけれど、もしかしたら斑鳩は殺したくないからこそ強くなったのかもしれない。


 手加減が出来るほどの力の差があれば、相手を殺さなくても済むから。


 しかしそれが分かる前に、斑鳩は精神操作という逃げ道を作ってしまった。


 自覚はなくとも、この手は血にまみれている。


 今まで何人殺したかも分からないのに、今更自分の意志で人を殺すのが怖いなんて。


「最低だな、俺は」


 それでも、いつまでもこのままではいられない。


 自分の意思で、自分の力で、守りたい存在に出会ってしまったから。


 彼女を守るためなら、自らの意志で刀を振るう事をためらう訳にはいかない。


 覚悟を決めなければ。


 自分自身に誓ったことを果たすために。


 その決意を伝えたい。


 相手にされなくても、拒否されても、自分の意志を伝えたい。


「トシ……」


 その名前を呼ぶだけで、身体に力が湧いてくる。


 胸の奥から温かなものが込み上げてくる。


 誰かを愛しいと思うことは、きっとこの世界で一番尊い事なのかもしれない。


 少なくとも愛憎をまだ知らない斑鳩は、素直にそう信じることができた。


 愛情というのはきっと、


「キラキラと輝いていて、どこまでも進んでいける力を与えてくれるような、そんな無敵の力なんじゃないだろうか」


 なんて、そんな都合のいいことまで考えてしまう。


「そうね。私もかつてそう考えていたわ」


「っ!?」


 柱の向こうから聞こえた声に、思わず振り返る斑鳩。


 そこには、自分と同じ顔をした女性が立っていた。


 そして真っ白な着物の上に浅黄色のダンダラ羽織を着ている。


 それは、過去の投影。


「あの日、私が殺される日まではね」


 かつて歳三たちとともに新撰組を率いていた存在。


「鴨……」

  

 芹沢鴨が、かつての姿で斑鳩の前に立っていた。

 

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