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斑鳩の葛藤

「……トシ」


 短刀を放ったのは歳三だった。


 遅れながらも斑鳩と敵の場所を突き止め、そこで殺しを躊躇って窮地に陥っている斑鳩を救うために短刀を放ったのだ。


 しかし斑鳩は殺されなかったことに安堵するよりも、自分の所為で歳三の手を汚してしまったことを悔やんでいた。


 しかし斑鳩が自己嫌悪に陥る前に、歳三がその胸ぐらを掴み上げる。


「殺せないのなら、最初から殺し合いなんてするんじゃない!!」


 歳三は本気で怒っていた。


 自分を狙った刺客を追いかけて斑鳩はこんな目に遭ったのだ。


 危うく斑鳩は殺されるところだった。


 人を殺せない斑鳩が、歳三を守るために敵を殺そうとした。


 その結果がさっきの失態だ。


「違う。俺は殺そうとした……殺そうとしたんだ!」


 歳三の手を払い除けて、斑鳩は必死で反論した。


 自らの覚悟の弱さを、自覚の甘さを、これ以上つつかれたくなくて。


「死ぬところだったのにか?」


「………………」


「私はお前を守ると決めている。だからこれだけは言っておく」


 斑鳩に対して背を向けた歳三は、拳を固く握りしめてから続ける。


「覚悟の伴わない強さなんてのは、無力よりもタチが悪い」


「っ!」


「いざという時に躊躇うような奴に刀を握る資格はない」


 斑鳩の返事を待たないまま、歳三はその場から離れていく。


 斑鳩を振り返らずに。


「俺は…………!」


 斑鳩の足元には、既に事切れてしまった敵の姿がある。


 死体はまだ温かい。


 さっきまで生きていた人間。


 その命を止めるのは斑鳩でなくてはならなかったのに。


「畜生……!」


 許せないのは己の弱さ。


 悔しいのはその弱さのツケを歳三に払わせてしまっていること。


 この壁を越えない限り、斑鳩は戦士としていつまでたっても半人前なのだった。



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