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幕間 彼女の寝顔と一つの誓い

「……やれやれだな」


 畳の上で力尽きて眠ってしまった歳三を布団まで移動させてから、その寝顔をゆっくりと眺める斑鳩。


 その寝顔があまりにも無防備だったので、呆れるよりも魅入ってしまった。


「そうやって眠ってるときは、鬼副長だなんてとても思えないのにな」


 自分のそばで意識を失ってもいいと思える程度に信頼してくれているのは嬉しいのだが、いかんせん起きている時との落差が激しすぎて戸惑いの方が大きくなってしまう。


「ま、眠っちゃったのは俺のせいか……」


 ポリポリと気まずそうに頬をかく。


 ただでさえ疲れている歳三に対して押し問答をした上、あんなことまでさせてしまったのだ。もとい、してしまったのだ。


 そりゃあ体力気力根性ともに底が尽きても仕方がない。


 斑鳩もそこまでするつもりはなかったのだが、ついついタガが外れてしまったらしい。


「悪かったかな……」


 なんとなく、本当になんとなく程度の気持ちで眠っている歳三の頭をそっと撫でてみる。


「ん……」


 撫でられたことに反応して歳三が眠ったまま声を上げる。


「やべ。起こしちまうか……」


 あわてて手を引っ込めようとするが、


「………………」


 穏やかな寝顔のまま、うれしそうに笑った歳三の顔を見てその手が止まった。


「トシ……?」


 再びそっと頭を撫でてみる。


「う……ん……」


 今度は斑鳩の手がある方にその首を傾けてきた。


 そのぬくもりを求めるように、安らぎを感じるように。


「そっか……」


 こんなことが、うれしいのか……


 初めて見た歳三の本心。


 剣よりも、戦いよりも、歳三はきっとこういうものを求めているんだと思った。


 そして普段の歳三の振る舞いは、それとは真逆であることの意味にも気づいてしまった。


「トシは……そうやって自分を縛ってるんだな……」


 本当に欲しいものを何よりも遠ざけて、誰よりも自分を殺して、守るべき仲間を優先している。


 きっと、ありのままの彼女はとても脆くて儚い。


 だからこそ何よりも硬い殻で自らを縛っている。


 鬼の副長。


 そんな風に呼ばれるほどに自分を縛っている。


「でもさ、本当のトシは誰が守ってやれるんだ?」


 眠るときくらいしか無防備に慣れない彼女を、誰が解放してやれるのだろう。


 本来の土方歳三にいつか、戻してやれるのだろうか?


「俺は……」


 この儚い存在に対して何ができるだろうか。


「もしもトシが俺にすべてを預けてくれるのなら、俺はトシを選ぶよ」


 いつか歳三が本当に心を開いてくれる時が来たのなら、自分はそれを受け止めよう。


 そして受け入れよう。


 歳三の寝顔を眺めながら、手のひらに感じる重みと温度を感じながら、斑鳩は密かに誓った。

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