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副長と小姓の押し問答 02

「……一つ聞きたいんだが、トシがそこまでして俺を守ろうとするのは、本当に妹との約束の為だけなのか?」


「何が言いたい?」


「守れなかった妹の代わり。つまりは代償行為でしかないんじゃないか?」


「………………」


「そんな理由で守られるのは御免だ」


「……そう言われると、返す言葉がない。確かに私はお前と鴨を重ねている。今度こそ守りたいと思っている。それは多分、代償行為ということなんだろう」


「だったらもういいだろ。もう充分だろ?」


「……わ……」


 歳三はうつむいたまま、拳を握りしめたまま、声を絞り出す。


 言いたくないことを、耐え難いことを言おうとしているかのように。


「私にはもう、斑鳩を繋ぎ止める理由は残っていないのかもしれない」


「ああ」


 歳三は顔を上げるとキッと斑鳩を睨みつける。


 その視線を受けて斑鳩が及び腰になる。


「だが斑鳩には私の傍にいる理由がまだあるはずだ」


「は?」


「し……」


「はい?」


「……尻尾」


「………………」


「……尻尾に……また触りたいんじゃないのか……?」


「………………」


「………………」


 駄々っ子の次は捨て身だった。


 さっきとは別の意味で、恐らくは羞恥で体を震わせながら、真っ赤になって斑鳩の方を睨みつける歳三。


 しかしそんな状態のため、迫力は欠片ほどもない。


「……自分で言ってて悲しくなってこないか?」


「うるさい黙れ」


「………………」


 自らを餌にしての引き留め作戦は、若干空振りに終わったようで、歳三は表現に困る表情になっている。


 悔しいような泣きたいような、恥ずかしいような許せないような、この件に関する記憶を消去するために斑鳩の頭を千発ほどボコってしまおうかとでも言いたげな。そんな表情。


「ま、餌をチラつかされたら釣られてやるのもやぶさかではないけどさ」


「む……」


「でもそれって、いつ触れるんだ?」


「むむむ……」


「結局あれから一度も触らせてもらってないし」


「だ、だから役立つ情報を持ってきたら触らせてやると言っただろ。情報を隠しているのはそっちじゃないか」


「うわー。さらにそこでソレを絡めてくるか。意外と策士だな~」


「意外とは余計だ」


「ふむふむ。じゃあこうしようぜ。出ていくのはやめにする。だから情報なしで今触らせてくれ」


「!!」


 ニコニコした表情で迫ってくる斑鳩を相手に、歳三は真っ赤になったまま後ずさる。


 それを好機と見たのか、斑鳩はそのまま歳三を押し倒した。


「な、何をする!」


「いや~。せっかくだから色っぽいシチュエーションで」


「は、離せ!」


「却下♪ で、返事は?」


「うぐ……」


 歳三に覆いかぶさったまま、ものすごくいい表情で問いかける斑鳩。


 お互いの呼吸が感じあえるほどに近づいたところで、歳三は盛大なため息をついた。


「約束しろ。今後は自分から出ていくなんて言わないと」


「ああ。約束する」


 傍に居て欲しいと歳三が願ってくれるのなら、自分がその願いを叶える。


 それで歳三が少しでも安らいでくれるのなら、その助けになれるのなら。


 傍にいようと、そう決めた。


「じゃ、じゃあ……少しだけ……だぞ?」


「………………」


「な、何だ!?」


「いや。やっぱりそういう表情の方がトシは可愛いな~、と思って」


「っ!!」 


 今度はゆでだこみたいにさらに真っ赤になった歳三がよくわからない唸りを上げながら、自らの核石へと血液を付着させた。


「おおっ!」


 一瞬で耳と尻尾が生える。


 斑鳩は歳三の上から退いてから、すかさず尻尾へと手を伸ばした。


「んっ!」


 歳三の体がびくりと跳ね上がる。


「ふぁ……!」


 ふるふると震えながら、必死でこみあげてくるものを耐えるその姿は、どんなものよりも色っぽかった。


「うわぁ。やっぱりこれってエロくね?」


「っ!!」


 歳三が反射的に拳をふるう。


「おっと!」


 それを咄嗟にかわす斑鳩。


「コラコラ! 今回は合意の上なんだから暴力は無しだ!」


「うぅ……エロいって言うな……」


「すまん。間違えた。無茶苦茶可愛い」


「……うるさい!」


 言われなれない発言に戸惑う歳三が、尻尾を撫でられたまま身をよじる。


「も、もういいだろう!」


「まだ駄目に決まってんだろ」


「なっ!?」


 逃げようとした歳三を後ろから抱きしめてから捕まえる。


「ば、ばばばばばかばかばかばかっ! 離せ!」


「あ、悪い。咄嗟に捕まえようと思ったらつい」


 斑鳩も抱きしめるつもりまではなかったらしい。


 しかし歳三の抱きごこちが予想以上によかったので、離すのが名残惜しくなってしまった。


「ん~。やっぱりもう少しこのままかな」


「なっ!?」


 後ろから抱きついたまますりすりする斑鳩。


「~~~~~~~っ!!」


 そのまま尻尾を撫でたり、掴んだり、そのほかにギリギリエロい行為に走ったりしながら、思う存分歳三の体を堪能したのだった。


「………………」


「………………」


 後に残ったのは屍のごとくへたれている歳三の姿と、わが人生に悔いなし! のような満たされまくった表情の斑鳩の姿だった。


「……お、鬼かお前は……」


 かろうじて抗議の声を上げる歳三。しかしその声にもやはり張りがない。


「ははは。悪い悪い。滅多にない機会だから限界ぎりぎりまで楽しもうと思ってさ♪」


「……二度とごめんだ」


「それは俺の頑張り次第かな~」


「………………」


 その日は不覚にも、斑鳩の部屋で朝まで過ごしてしまう歳三だった。


 もちろんそこに変な意味はなく、動くこともままならないため仕方なくそこで寝るという、ひたすら合理的な判断によるものなのだが。


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