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くみちょ~参上!

 男色物語ノイローゼになりつつあった斑鳩を連れ出した歳三は、そのまま繁華街へと繰り出していた。


 食事処や居酒屋、甘味処や食材店が並ぶ活気溢れる響都の街並み。


 ついこの前大火事に見舞われたとは思えないくらいに、響都の街は元通りの活気を取り戻していた。


 もちろん、建物は壊れた部分も多いし、焦げたままの柱も残っている。


 しかし人がいれば、立ち直ってやり直そうとする人間がたくさんいれば、それだけで街は活気を取り戻すのだろう。


 商売の活気とは別に、少し遠くからは木材を金槌で叩く音も聞こえてくる。


 復興作業も順調に進んでいるようだ。


「そう言えば昼食がまだだったな。何か食べたいものはあるか?」


 おいしそうな匂いにつられてきょろきょろしている斑鳩を見て、歳三が苦笑しながら聞いた。


「そうだなあ。焼き魚が食べたい」


「分かった」


 歳三は一番近くにあった食事処へと入る。斑鳩もその後ろへと続く。


「おいでやす~」


 二人が店に入ると、店員の元気のいい迎え声が聞こえてくる。


 斑鳩は店に入った後もきょろきょろしている。どうやらこういう場所に入るのは初めてらしい。


「あまりきょろきょろするな。目立つから」


「ちぇー。分かったよ」


 まるで叱られた子供のようにほほを膨らませる斑鳩。しかし目立つのがよくないという自分の立場も分かっているつもりなので大人しく従う。


 空いている席に腰掛け、店員が注文を取りに来るのを待った。


「日替わり定食(魚)を二人分頼む」


「かしこまりました」


 注文を取りに来た店員は素早くメモを取って厨房へと戻っていく。


「俺、こういう場所に来るのは初めてだ」


「見れば分かる」


「ここは飯を食うところなんだよな?」


「見れば分かるだろう?」


「じゃああれは?」


 斑鳩は木枠から見える隣の建物を指さす。


「………………」


 そこは、いわゆる旅館兼料亭兼女遊び専門の店であり、夜には盛んに営業の女性が出てくるが、今は準備中の札がかかっている。


「なあ、あれって何の店なんだ?」


「……言いたくない」


 もちろん。そういう場所に行くのは男ばかりなので、歳三たちには縁のない場所だ。


「何でだよ」


「何ででもだ!」


 繰り返し質問すると、歳三はだんだん機嫌が悪くなっていくようだ。


「何だよ、ケチ。教えてくれたっていいじゃんかよ」


 などと斑鳩がむくれていると、


「あそこはね~。男の人が女の人に『よいではないかよいではないか~』って帯をぐるぐる剥ぎ取るところだよ~」


 などと、一部の偏見に満ちた回答が与えられていた。


 いつの間にか斑鳩の背後には、浅葱色のダンダラ羽織を着た少女が立っていた。


 素直そうな目鼻立ちが、子供っぽい印象を与える。


総司そうじ


「はーい。とっしーも今お昼ご飯?」


「そうだが。お前ら見回りはどうした?」


「してるよ~。でもお腹空いちゃったからはじめちゃんとご飯食べにきただけだよ~」


「そうか」


「……誰?」


 会話についていけない斑鳩が、子供のような少女を見て首をかしげる。


「ああ、こいつは……」


「はいはーい! 新撰組一番くみちょ~の沖田総司おきたそうじでっす!」


「くみちょ~……?」


「くみちょ~!」


 多分『組長』と言いたいのだろうが、総司の物言いがあまりに気の抜けるものだったため、そういう風には聞こえなかったらしい。


「で? キミが新しくとっしーのこしょーになったひと?」


「えーっと……まあ、そういうことに……なるの……かな?」


 総司の喋り方にいまいち慣れない斑鳩は、歯切れ悪く答えた。


「斑鳩だ。よろしくな、総司」


「よろしく~」


 自己紹介をしている内に、日替わり定食が二人分到着した。冷めない内に箸を手に取る二人。


「ほら、お前らもう飯は済んだんだろう? だったら見回りに戻れ」


「え~。もっといっきーと話したい~!」


「『いっきー』……?」


 いつの間にか変な呼び名をつけられてしまっている。


「いいから仕事をしろ。ただでさえ響都火災の一件で信用が低下しているんだからな。見回り警護だけでもちゃんとしないと、容保公に何を言われるか分かったもんじゃない」


「ちぇ~。わかったよぅ。仕事するもん。とっしーのけちんぼ」


「いいから早く行け」


 斑鳩に続いて総司にまでけち呼ばわりされる歳三だった。わずかに眉がぴくりとなったのを、斑鳩はしっかりと気付いている。


「はじめちゃん。行こー」


「………………」


 向こうの席に座っていた一がすっと立ち上がる。総司と同じく浅葱色のダンダラ羽織だ。


「なあ、あっちは誰なんだ?」


「三番組長、斉藤一さいとうはじめ……」


「うわおっ!」


 斑鳩が歳三に質問した直後に、一の方がぼそりと名乗っていた。


 気配のないままいきなり横に立たれていたので、ちょっとびっくりした斑鳩だった。


「……よ、よろしくな。一」


「………………」


 一は差し出された手を無視して、無言のままこくりとうなずいた。


「あ、あれ? 俺、もしかして嫌われてる?」


「気にしなくていい。無口キャラは一のデフォルトだ」


「無口キャラって……」


 それで組長が務まるんだろうか……。


 などと心配になる斑鳩だった。


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