大空とラピスラズリ
冬の童話祭2026に応募致しました作品です。
むかしむかし、あるところに、世界で一番「青色」を愛した王様がいました。
王様は、空の青を自分のものにしたいと思いましたが、空は高すぎて手が届きません。
海の青を自分のものにしたいと思いましたが、水は指の間からこぼれてしまいます。
「形があって、けっして色あせない、永遠の青が欲しい」
そう願う王様の前に、一人の旅人が現れ、小さな深い青色の石を差し出しました。
それが、ラピスラズリでした。
王様はその石を見て、息を呑みました。
それはただの石ではありませんでした。深い深い夜の色のなかに、本物の星のようにキラキラ輝く「金のつぶ」が散らばっていたからです。
「これだ! 私は大空のひとかけらを手に入れたぞ」
王様は喜んで、その石を宝石箱に入れ、カギをかけて大事にしまいました。
けれど、不思議なことが起こりました。箱に閉じ込めてからというもの、あんなに美しかった石が、なんだかただの「暗い石」に見えるようになったのです。
王様は悲しくなり、お城の庭にいた賢い羊飼いの少年に石を見せました。
「どうしてこの石は、輝かなくなってしまったのだろう?」
少年は石を手のひらに乗せ、太陽の光にかざして言いました。
「王様、この石が【空の石】だからですよ。」
少年は続けます。
「この青は、遠い昔に空が宇宙に恋をして、その想いが固まってできたものです。そして金の粒は、暗闇のなかでも『光を忘れない』という星々との約束のしるしです。
広く空の見えるの当たる場所に置いてあげないと、石は自分がどこにいるか分からなくなって、光るのをやめてしまうのです」
王様はハッとしました。
自分だけのものにしようと閉じ込めた時、その石から「宇宙」が消えてしまったことに気づいたのです。
王様は石を箱から出し、窓辺に置きました。
すると、ラピスラズリは窓の外の青空と、庭の木々の緑と、そして王様の瞳の輝きを吸い込んで、再びまばゆい宇宙をその身に宿しました。
「形あるものを手に入れることだけが、持つということではないのだな」
王様はそれから、石を飾るのをやめました。
代わりに、誰かが悲しんでいる時や、道に迷っている時に、その石をそっと見せてあげることにしました。
「見てごらん。君の心の中にも、これと同じくらい深い青と、消えない光があるんだよ」
そう伝えるたびに、ラピスラズリはどんな宝石よりも美しく輝いたといいます。




