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オフライン  作者: 悠羽
5/7

第五話 同じなのは、プレイだけじゃない。

負けた瞬間、

 ほとんど反射で、指が動いた。


今の、欲張りすぎた


 送信してから、

 一拍遅れて、別の文字が現れる。


欲張ったな

一回、引くべきだった


 画面を見つめたまま、

 私は、動けなくなった。


 ——言い方まで、同じ。



 最近、

 勝ち負けよりも、

 気になることが増えている。


 ミスの仕方。

 反省の向け方。

 そして、

 言葉が出てくる速さ。


焦ると、判断早くなるよね


なる

だいたい、そこで失敗する


 思わず、

 息が抜けた。


 笑ったのか、

 困ったのか、

 自分でも分からない。



 数試合続けて、

 似た場面で、似たように負ける。


 そのたびに、

 同じような言葉を選んでいる自分に気づく。


ここ、無理しなくてよかったかも


うん

一回、落ち着けばよかった


 ——前にも、

 こんなやり取りをした。


 そう思った瞬間、

 胸の奥が、わずかに重くなる。



 あの夜。


 野良で組んだ、

 後味の悪い一戦。


 空気が荒れて、

 言葉が尖って、

 最後は、何も残らなかった試合。


前出すぎ

もう一拍、待てばよかっただろ


 確かに、

 同じことを言っていた。


 同じ判断で。

 同じ苛立ちで。



 でも、

 今は違う。


 責め合わない。

 逃げない。


 ちゃんと、

 次を考えている。


 それが、

 余計に、否定を難しくする。



少し、休憩する?


うん

頭、冷やそう


 その一文に、

 胸の奥が、静かに沈んだ。


 確認すれば、

 楽になるかもしれない。


 でも、

 確かめた瞬間に、

 今の関係が壊れる気もした。



 彼がログアウトする。


 フレンド欄。


 ——オフライン。


 最近、

 この表示を見ると、

 安心と不安が、同時に来る。


 知らないままでいられる時間。

 でも、

 知らないままではいられない感覚。



 私は、

 もう分かっている。


 偶然じゃない。


 でも、

 まだ言葉にはしない。



――彼視点


 彼女のメッセージを見て、

 俺は、視線を落とした。


欲張りすぎた


 ——それだ。


 あの夜、

 自分が言った言葉と、同じだった。



 喧嘩で終わった、

 あの野良。


 感情が先に出て、

 言葉が鋭くなって、

 最後は、切るように終わった一戦。


 今、彼女とやっているのは、

 その続きみたいで、

 でも、まったく違う。



 同じ判断。

 同じ反省。

 同じ言葉。


 それなのに、

 空気は、穏やかだ。


 だからこそ、

 否定できない。



少し、休憩する?


 その提案に、

 救われた気がした。


 今、確かめたら、

 全部が繋がってしまう。


 繋がったら、

 もう戻れない。



 ログアウトして、

 フレンド欄を見る。


 彼女は、まだオンライン。


 少し時間を置いて、

 もう一度ログインする。


 ——オフライン。


 それを見て、

 胸の奥が、静かにざわついた。



 否定できないところまで、

 来てしまっている。


 でも、

 今日は、踏み込まない。



 同じ夜。

 別々の部屋。


 同じ言葉。

 同じ間。

 同じ後悔。


 偶然では片づけられない一致が、

 二人の間に、

 静かに積み重なっていく。


 ——オフライン。


 この距離は、

 もう、安全じゃない。


第6話:声を、繋ぐ

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