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オフライン  作者: 悠羽
4/7

第四話 同じミスは、偶然じゃない

負けた理由は、分かっていた。


 焦った判断。

 一歩、前に出すぎたこと。

 カバーが、間に合わなかった。


 リザルト画面を眺めながら、

 私は、短く息を吐いた。


ごめん

今の、私の判断ミス


 少し間があって、

 返事が届く。


俺も前出すぎた

次は引こう


 その一文に、

 指が止まった。


 ——同じことを、考えていた。



 デュオでのプレイは、

 もう何度か重ねている。


 VCは繋がない。

 テキストだけ。


 それでも、

 噛み合う試合が多かった。


 噛み合わないときも、

 原因は、だいたい同じだ。



 同じ場面で、前に出る。

 同じ場面で、引けなくなる。


 ミスの形が、

 少しずつ、重なっていく。


 ——あれ。


 胸の奥に、

 また、あの感覚が残る。



 考えすぎだ。


 そう言い聞かせても、

 否定する理由が、

 少しずつ減っている気がした。



 ふと、

 思い出す。


 野良で組んだ、

 最悪な試合。


 空気が荒れて、

 言葉が尖って、

 最後は、無言で終わった一戦。


 名前も、アイコンも、

 覚えていない。


 でも。


 あのときも、

 同じタイミングで前に出た。


 同じところで、

 判断を誤った。



 ——似てる。


 心の中で呟いて、

 すぐに打ち消す。


 まだ、決めつける材料はない。


 ……本当に?



次、どうする?


もう一戦いける?


いけるよ


 キーボードを叩く指が、

 ほんの少し、慎重になる。



 次の試合。


 今度は、

 前に出るのを、一拍遅らせた。


 すると、

 彼も、同じように引いた。


 勝利。


ナイス判断


そっちこそ


 画面を見つめながら、

 胸の奥に、静かなざわめきが残る。


 偶然、ではない。


 でも、

 確信には、まだ届かない。



 数試合して、

 彼がログアウトした。


 フレンド欄。


 ——オフライン。


 最近、

 この表示を見るたび、

 少しだけ、考えてしまう。



 名前じゃない。

 アイコンでもない。


 判断。

 間。

 癖。


 そういうものが、

 人を覚えさせる。


 私は、

 その事実に、

 気づき始めていた。



――彼視点


 リザルトを見て、

 俺は、眉をひそめた。


 前に出すぎた。

 判断が、早すぎた。


俺も前出すぎた

次は引こう


 送信してから、

 胸の奥に、

 小さな引っかかりが残る。



 彼女とプレイしていると、

 失敗の形が、

 やけに似ている。


 良い意味でも、

 悪い意味でも。



 思い出すのは、

 あの夜の野良。


 喧嘩で終わった、

 後味の悪い一戦。


 名前は、思い出せない。

 でも、

 前に出すぎて、

 引けなくなったあの感じだけは、

 鮮明だ。



 似ている、気がする。


 でも、

 まだ結びつけるのは早い。


 そう言い聞かせるほど、

 違和感は、形を持ち始めていた。



 次の試合。


 前に出るのを、

 ほんの少し、我慢する。


 彼女も、

 同じタイミングで引いた。


 勝利。


ナイス判断


そっちこそ


 そのやり取りに、

 安堵と、

 小さな不安が、同時に残る。



 ログアウトして、

 フレンド欄を見る。


 彼女は、まだオンライン。


 少し時間を置いて、

 もう一度ログインする。


 ——オフライン。


 それを見て、

 なぜか、ほっとした。



 もし、

 ここで確かめてしまったら。


 今の関係は、

 簡単に形を変えてしまう。



 同じ夜。

 別々の部屋。


 同じミス。

 同じ修正。

 同じ勝ち方。


 偶然では済まされない一致が、

 二人の間に、

 静かに積み重なっていく。


 ——オフライン。


 この距離は、

 少しずつ、

 不安定になり始めていた。


第5話:同じなのは、プレイだけじゃない。

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