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双蛇ノ縁ーソウダノエニシー  作者: 環林檎


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8/62

第8話ー健啖家達の1日ー

諸事情により遅れました…

毎回申し訳ないです…

またメシウマ回!

縁達は充実した昼げを終えた。縁は自分のことを健啖家だと思っているが、類は友を呼ぶとはまさにこのことだと思っている。使役獣達もみな、見た目よりよく食べるのだ。そこにヤオとユエという若者が加わった。この2人もよく食べる。縁は、

「ここまでスッキリ食べてくれると気持ちがいいねぇ。」

と笑顔で言った。

「デブな蛟になっちゃう。」

ユエが殊勝なことを口にする。

「ユエ、お前そんなこと思ったこと1mmもないだろ。」

ヤオが冷静に突っ込む。

「うっせぇ低血圧野郎。」

ユエがじとっとした目で言い返す。

「うぅっそれは…。」

ヤオはそれを言われてると二の句が継げないらしい。

「おいおい喧嘩するなよ〜。まだ悠淵まで二日半あるんだから!暴走されたらたまったもんじゃない。」

縁が窘める。2人は顔を見合せて気まずそうにクスッと笑った。


昼食の跡はほぼ何も残っていなかったが、念の為周りをチェックする。特に何も無い。

「では出発!ヤオとユエは気配探知頑張れよ〜。」

縁は号令をかけた。


この日は特に何も問題なく進んだ。時々、午前中のようにモンスターを発見することがあったが、縁のストックに余裕があったこと、現在追われていることを考えて狩ることはなかった。

…ヤオ、師匠のさ、立場って一体なんなんだろうね?気にならない??…

ユエがヤオに聞く。

…確かに気になる。後で話すと言っていたし、今日の夕食の時に聞いてみるか?…

ヤオは顔色を変えずに答える。

…ん〜晩ごはんはなにか作るかもしれないし、今聞かない??ダメ?…

ユエが口を尖らせる。

…ユエ様、丸聞こえですよ。…

稲ちゃんがガックシと頭を落とす。

ユエは固まってしまった。

「あ、アハハハハハ。その〜気になるじゃん!だって!」

ユエはとうとう声に出して言った。

「ま、気になるよな。私も先延ばしにして悪かったよ。まずはこれを見てくれ。」

縁は歩みをとめずポシェットから、冒険者証を取り出す。一見ただの銀色のカードだが、わかるものが見ればわかる。これは魔法金属、ミスリルのカードだ。

「ほれ。」

そこにはローマ字でENISHI TAKINO ” S”rankと印字されていた。

「せ、世界7大陸に1000人といないSランクなのですか?!」

ヤオが高い声を上げる。

「実はな、そうじゃないんだよな〜。」

縁が気まずそうにカードの”S”rankの上をなぞる。そこには”SSS”rankと表示されていた。

「「は、ははぁ?!!!!!」」

思わずヤオとユエは飛び退く。ベタな展開だ。

「こんな反応されるから見せたくなかったんだよ〜。」

額に手を当てる縁。

「い、いや、SSS(スリーエス)なんて、伝説じゃないですか?!世界に20人いるとかいないとか、ナンバーズとも呼ばれているとか…一晩で大都市が消え、エンシェントドラゴンを倒し、山を吹き飛ばしたことがあるとか、夢物語の存在だと。」

思いっきり動揺を隠せないヤオ。

「まぁ私はNo.5(ナンバーフィフス)だよ。」

縁は正直に答える。

「そう!縁様は昔からナンバーズでした。もちろん古龍を倒したこともございます。あれは複雑な事情がございましたが…。そもそもSランク自体が希少ですが、スリーSともなると独りで戦略級魔術をいくつも行使し、国ひとつ滅ぼすことが片手間にできます。そのため普段はただのSランクとして活動するように、冒険者ギルドから要請されています。」

稲ちゃんが無い胸を張る。縁は、

「そんな怖い自己紹介とかされたくないのが人情だろう?!!!」

と、嘆く。ヤオとユエはなかば呆然としながら、縁の強さを振り返っていた。確かに、自分たちは歯が立たなかった。けれどこれほどの人物であったとは。下手に敵対などしていたら、今頃跡形もなくなっていたかもしれない。

しかしユエは気楽に言う。

「ま、でも激ウマなご飯を作ってくれる師匠は、実は天地をひっくり返すほど強かったってわけね!なんか浮世離れしてるところも納得しちゃった。」

ヤオもいまいち現実に追いついていない様子で、

「では今回我らを調査しに来たのは、日本の冒険者ギルドからの依頼なのですか?」

と聞く。縁はこめかみをかきながらこれまた渋い声で、

「違うんだよなぁ〜。実は私今、朝廷に仕えててさ〜帝からの勅命なんだよ。本当は土佐守、四国総鎮護っていう知事みたいな職に就いてる。でも、日本の帝って、夢見で未来を見ることがあるんだ。それで私が指名されたわけ。」

縁は面倒くさそうに髪をクルクルといじる。

「「は、はぁ?」」

ヤオとユエはもはや目が点だ。

「私も帝がどんな夢を見られたのかは知らないけど、とにかくこの陰陽の乱れは私しか対応できないって言われたよ。まったく、厄介事ばかり押し付けやがって〜。」

縁は憤慨する。ユエは

「ん〜頭痛くなってきたけど、どシンプルに言えば、私たちのことは師匠にしか扱えないってことでしょ?まぁそれがわかればいいじゃん。」

ともう思考を放棄する。ヤオも、

「うん。そうだな!」

逆に晴れやかな顔をしている。

「あ、うん。そこまで開き直ってくれたら私も助かる。」

縁はホッとした顔で言った。ちなみに稲ちゃんは無駄に偉そうにしている。


長々とくっちゃべっている内に、日が傾いてきた。標高がかなり下がってきたので道も険しくない。しばらく歩いていくと道の脇に広場が見えてきたので、縁は、

「今日はここで野営をしよう。」

と宣言した。

「今日のご飯は何かなぁ〜♪♪♪」

ユエがルンルンしている。

「昨日は魚だったから、肉がいいと思うなぁ〜。」

珍しくヤオがアピールしている。

「あっはははは!じゃあ今日は生姜焼きにするか!特製ダレに漬け込んだオーク肉が2種類あるんだ!それをササッと焼いて食っちまおう!」

縁は空間魔術に保管している食料のリストから、最適解を導き出す。

「じゃあ私とヤオは、早速焚き火作るね!」

ユエがテキパキと動き出す。ヤオも薪を取りに林に入っていった。 縁は昨晩も用意した調理台セットを出し、銅製のよく手入れされたフライパンを出した。玉ねぎを1cmはばにカットし、キャベツは千切りにしておく。スープは事前に鶏ガラで出汁をとっておいたので、わかめスープにする。ユエとヤオが作ってくれた焚き火に鍋をかける。

空間魔術から『オーク肉生姜焼きバラスライス』、『オーク肉生姜焼きロース厚切り』のふたつのタッパーを出していく。準備が出来た。まずは薄切りオークからだ。今回もカセットコンロを出し、フライパンを熱する。良く温めたら、米油をしき、玉ねぎを炒める。しんなりしてきたら、タッパーの薄切り肉をタレごと入れる。菜箸でよくほぐしながら炒めていく。この時点でもうヨダレが出てきそうな、香ばしい香りがする。

「師匠〜。これご飯似合いそう〜。絶対にオカワリする!!」

…やばい、ご飯炊くの忘れてた、戦術の致命的欠陥だ!!!…

ユエの一言で縁はピンチに気づく。こんな時はもちろん一升炊きの炊飯器だ。事前に洗っておいた一升の米をスピーディにセット、そして早炊きのスイッチオン!!これで間に合う!!! ありったけの薄切り肉と玉ねぎを炒め終わったら、大皿にまとめて、空間魔術に一旦保管。

次は厚切りの方だ。分厚いロース肉と肩ロース肉は、それぞれグローブのように切れ目がはいっている(筋に切れ目が入っていることで柔らかく食べられる)。大きなフライパンでも、1度に焼けるのは4枚。コツコツ焼いていく。

「主様〜まだですか〜ヨダレが止まりません〜」

白曜が興奮してじゃれついてくる。

「こらこら!毛が入ってしまうから!もう少し待ってて!ステイだ!」

縁は頭を優しくカキカキしてやりながら宥める。

「主様!我らは犬ではございません!狗神です!」

ヤキモチを焼いた黒曜も頭を突っ込んでくる。

「あちちちち!油が飛ぶからやめなさい!」

縁は笑いながらなだめた。


「あれ、どう思う?」

ヤオがユエに聞く。

「聞くなよ。狗神様達に半殺しにされるぞ。」

「だよな。」

2人は、戦闘シーン以外の狗神たちの無邪気さに、”犬”を見いだしていたが口には出さなかった。賢明である。


そうこうあって、晩ご飯ができた。量が量なのでキャベツは各自のお皿に乗っているが、肉は大皿からトングで取る方式だ。もちろん、使役獣達は全員人型である。

「では、合掌、いただきます。」

「「「「「「「いただきます」」」」」」」

薄切り肉の方からいったのはヤオである。

「かーーーっっ、上手い!このオーク肉の油と生姜の風味が絶妙だ!白米が止まらん!!!!」

上品に、かつバクバクと食べ進めている。ユエは厚切りの方から行くようだ。ナイフとフォークで切り分け、口に運ぶ。

「う、うまぁぁ〜。しっとりしてて柔らかくて、臭みもない。キャベツと合う〜」

手が止まらない様子だ。

縁は、

「ここで、悪魔のトッピングをしないかい?みんな。」

と悪役のように笑った。

「「え??」」

ヤオとユエはぱちくりしている。他の使役獣達はハイタッチしたりして大喜びだ。

「4人ずつだからな、待ってろよ〜。」

縁は再びフライパンを熱し、多めの油を引く。そこに落としたのは卵。目玉焼きだ。ふちをカリカリに焼いた目玉焼きを、肉の上にのせる。

「食べてみな。昇天するぜ。」

ヤオとユエはごくりと喉を鳴らし、それぞれ肉と卵を口に運んだ。

「「んんんんん〜〜」」

2人は感動していた。封印される前も美味しいものを食べたことはあったと思うけれど、断然今の食のクオリティの方が高い。この飯だけで一生師匠についていける。そんな気がした。

縁はそれぞれに喜びを爆発させている自分の仲間たちを見て、

ー今日も良きかな。ー

と月を見上げた。こんな日々は悪くないが、一体帝はどんな夢を見たのやら。一抹の不安を抱きつつも、仲間たちが幸せなら自分も幸せな縁だった。



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