第77話ー煙をくゆらせてー
遅くなってすみません!
故あって海鮮料理食べてました( ・ω・っ)З
この日の夕食は、豪華なものになった。縁と弟子たちは。瑠璃の小箱亭で、好きに食べ、好きに飲んだ。健啖家たちの夕食は、厨房の人々をクタクタにさせて終わった。
自室にてー。縁は窓辺で煙管を吹かしていた。
ー自分の過去をさらけ出したら、弟子たちはどう反応するのだろう…?ー
自分の過去を伝える上で不安に思っていたことは、あっさりと拭われてしまっていた。
夜風に煙がたなびく。
この煙管は、初めて仕えた日本の帝より賜ったものだ。
宮家の蒐集品のひとつ――花魁煙管。
羅宇は長く、赤い。
煙管盆には、引き出しの金具に獅子と牡丹の彫り物。
吸口は銀。
雁首にもまた、牡丹と獅子が彫り込まれている。
獅子は百獣の王、牡丹は百花の王。
それらは文殊菩薩の象徴でもある。
本来は、聡明で芸事に秀でた花魁に贈られるような、江戸の粋な品だ。
神聖な宮家に伝わるには、いささか俗っぽい。
だが、あの老帝は――
「お前には、これぐらい色っぽいものが良く似合う。」
とニヤッと笑って下賜しできたのだ。
煙草の毒性は縁には意味をなさない。そう思って謹んで頂いた。
そして考え事をする時や、ゆっくりと頭を空っぽにしたい時に吸っているのだ。
ーこの煙管を貰って千年を超え、二千年を超え、いくつになるのか…。初めは慣れなかった煙管も、手にしっくり馴染むようになった。今日も不安を紛らわせるために、この煙管で煙草を吸ったんだ。ー
縁は薄闇に流れる煙を眺めながら思った。
まだ弟子たちに全てを話しているわけではない。長い時を生きると、多くの人を見送ることになる。老帝を見送り、恩人も見送り、恩人の子孫たちも見送ってきた。縁はずっと取り残されて行く立場だった。
ーーだが。
この陰陽の化身であるヤオとユエとの出会いで、自分は確実に変わるという気がしていた。長い生に耐えられずコールドスリープしている仲間たちに、答えを渡してあげられるような…そんな気がするのだ。
それは死ではない。真っ当な人としての命。
もちろんNo.3(ナンバーサード)や、No.6(ナンバーシックス)といった研究バカには、時はいくらあっても足りないだろうから、わざわざ命の引導を渡す必要はない。でも長い生に疲れ切ってしまった、大きな罪に心が折れてしまった、そんな仲間に、寿命という終わりを渡してあげられるという、勘に近い"確信"が縁に生まれつつあった。
ー私の勘は、魔法のない時代から、外れた試しがないんだ。No.7(ナンバーセブンス)、お前にも安らぎを与えてやれるかもしれない…。ー
縁は夜空にかかる月に、煙を吹きかけた。
月の光は星の輝きを鈍らせる。しかし人は知っている。そこに確かに星はあるのだと。縁は微笑みながら、煙草をくゆらせた。




