第71話ー陰の暴風ー
はい!3日ぶりです。
更新したのでストック無くなりました。
書かねば…泣
その頃縁は刀を振るい続け直進していた。すると背後から強烈な殺気を感じ、振り返りざまに刀を振り切った。
「くそっ!やっぱ重いな。」
そこに居たのは烈牙である。縁は、
「お前、そこで何してる。そして今何を行っているのか、わかっているのか?」
眉をひそめて言う。
「あぁ。わかってるさ!でもいいだろ?このリザードマン狩り、勝ったも同然なんだからな。俺と決闘しろ。」
と烈牙が不敵に笑った。
「はぁ?お前自分勝手にも度が過ぎるな。」
縁は刀を肩に担いでため息を着く。
「Sランク冒険者、縁が殺気立ってる討伐戦中じゃなきゃ、俺の挑戦は意味が無いんだよ。」
烈牙は大剣を担いでいった。
「ほぅ。随分な自信だな。額の汗は準備運動のし過ぎか?」
縁は不愉快そうに言う。
「俺がお前にかなわないのはわかってるさ。だが、絶対にお前から何かを得たい!俺は未来のSSS冒険者だ!」
烈牙は大剣を構え、走り出した。
「くそっ面倒だな。」
縁は下段に構えて走り出す。
双方の武器が火花を散らす。烈牙は大柄で大剣はクレイモアほどある。一方縁は身長150cm程と小柄、日本刀は細い。それがせり負けず、むしろ縁が大剣をしたから突き上げようとしている。
「キィン!」
金属音が響き、双方は別れる。そこで間合いを取り合う。先に動いたのは縁、神速の踏み込みで烈牙の背後をとる。そして刀の峰で烈牙の背中を、強か打ち付けた。
「ゲホッ!!」
烈牙は前かがみになる。そこを縁はみぞおちを、拳で振り抜いた。
「ゴパァッ!!」
烈牙は唇から血を流し、烈牙は縁を睨みつけた。
「うわぁぁぁ!!!」
と闇雲に大剣を振りかぶり、至近距離の縁を狙う。縁は轟速で刀を振り抜き、大剣を吹き飛ばした。衝撃で烈牙は木に打ち付けられる。自分の全力をいとも簡単に跳ね除ける縁を、烈牙は地べたから見上げる。その目スレスレに縁は切っ先を向けた。ひたり。
初めて縁と目が合った烈牙は、背筋が凍った。
縁の目には何も写っていない。自分の姿など写りもしない。ただ道端の石ころを、不愉快に思いながら脚で退けるような、そんな瞳。
「下らない遊びは終わりだ。お前の向上心に免じて、このことは黙っておいてやる。さっさと本来の仕事をこなすんだな。」
縁は氷のような声音で言い捨て、烈牙に背を向ける。
その時だった。
「ギャオオオオオオオォ!!!!」
と絶叫が響いてきた。縁は、
「これは…この力は…まずい!」
と呟き、元来た道を走っていく。
時間はしばらく遡る。
ヤオ、ユエ、ヤンガが戦闘している場所は、屠殺場のような様相を呈していた。
「だいぶジェネラルも倒したな。」
ヤオはユエとヤンガに声をかける。
「そうね。上位種もそう何体もいるわけじゃないみたいだし。」
とユエ。
「ただのリザードマンはもうほぼいないよ。」
とヤンガ。
次の場所へ移動しようとする3人の前に、突如として強い魔力反応が現れる。そして、奇妙な違和感も。
「あら、わざわざ探さなくても、御大登場ってわけね。」
ユエがニヤッと笑う。目の前には、リザードマンジェネラルよりも2回りほど大きく、どこから手に入れたのか鎧と盾と大剣をもつ、リザードマンが仁王立ちしていた。
「リザードマン、キング。」
ヤンガは緊張した面持ちで言った。ヤオは満面の笑みで、
「上等………上等だぁ!!」
と叫び駆け出す。
「バコンッっ!!!」
「バキッ」
ヤオの陽の気を纏った拳が、金属の盾を貫通する。リザードマンキングが驚愕の表情を浮かべている。
「ギャオオォ!」
大剣でヤオを両断しようとする。ヤオは素早く引く。ガラ空き背後をユエが襲う。
「ギィン!!」
「かったい!けど!」
ユエは影で断ち切れなかった尻尾を再度狙う。
「スパッン!!!」
と魔力を通した暗器で切り取った。
「よっしゃ!!」
間合いをとったユエはガッツポーズを取る。そこを、
「茨よ貫け!ローズ・ランス!!」
ヤンガの草木魔法がリザードマンキングを貫いた。
「やったか??!!!」
ヤオの言葉に全員が敵を見つめた。
「グオオォ…」
リザードマンキングは口から血を流しながら、まだ立っている。そして懐に手を伸ばす。
”キィーーーーーン”
激しい耳鳴りがユエを襲い、片膝をつかせる。
ーあれは、ダメだ、使わせては行けない!ー
直感がそう告げていた。しかし、声が出せない。
リザードマンキングが持っているのは、40センチほどの黒い水晶のようなもの。それをリザードマンキングは躊躇いなく胸に突き刺した。
「ギャオオオオオオオォ!!!!」
キングの絶叫がそこらじゅうに響いた。
「なんだ…?この嫌な予感は…」
ヤオが周りを見渡しながら言った。
「ユエ!ユエ!!!」
ヤンガは、頭を抑えてしゃがみこむユエをゆする。
「ヤ、ヤンガ…今のリザードマンキングは…”只者”じゃないわ…。」
ユエはゆっくり立ち上がりながら言った。ユエから影がじわじわと滲み出ていく。
「力が……制御できない…!」
ヤンガが、
「エア・ウォール」
試しにユエに結界を張ってみる。それを透過していく影…。
「だめだ!ユエ、集中して堪えるんだ!」
ヤンガは叫び、リザードマンキングの方を見た。そして戦慄した。
水煙をたたせ、切れたはずの尻尾が4つになって復活している。
「フシューーーー!!!」
と息を吐くリザードマンキング。
ヤオは陽の気をまわし、全身に纏わせる。
「俺が行く!」
一瞬で間合いを詰めたヤオの拳が一閃する。それを受け止めたのはリザードマンキングの手のひらだった。目を見開くヤオだったが、そこを軸にして左脚の蹴りを放つ。リザードマンキングはそれを紙一重で交わし、体を回転させ尻尾でヤオを吹き飛ばした。
「カハッ!!!」
岩壁を凹ませてヤオが打ち付けられる。
「ヤオ!?!オール・ヒール!!」
ヤンガが咄嗟に治癒魔法を飛ばす。しかし、完治しない。そこで動いたのはユエだった。
「シャドウ・スピアー!!!」
力の制御ができず、大量の影の針がそこらじゅうを襲う。しかし…
「嘘でしょ…?!」
リザードマンキングは刺された端から回復している。
「くそっ陰の気が陽の気を上回ってやがる。」
口の端から流れる血を拭いながら、ヤオがユエとヤンガの前に立つ。
対してリザードマンキングは水煙の中。
「ガアアアア゛ア゛ア゛ア゛!!!」
とキングの咆哮が辺りを制圧する。
3人が消耗戦を覚悟したその時、ユエだけが気づいた。
――来た。
「トス」
突如としてキングの動きが止まった。キングが体を見下ろすと胸の水晶の部分から、赤い刃が覗いている。
「サラサラサラサラ…」
水晶の形が崩れ始める。
「ア”ア”ア”ア”アアア!!!」
キングが絶叫する。背後の何者かを殺そうと体を捻る。何者かは、ただ静かに刀を振り抜いた。愛刀――肥前忠広。一切の抵抗なく、空間を切る音。
「斬ッ」
キングの首が中を舞った。
水煙の中、ヤオたちからは影だけが見える攻防、水煙の中から転がり出てきたリザードマンキングの首。誰も、動けなかった。何が起きたのか、理解できなかった。首から血が黒々と流れる。そして向こうから歩いてくる小柄な影。
「みんな、待たせてすまない。」
それは挨拶でもするような力の抜けた声だった。
「「「師匠…。」」」
弟子達は思わず唾を飲み込む。自分たちが死をも覚悟した相手に、たった2振り。
「ユエ、大丈夫だったか?」
という縁。
「う、うん。」
ユエは理解する。自分は危うく、陰の気に飲まれるところだったのだと。そして、陰の化身である自分より、同じ陰属性の縁はそれを抑え込めるだけの力があるのだと。
森の陰で、その光景を見ていた男がいた。
烈牙は、ただ震えていた。
――あれが、頂。あれはSランクではない。あれこそが、本当の頂きたる、SSS。
冒険者の勘がそう告げていた。ー
縁は、何事も無かったかのように、振る舞う。3人は知った。師匠と慕う縁という人物の底知れなさを。そして同時に理解した。自分たちは、まだ強者の入口にすら立っていないのだと。また、それだけの強さを持つに至った、彼女の素性に強く興味を引かれるのであった。




