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双蛇ノ縁ーソウダノエニシー  作者: 環林檎


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71/76

第71話ー陰の暴風ー

はい!3日ぶりです。

更新したのでストック無くなりました。

書かねば…泣

その頃縁は刀を振るい続け直進していた。すると背後から強烈な殺気を感じ、振り返りざまに刀を振り切った。

「くそっ!やっぱ重いな。」

そこに居たのは烈牙(リエヤー)である。縁は、

「お前、そこで何してる。そして今何を行っているのか、わかっているのか?」

眉をひそめて言う。

「あぁ。わかってるさ!でもいいだろ?このリザードマン狩り、勝ったも同然なんだからな。俺と決闘しろ。」

と烈牙が不敵に笑った。

「はぁ?お前自分勝手にも度が過ぎるな。」

縁は刀を肩に担いでため息を着く。

「Sランク冒険者、縁が殺気立ってる討伐戦中じゃなきゃ、俺の挑戦は意味が無いんだよ。」

烈牙は大剣を担いでいった。

「ほぅ。随分な自信だな。額の汗は準備運動のし過ぎか?」

縁は不愉快そうに言う。

「俺がお前にかなわないのはわかってるさ。だが、絶対にお前から何かを得たい!俺は未来のSSS(スリーエス)冒険者だ!」

烈牙は大剣を構え、走り出した。

「くそっ面倒だな。」

縁は下段に構えて走り出す。

双方の武器が火花を散らす。烈牙は大柄で大剣はクレイモアほどある。一方縁は身長150cm程と小柄、日本刀は細い。それがせり負けず、むしろ縁が大剣をしたから突き上げようとしている。

「キィン!」

金属音が響き、双方は別れる。そこで間合いを取り合う。先に動いたのは縁、神速の踏み込みで烈牙の背後をとる。そして刀の峰で烈牙の背中を、強か打ち付けた。

「ゲホッ!!」

烈牙は前かがみになる。そこを縁はみぞおちを、拳で振り抜いた。

「ゴパァッ!!」

烈牙は唇から血を流し、烈牙は縁を睨みつけた。

「うわぁぁぁ!!!」

と闇雲に大剣を振りかぶり、至近距離の縁を狙う。縁は轟速で刀を振り抜き、大剣を吹き飛ばした。衝撃で烈牙は木に打ち付けられる。自分の全力をいとも簡単に跳ね除ける縁を、烈牙は地べたから見上げる。その目スレスレに縁は切っ先を向けた。ひたり。

初めて縁と目が合った烈牙は、背筋が凍った。

縁の目には何も写っていない。自分の姿など写りもしない。ただ道端の石ころを、不愉快に思いながら脚で退けるような、そんな瞳。

「下らない遊びは終わりだ。お前の向上心に免じて、このことは黙っておいてやる。さっさと本来の仕事をこなすんだな。」

縁は氷のような声音で言い捨て、烈牙に背を向ける。


その時だった。

「ギャオオオオオオオォ!!!!」

と絶叫が響いてきた。縁は、

「これは…この力は…まずい!」

と呟き、元来た道を走っていく。


時間はしばらく遡る。

ヤオ、ユエ、ヤンガが戦闘している場所は、屠殺場のような様相を呈していた。

「だいぶジェネラルも倒したな。」

ヤオはユエとヤンガに声をかける。

「そうね。上位種もそう何体もいるわけじゃないみたいだし。」

とユエ。

「ただのリザードマンはもうほぼいないよ。」

とヤンガ。

次の場所へ移動しようとする3人の前に、突如として強い魔力反応が現れる。そして、奇妙な違和感も。

「あら、わざわざ探さなくても、御大登場ってわけね。」

ユエがニヤッと笑う。目の前には、リザードマンジェネラルよりも2回りほど大きく、どこから手に入れたのか鎧と盾と大剣をもつ、リザードマンが仁王立ちしていた。

「リザードマン、キング。」

ヤンガは緊張した面持ちで言った。ヤオは満面の笑みで、

「上等………上等だぁ!!」

と叫び駆け出す。

「バコンッっ!!!」

「バキッ」

ヤオの陽の気を纏った拳が、金属の盾を貫通する。リザードマンキングが驚愕の表情を浮かべている。

「ギャオオォ!」

大剣でヤオを両断しようとする。ヤオは素早く引く。ガラ空き背後をユエが襲う。

「ギィン!!」

「かったい!けど!」

ユエは影で断ち切れなかった尻尾を再度狙う。

「スパッン!!!」

と魔力を通した暗器で切り取った。

「よっしゃ!!」

間合いをとったユエはガッツポーズを取る。そこを、

「茨よ貫け!ローズ・ランス!!」

ヤンガの草木魔法がリザードマンキングを貫いた。


「やったか??!!!」

ヤオの言葉に全員が敵を見つめた。

「グオオォ…」

リザードマンキングは口から血を流しながら、まだ立っている。そして懐に手を伸ばす。


”キィーーーーーン”

激しい耳鳴りがユエを襲い、片膝をつかせる。

ーあれは、ダメだ、使わせては行けない!ー

直感がそう告げていた。しかし、声が出せない。


リザードマンキングが持っているのは、40センチほどの黒い水晶のようなもの。それをリザードマンキングは躊躇いなく胸に突き刺した。

「ギャオオオオオオオォ!!!!」

キングの絶叫がそこらじゅうに響いた。


「なんだ…?この嫌な予感は…」

ヤオが周りを見渡しながら言った。

「ユエ!ユエ!!!」

ヤンガは、頭を抑えてしゃがみこむユエをゆする。

「ヤ、ヤンガ…今のリザードマンキングは…”只者”じゃないわ…。」

ユエはゆっくり立ち上がりながら言った。ユエから影がじわじわと滲み出ていく。

「力が……制御できない…!」

ヤンガが、

「エア・ウォール」

試しにユエに結界を張ってみる。それを透過していく影…。

「だめだ!ユエ、集中して堪えるんだ!」

ヤンガは叫び、リザードマンキングの方を見た。そして戦慄した。

水煙をたたせ、切れたはずの尻尾が4つになって復活している。

「フシューーーー!!!」

と息を吐くリザードマンキング。


ヤオは陽の気をまわし、全身に纏わせる。

「俺が行く!」

一瞬で間合いを詰めたヤオの拳が一閃する。それを受け止めたのはリザードマンキングの手のひらだった。目を見開くヤオだったが、そこを軸にして左脚の蹴りを放つ。リザードマンキングはそれを紙一重で交わし、体を回転させ尻尾でヤオを吹き飛ばした。

「カハッ!!!」

岩壁を凹ませてヤオが打ち付けられる。

「ヤオ!?!オール・ヒール!!」

ヤンガが咄嗟に治癒魔法を飛ばす。しかし、完治しない。そこで動いたのはユエだった。

「シャドウ・スピアー!!!」

力の制御ができず、大量の影の針がそこらじゅうを襲う。しかし…

「嘘でしょ…?!」

リザードマンキングは刺された端から回復している。

「くそっ陰の気が陽の気を上回ってやがる。」

口の端から流れる血を拭いながら、ヤオがユエとヤンガの前に立つ。


対してリザードマンキングは水煙の中。

「ガアアアア゛ア゛ア゛ア゛!!!」

とキングの咆哮が辺りを制圧する。


3人が消耗戦を覚悟したその時、ユエだけが気づいた。

――来た。


「トス」

突如としてキングの動きが止まった。キングが体を見下ろすと胸の水晶の部分から、赤い刃が覗いている。

「サラサラサラサラ…」

水晶の形が崩れ始める。

「ア”ア”ア”ア”アアア!!!」

キングが絶叫する。背後の何者かを殺そうと体を捻る。何者かは、ただ静かに刀を振り抜いた。愛刀――肥前忠広。一切の抵抗なく、空間を切る音。

「斬ッ」

キングの首が中を舞った。

水煙の中、ヤオたちからは影だけが見える攻防、水煙の中から転がり出てきたリザードマンキングの首。誰も、動けなかった。何が起きたのか、理解できなかった。首から血が黒々と流れる。そして向こうから歩いてくる小柄な影。


「みんな、待たせてすまない。」

それは挨拶でもするような力の抜けた声だった。

「「「師匠…。」」」

弟子達は思わず唾を飲み込む。自分たちが死をも覚悟した相手に、たった2振り。

「ユエ、大丈夫だったか?」

という縁。

「う、うん。」

ユエは理解する。自分は危うく、陰の気に飲まれるところだったのだと。そして、陰の化身である自分より、同じ陰属性の縁はそれを抑え込めるだけの力があるのだと。



森の陰で、その光景を見ていた男がいた。

烈牙は、ただ震えていた。

――あれが、頂。あれはSランクではない。あれこそが、本当の頂きたる、SSS。

冒険者の勘がそう告げていた。ー



縁は、何事も無かったかのように、振る舞う。3人は知った。師匠と慕う縁という人物の底知れなさを。そして同時に理解した。自分たちは、まだ強者の入口にすら立っていないのだと。また、それだけの強さを持つに至った、彼女の素性に強く興味を引かれるのであった。



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