表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
双蛇ノ縁ーソウダノエニシー  作者: 環林檎


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

69/76

第69話ー作戦会議ー

母の誕生日だったので遅くなりました。

すいません。

縁は冒険者ギルドを出たあと、いつものガスプーの屋台に寄り、買い食いしながら衣類の店を聞き出した。そして、冒険者用の黒い弔意を示す黒い腕章を弟子3人は購入したのだった。


翌日の昼間、縁達一行は瑠華の商会の前にあった。もちろん弔意の腕章をつけてである。

「縁様…また来てくださったのですね。お弟子さんも。」

出迎えた暁東(シャオドン)が感激した様子で言った。

「当たり前だ。弟子たちの初仕事、最後まで礼儀を通すのか師匠の流儀だど教えねばな。」

と縁が微笑む。そして背後からユエが白菊の花束を、そっと差し出した。暁東は両手で受け取り、一行を奥に案内した。

濃ゆい線香の匂い、微かな腐臭。

「今日の午後、火葬します。」

と暁東は菊の花を花瓶にさしながら話した。縁達は順番に焼香をする。

「もう少し僕たちが早ければと、何度思ったことでしょうか…。」

と下を向いてヤンガが呟く。ヤオとユエも何か言いたそうにするが口にできない。そんな3人を見て暁東は言った。

「それは違いますよ、ヤンガさん。運命とは複雑に絡んだ糸のようなものだ、と思うようになりました。あなた方が私に気づかないことだって有り得たのです。私達は奇跡的にほどけた糸で、たまたま縁様たちと繋がったのです。幸運でした。あなた方には人殺しと言う試練を与えてしまいましたが…。」

縁は、

「暁東さん、そう言ってくれると私たちも救われる。明明(メイメイ)も、新たな命と共に前に進めるといいのだが。」

と朗らかに言った。

「明明は明らかに変わりましたよ。悲しみはあれど前を向いています。」

と言って暁東は笑みを浮かべた。

「ところで、縁様、耳の早いものの噂なのですが…大規模な討伐が行われるとか…、Sランク冒険者が筆頭に立つとも言われております。大丈夫なのですか?」

と一転、真剣な顔をして言った。弟子たちも顔が引き締まる。

「さすが、耳が早いな暁東。ここだけの話、瑠璃鎮の近くにリザードマンの大集落が出来つつある。午後は冒険者ギルドで会議だ。そして明日、ヤツらを殲滅する。もちろん、私も参加する。約束しよう、リザードマンは全滅だ。」

縁は余裕のある笑みをみせた。

「なるほど、商人同士でもリザードマンの話がちょくちょく出ていたので、まぁ予想はしていました。私のできることは、これをお渡しすることぐらいです。」

暁東は懐をまさぐると、美しい青色の試験管に入った液体を4本、縁に手渡した。

「それはハイポーション!そんな高価なものを…。」

とヤオ。暁東は拳に手を合わせ、

「瑠璃鎮の住民として、街道を行く商人として、リザードマンの殲滅は必須。みなさんどうぞ…ご武運を!!!」

と頭を下げた。

「暁東さん…恩に着る。必ずや瑠璃鎮に平穏を取り戻そう。」

縁も同じように礼を返すのだった。


午後、冒険者ギルドの大会議室は埋まっていた。集まっているのは、今回の緊急クエストに呼応して集まった意志あるもの達だ。もちろん最後列に縁達もいる。定刻になり、ギルドマスターと俊宇(ジュンユー)が入ってきた。

「まずは、危険なクエストに参加してくれて礼をいう。これは過去にない大規模な討伐戦だ。いや、数から言って殲滅戦と言ってもいい。諸君には改めて危険を認識し直した上で、この話を聞いてもらいたい。では俊宇、詳細を。」

と開口一番ギルドマスターである梓乐(ズーラ)は述べた。

俊宇は梓乐と入れ替わって前に出る。

「では、私、俊宇から、詳細を述べさせていただきます。標的はリザードマンの集落です。数はおおよそ150から200と開きがありますが、大規模な集落であることはご認識ください。また、数の多さと、集落の建物から、リザードマンの上位種がいることが考えられます。リザードマンジェネラル、リザードマンキングなどです。また、リザードマンメイジなども想定してください。」

と述べた。会議室にはどよめきが満ちる。上位種と聞いて隣同士で囁きあっているものもいる。俊宇は、

「なお、今回はAランクパーティーである『蒼き風』、『赤龍の炎』が参戦しています。また、運良くSランク冒険者である、滝野縁殿がBランク相当の弟子3人を引き連れて参戦してくれることになりました。そして、縁殿は空間術式が使えますので、兵站の心配もありませんし、皆さんの荷物もお預かりできます。そのため、移動はウォーフォースによる馬車での高速移動になります。場所は街道に流れ込む小川を、20キロほど遡った場所です。」

と続けた。Sランクと聞いて会場のざわめきがさらに大きくなる。

「静粛に!縁殿の弟子については、Bランク申請で現在冒険者登録検討中だが、Aランクパーティー黒龍のアギトのアギトに圧勝している。3人ともそこら辺の冒険者と一緒にしない方がいい。縁殿については、かつてAランク冒険者だった俺が見た中で、敵を含め、いちばん強い、圧倒的強者だ。瑠璃鎮の冒険者全員がまとめてかかっても勝てはしない。ということで安心しろ。このリザードマンの殲滅作戦は成功する。みんな、後顧の憂いなく戦って欲しい。」

と梓乐は声を張って言った。そのあまりの剣幕に、会場はシーンとなる。誰かが喉をゴクッと鳴らした。

梓乐は最後列の縁に目をやり、

「さて、実際、集落を確認した縁殿から一言願いたい。」

と言った。


縁は会議室に入る時に言われていたので立ち上がる。

「さて、私がそのSランク冒険者滝野縁だ。短い間だが、よろしく頼む。上空から俯瞰した集落は円形をしていた。まだ増築中と言ったところだ。垣根が存在しているところとしていないところがある。作戦は至ってシンプルだ。諸君には、7班に別れて貰う。まずは3班が南側から奇襲をかける。Aランクパーティー2組は奇襲をお願いしたい。その隙に残り4班が北側に回り込み挟み撃ちにする。私はこの街のパーティーには詳しくないので、班わけはギルドの責任者に一任する。ここまででなにか質問は?」

と縁は言った。会場が再びざわめく。だがそこには縁をただの小娘だと思うものは一人もいなかった。そこで1人手が上がる。

「蓮華の園のリーダー、魔法使いの羽墨ユームー)です。あなた方はどうするのですか?」

縁は、

「すまない、言い忘れていたな。私は空を飛べる使役獣が2体いるので、機動力を活かして遊撃にまわる。また、結界術、治癒魔法に秀でた使役獣もいる、ヒーラーなどが不足している場所にあてがうつもりだ。」

と付け加えた。羽墨は、

「わかりました。心強いです。ありがとうございます。」

と礼をした。

「上位種とかいるんだよなぁ?それ倒しちまってもいいんだよな?」

手を挙げず名乗らず、粗野な男の声がする。

「構わないが、かなわないと思ったらすぐに助けを呼ぶこと約束して欲しい。」

と縁は真剣に述べた。

「ちっ。Sランク冒険者様は心配性だなぁ?たかがリザードマンごときに。」

男は毒づく。

烈牙(リエヤー)場を弁えろ。その協調性のなさがBランク止まりの一因だ。」

と梓乐が厳しい声をかけた。

「ちっ。偉ぶりやがって老害が。」

烈牙と呼ばれた男はふてぶてしく言った。

「ふむ。向上心があることは素晴らしいことだ。ただし、それで失われる命があるかもしれないことを忘れるなよ。」

縁からじわぁっと圧が滲み出る。縁の言葉に、烈牙は反応することはなかった。ただ睨みつけたまま、額に汗を滲ませながら不穏な笑みを浮かべている。会場はシーンとし、鎧の擦れる音ひとつ聞こえなかった。


そこに再度俊宇が前に進み出て、

「それでは、私が班わけを担当させていただきます。私も元はAランク冒険者、また長年瑠璃鎮のギルド職員として皆さんを見ています。適材適所で組み分けします。クエストを辞退する方は今出て行ってくださって構いません。では始めます。」


縁達は班わけに加わることなく、最後列からパーティーリーダー達を見つめる。

ヤオは、

ーいよいよ明日か。狙いは上位種。寸勁がどれだけ通用するか楽しみだ。ー

と感じ、ユエは、

ーシャドウ・ガーデンとか、視界撹乱系の魔法は使えない。暗器と影をどれだけ使えるかね。ー

と思っていた。ヤンガは、

ー僕は攻撃も治癒も使える、もしかしたら今回1番出番が多いかもしれない。適材適所、ヤオとユエの背後は取らせない!ー

と意気込んでいる。共通しているのは、師匠である縁に対してある絶対的な安心感と、師匠の間合いに入らないという暗黙の了解だった。


そして縁の胸には、久しく感じていなかった戦場に向けての高揚が、そして同時に、そんな殺し合いの中でしか生きられない自分への哀れみが、ひしひしと迫っているのだった。


今日の会議は戦術として、静かな前哨戦の始まりであった。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
どんどん戦いのスケールが大きくなっていますね、 「殺し合いの中でしか生きられない自分への哀れみ」、縁の内面はあまり語られないけど、こうやって垣間見えるのも良いと思います。もっと知りたいような気もします…
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ