第68話ーリザードマンの集落ー
縁たちはギルドマスターに呼び出され、彼の執務室に向かっている。執務室に入るやいなや、
「縁殿、頼みがある!」
と梓乐が声をかけた。縁は頭を掻きながら、
「今度はなんだ?やっぱりリザードマンの件か?」
と面倒くさそうに言った。
「そうだ。リザードマンの報告案件がここ1ヶ月で急増している。縁殿達には集落の発見を頼みたい。それを達成してくれたら、弟子3人のランク申請を認めよう。」
と梓乐は言った。縁は、
「わかった。それは私達だけへの依頼か?他にも何組かいるのか?」
と聞く。
「縁殿が見つけられなかったら、複数のパーティーに頼もうと思っている。」
と梓乐は答えた。
「わかった。期限は?」
縁は聞く。
「縁殿だけに頼むのは3日だ。その他は他のパーティーも絡むことになる。」
と梓乐は答えた。縁は、
「じゃあ今から行ってきていいか?それで、3日半だ。」
とデバイスを見ながら聞く。
「構わないならお願いしたい。」
と梓乐。
「では行ってこよう。みんな、特に問題は無いな?」
縁は弟子たちに聞く。
「「「大丈夫です!」」」
と弟子3人は元気よく返事をした。梓乐は、
「ではお願いする。謝礼は後ほど計算して渡すので、悪しからず願いたい。」
と頭を下げた。
ギルドから出た縁達は門へ向かう。影から隠遁していた、白曜と黒曜が滑りでてくる。
「話は聞いていました。空からですね。」
と白曜が縁に問いかける。ヤオは、
「あぁ!その手がありましたか!忘れてました。」
と手をポンと打った。縁は、
「空を飛べるのは私たちのアドバンテージだ。リザードマンはそこそこ知能があって水辺が好きだ。だから集落を作る。つまり水辺になにかあるはずだ。」
と2匹を撫でながら言った。
縁たちは門番の兵に一言告げ、使役のペンダントを返す。そして、縁は
「白曜、黒曜、元の大きさに戻ってくれ。」
と告げる。2匹は狼サイズから5メートルほどの大きさになった。
「白曜に私とヤオ、黒曜にユエとヤンガでいく。水辺を気配探知で重点的に行くぞ。3日もかけてられるか!今日中に見つける。」
と縁は言った。冒険者や行商人達の驚きの目を一身に受けながら、縁達は空へと飛び立って行った。
風魔法を操る2頭の狗神に乗った4人は、気配探知でリザードマンを探す。4人の中で1番探知に優れる縁は、すぐにリザードマンの姿を捉えた。
…2時の方向距離5キロ、リザードマン、3体発見。…
と思考共有で3人に共有する。
…俺も発見した。…
…私も見つけた。…
…僕も見つけた。…
弟子3人も見つける。
続けて、
…11時の方向5キロ付近に8体確認!ゴブリンを襲ってるわ。…
とユエが報告する。縁は、
ー5キロ辺りを重点的に調べるか。恐らく水辺が近い…。ー
と考える。白曜と黒曜の前にあっては5キロなど一瞬。上空でそれぞれ気配探知でリザードマンを探す。縁は突出した気配探知で、3時の方向に多くの気配を感じる。
…みんな、恐らくだが見つけたぞ…
と思考共有で伝える。
…どこですか?…
とユエ。
…3時の方向だ。向かうぞ。…
縁達は風をきって進む。
上空から地面をよーく見ると、うぞうぞとうごめく黒い鱗が見られる。それにデブリハット(3本の支柱に枯葉などを積み重ねた簡易的な家)が、いくつも見える。奥には掘っ建て小屋のようなものも見える。
…これ、集落ですよね。…
とヤンガが縁に問いかける。
…そうだな。お粗末だがヤツらのおつむでは、これぐらいといったところか。数は150はいるな。…
と返事をする。
…外に出ているものも合わせると200匹はゆうにこえてますね、これ。…
とヤオが思考共有する。
…なんか、変な感じしない?私、この集落から変な気配を感じる。…
とユエが突然言い出した。
…なんだと?俺は何も感じないぞ…
とヤオ。ヤンガも当然と言ったように頷く。
…私も妙な気配を感じます。…
と黒曜。
縁は、
ー私もなにか妙なものを感じる。私とユエと黒曜だけが感じる変異。女は陰に属するもの…。これは要注意だな。ー
と思ったのだった。
……みんな、帰るぞ。目的は達した。ギルドマスターにさっさと伝えるぞ。……
と縁は白曜の首を叩いて瑠璃鎮の方へと誘導する。
…主殿。我らだけでも、十分制圧できるのでは?…
と白曜が思念を送ってくる。縁は、
…だめだよ、白曜。梓乐に頼まれたのは集落の確認だけだ。それに、瑠璃鎮の冒険者の取り分を取ってしまったら、要らぬ災いを産む。人質がいたのなら仕方が無いかもしれないが、そうじゃないからな。…
と白曜を撫でながら伝えた。
瑠璃鎮の門につくと、急いで手続きをすませる。そしてギルドへ急いだ。芷瑶は、
「つっ!!お早いお戻りで!すぐにマスターの部屋へ!」
と4人を案内する。
「コンコン、マスター、縁様です。」
芷瑶は執務室をノックした。
「なに?!もうか?すぐ通せ。」
と梓乐の焦った声がする。
「失礼する。」
縁は一声かけて部屋に入った。梓乐は
「それで、どうだった?集落の規模はどのくらいだ?!」
と唾を飛ばして聞いてくる。
「まぁ落ち着け。芷瑶さん、茶を持ってきてくれるか?喉が乾いた。」
と縁は芷瑶に声をかけた。
「え?、あ、はい!かしこまりました!」
と芷瑶は急いで退出した。
「リザードマンの集落は瑠璃鎮から西北西の方向直線でおよそ20キロ、街道からは逸れているが、数は150匹を超えている。下手したら200。既に水場に集落が形成されつつある。人質はなし。」
と縁は梓乐の目を見つめて言った。
「リザードマンが150匹を超えるだと?200に至るかもだと?!リザードマンの出現が増えたのはここ1ヶ月だぞ?どこからそんなに湧いて出たんだ?!」
と梓乐は頭を抱える。縁は、
「それに関することなんだが、私の弟子のユエは影魔法に秀でていてな、その集落に陰性のものを感じると言っている。私も感じるほどだ。恐らくそれが今回の、リザードマンの異常繁殖の原因だ。」
と言った。さすがにギルドマスターといえど、ヤオとユエが陰陽の化身であることを明かす訳には行かない。
「妙な気配?それは冒険者が行っても大丈夫なのか?」
と梓乐。
「問題は無いだろう。気にするものは行かなければいい。だが、この200匹、統率をとるジェネラルリザードマンやら、下手したらリザードマンメイジ、リザードマンキングもいるかもしれないぞ。」
と縁は指を組む。そこに芷瑶がお茶を持ってやってきた。
「芷瑶、今すぐ緊急クエストの準備をしろ。でき次第募集する。クエスト名は『リザードマンの集落の殲滅、敵の数180以上』だ。褒賞は白金貨5枚。ランクはDランク以上とするが、特例として、危険でも構わないというものは参加を許す。」
と芷瑶に命じた。芷瑶はびっくりしながら、
「は!はい!!ただいま制作します!」
と言われたことをブツブツと復唱しながら、執務室を出ていった。
「梓乐。私達もそのクエスト参加させてもらう。その貢献度で、弟子のランク申請を認めて欲しい。今日は呆気なかったからな。」
と梓乐に言う縁。梓乐は、
「Sランク冒険者が出張ってくれるとなれば、この大規模殲滅作戦に参加するものも増えるだろう。早速その肩書き、人集めに使わせてもらうが、いいか?」
と聞く。縁は、
「構わないさ。それで?作戦はいつだ?」
と尋ねた。梓乐は、
「明日の午後、パーティの代表者を集めて会議、明後日の午前に出発だ。」
と言った。縁は、
「わかった。参加者の荷物についてなんだが、私の空間術式になんでも入るからそれを伝えて欲しい。それなら全速と言わずとも、移動時間が短縮できる。」
と真剣な顔をして伝える。梓乐は、
「ありがとう。今回は事が事だから、ウォーフォースに引かせた馬車を何台か準備する。それで全速移動だ。水辺では夜襲がしにくい。真昼間からやり合ってやる。」
と闘志をむき出しにした。縁は、
「私もそれがいいと思う。水辺では火矢が使いにくいし足場も悪い。夜襲をかけるメリットが低いからな。ヤオ、ユエ、ヤンガ、そういうわけだから、明後日には殲滅作戦だ。それまで体を休めるぞ。」
と縁は横に座った3人に言った。
「了解です!」
「わかったわ。」
「わ、わかりました!」
と3人はそれぞれ返事をした。
ー暁東のところは明日の午前中に尋ねるか。ー
と縁は考える。
ーそれにしてもリザードマン200匹とは、うじゃうじゃ湧いたな…いっぴきたりとも残さず消し去ってやろう。ー
と縁は笑みを浮かべて思ったのだった。




