第65話ー図書街ー
遅くなってすみません。やっぱり書きだめしていないとダメですね…。
賭けで盛り上がっている中を通り抜け、縁たちは、
「昨日途中だった図書街に行くか。」
という縁の一言で図書街へむかった。
古い紙の匂いと、まだ新しいインクの匂いが混じりあった独特な香りがする。この世界にはまだ印刷技術が残っているが、部分的で、本というものは気軽に手にできるものではあまりなかった。
ヤンガは昨日と同じように看板を確認しながら進んでいく。
「あ、ありました!魔導書店です!」
ヤンガは鼻歌を歌いながら中に入っていく。縁たちも中にはいって、そこら辺にある魔導書をパラパラとめくる。
ヤオは、応用体術魔法上級という大きな本を難しい顔をして読んでいる。縁はネクロマンシー初心者版をパラパラと目を通している。ユエはどこから見つけてきたのか、影魔法大全発見し、じっくりと読みふけっている。肝心のヤンガは草木魔術大全と、魔獣解体新書を両手に持ってオロオロしている。縁は、
「どうしたヤンガ。そんなにオロオロして。」
とヤンガに問う。
「いや、この草木魔術大全は手書きなので、貴重なんですよね。お小遣いで足りるかどうか…それにこの魔獣解体新書は評判がいいって店主さんが言ってて、両方欲しいんですけど…。」
と上目遣いに縁を見る。
「ヤオとユエはどうなんだ?今欲しい本はあるか?」
縁は2人に声をかける。
「今持ってるのが欲しいですね。」
とヤオ。ユエは、
「この影魔法大全も手書きなんだけど、欲しいんだよなぁ〜」
と上目遣いで言う。縁は、
「私は欲しい本はないから、みんなの本買うわ。言ったろ?弟子に投資は惜しまん。」
と言う。ヤオは、
「俺は賞金があるからそこから出す。」
と自慢げに言った。そして縁とヤオはカウンターに向かっていった。立派な口ひげを蓄えた書店の店主は、
「一日にこんな高価な本が売れることは無いね。ありがたいよ。」
と笑顔で言った。
縁は、
「ご店主、ここら辺で杖を扱っている店はないかい?」
と聞く。店主は
「魔法使いの杖だね、この通りで1番店構えが大きい店にあるよ。その名も『賢きヒトの店』と言うんだ。店主は変わり者だが、品物は確かだよ。」
と答えた。縁は、
「そうか、ありがとう。」
と本をヤオに持たせ店をあとにする。
「ヤンガに杖を?」
とヤオが縁に聞く。
「あぁ。もの次第だが、いい杖があればヤンガに与える。」
と縁は答えた。ヤンガは
「どうかしましたか?」
2冊の本を渡してもらいながら言った。
「師匠がお前に杖を買いたいんだってさ。」
とヤオが言った。ユエは、
「良かったじゃない!魔力発動体があれば術も強力になるし、いざとなれば杖で相手をボコれるしね!」
と笑いながら言った。ヤンガは、
「ぶっちゃけ僕も杖は早く見つけないといけないと思ってたんだ!いいのがあるかなぁ?」
と微笑む。
図書街を奥に進んでいく。"見たらわかる"と言われた店構えを探して歩いていく。すると図書街の真ん中あたりに、大きな木作りの立派な建物が見えてきた。間口も他の店舗の倍ある。
「ここだな。」
縁は腰に手をやって看板を見上げる。そこには、
『賢きヒトの店』
と金色の文字が掘ってあった。
「カランカラン」
扉を押して縁を先頭に弟子3人がはいっていく。
「いらっしゃいませ。」
茶色のスーツの紳士が丁寧に頭を下げる。
「魔法使いの杖が欲しいんだが。」
と縁。
「お弟子さん用ですね。こちらでございます。」
紳士は丁寧に縁を奥に案内する。奥には150センチ前後の、様々な杖が並ぶ。それぞれ装飾や、ついている魔石が違い、壮観である。
「ヤンガ、よく見て決めろ。生涯の相棒になる。」
と縁は言った。
ヤンガは、
「うわぁぁ」
と感嘆の声を上げて、杖に近づいて言った。ヤンガはじーっと、1本1本を見つめる。するとひとつの杖の前でヤンガの目が止まった。その杖は木製で透明な魔石と、組紐が巻かれて揺れている。
「この杖…。」
ヤンガは触れたそうに紳士を見た。
「いいですよ、手に取ってじっくり見てください。」
紳士はにこやかに言った。ヤンガはそーっとその杖を握る。そして上下に降ったり、横に向けてみたりしてみる。
「すごく馴染みがいいな。魔力を込めてみてもいいですか?」
店員の紳士に聞く。
「どうぞどうぞ。好きにしてください。」
紳士は朗らかに言った。
ヤンガは自身が選んだ杖に、じわじわと魔力を込めていく。すると透明だった魔石は緑色に輝き、組紐がヒラヒラと空を舞う。もっと魔力を込めると、店内に軽やかな風が吹き始めた。ヤンガがもっと魔力を込めようとしたその時、
「そこまでにしておけ。」
と縁が言った。
「はっ!すみません。」
とヤンガが謝る。そして、
「店員さん、これ、なんでてきてるんです?」
と聞いた。紳士は、
「菩提樹の杖ですよ。私が子供の頃からある杖です。魔石は珍しい無属性の石です。」
と答えた。縁は、
「菩提樹はその木の下で仏陀が悟りを開いたとされる神秘の木。それ故に菩提樹の杖は魔力との相性が良く、極めて強力な力を持つ、魔法使い垂涎の逸品だ。ただ、とても気難しく持ち主を選ぶ性質がある。お前がその杖を扱えたこと自体驚きだ。明鏡止水の境地に至るものが扱う菩提樹の杖は、ニワトコの杖にも並ぶと言われる。」
と補足した。ヤンガは、
「初めて聞きました。そんなに気難しい杖だなんて…僕には軽やかで優しい雰囲気の杖なんですけど…。僕はこれが欲しいんですけど、一体いくらするんですか?」
と恐る恐る聞いた。店主は、
「大白金貨25枚ですね。過去にこの菩提樹の杖を欲した人は、魔力を込めた瞬間に店の外まで吹っ飛びましたよ。でもお弟子さんは、まるで迎え入れるように杖が感応していましたね。」
と答えた。ヤンガは、
「はーっ。そんな杖だったんてますか…。」
と呻く。ヤオとユエはあまりの大金に絶句する。そんなヤンガの肩を叩いたのは縁だった。
「大白金貨25枚ぐらい、私には軽いもんさ。何年生きてると思ってる。」
と笑って言った。紳士は、
「この杖も持ち主が決まってよかった。もう長い長い間持ち主が決まっていなかったので。」
と言って縁からお金を受け取った。ヤンガは相棒となった菩提樹の杖をまじまじと眺めている。
「明日は訓練場で魔法のテストしてみるか。ヤオとユエも修行だ。」
と縁は弟子3人に声をかける。3人は、
「「「はい!」」」
と、元気に声をあげた。
「ねぇねぇ!晩御飯にしょうよー!お腹も減ったし!」
とユエがボヤく。
「そうだな。腹が減った!」
とヤオもつづく。
「まったく、ヤンガが生涯の相棒に巡り会えたのに、もっとしみじみとしろよ!確かに腹減ったけど。」
と縁。
「僕もお腹が減りました!」
とヤンガ。
「しゃーない。少し早いが、行くか!晩飯!」
と縁は言った。縁と弟子3人はウキウキした様子で、店をあとにしたのだった。
残された紳士は、
「あの杖がとうとう持ち主を選びましたか。我が家の積年の願いがひとつ叶いました…。」
と深く頭を下げていたのだった。




