第63話ー決闘 前半ー
久しぶりの更新です。
こんな感じで3日ごとぐらいに更新したいと思います。
結局図書街ではヤンガの思いどうりにならなかった。なぜなら3人とも、
「お腹減った〜」
と言い始めたからである。
「晩飯にするか〜。」
と縁も同意し、瑠璃の小箱亭で晩御飯を食べることになった。
晩ご飯では、
「明日の決闘だが、大した決まりは無い。とにかく殺さないこと。致命傷を与えないことが絶対的なルールだ。あと、建物を壊すと修繕費を払わされる。地面は土魔法で何とかなる。」
と縁からレクチャーを受ける。当事者であるヤオは、
「つまり寸勁は使えないってことだな。なんか、相殺する力無さそうだしな〜。」
とレンゲをプラプラさせる。
「どうせ戦うなら噛みごたえのある相手がいいわよね。自分の成長に直結するような…。」
とユエ。
「それは贅沢ってものだ。なかなか自分が満足する相手とは巡り合わないさ。私たちぐらいともなるとな。」
と縁はお茶を啜りながら言った。
「3人はいいですよ!僕がもし決闘の指名されてたらどうするんですか?!魔法使いに前衛の拳闘士とか最悪ですからね。」
とヤンガが文句を垂れる。
「なんだよ。魔法で雁字搦めにしたらいいじゃないか。」
とヤオがたけのこを食べながら言う。
「まぁ僕も考えは同じだけど。開始と同時に無詠唱で茨で縛っちゃうかな。」
とヤンガ。
「うわ、見栄えしねー。」
とユエが渋い顔をしながら言う。
「ヤオ、明日はせめて周りを楽しませる決闘をしろよ!」
ユエがヤオに言った。
「うーん、あいつAランクであれぐらいしかできないんだろ?どうシュミレートしても5分以内に終えてしまうんだが…」
ヤオが面倒くさそうに言った。
「ま、もしかしたら相手は武器を持ってくるかもしれないし、楽しんでやれ。」
縁は笑顔でヤオの背中を叩いた。
翌朝、縁たちはギルドのピーク時間を過ぎた時間帯に訓練場を下見に来た。広さは結構ある。体育館ほどある。
「これなら思う存分動き回れるな。」
とユエ。
「後は黒龍のアギトっていうパーティーのことをギルドに聞きますか!」
とユエ。
「そうだな。それがいい。」
と縁は頷いた。
受付には相変わらず芷瑶がいる。
「おはよう、芷瑶さん。黒龍のアギトといつAランクパーティーについて少し聞きたいんだが。」
と縁。
「おはようございます。黒龍のアギトですか?近接戦闘のアギトさんを筆頭にアーチャーのハルさん、タンクのフユキさん、剣士のハルクさん、魔法使いのツヅキさんが所属するAランクパーティーです。」
とスラスラと返事をする芷瑶。
「全員Aランクなのか?」
とヤオ。
「そうなのですが…アギトさんだけ条件付きになってます。何かと素行が荒い人なので。」
芷瑶の言葉に、思わず4人で顔を見合わせる。
「「「「ぷぷぷー!!」」」」
と4人は思わず笑った。芷瑶は疑問の顔を浮かべる。
「いやな、ヤオがな、そのアギトに今日の1時からそこの訓練場で決闘を申し込まれてるんだよ。」
縁は笑いを堪えながら言った。
「な、なんですって?!」
芷瑶が血相を変える。
「条件付きとは言えそれは実力が低いからじゃありません。Aランクですよ?ヤオさんBランク申請ですよね?決闘はやめた方が…。」
と芷瑶は説得にかかる。縁は、
「昨日、もう1回ぶちのめしてるんだよね。この件、一応ギルドマスターに伝えておいてくれる?加点になるかもしれないし。」
と言うと、カウンターを後にした。
「さてと、決闘前に腹ごしらえと行くか!」
縁はグーグーなる腹を抑えた。縁たちは屋台で串焼きや肉饅頭を買って、片っ端から腹に詰め込んでいった。縁は気に入ったものを大量買いして空間術式に格納していく。それを見て屋台街の店主たちは黙っていなかった。
「姉ちゃんこっちこっち!」
「うちの串焼きもうまいよ!」
「うちはさっぱり系のスープだよ!」
とより姦しさが増すのであった。
「腹ごしらえも終わったし、訓練場で少し体を慣らすか?」
縁はヤオに声をかける。
「はい!ぜひお願いします!」
ヤオは嬉しそうに言った。
12時過ぎ、ギルドの訓練場で向かい合う縁とヤオ。
「私には寸勁使ってもいいからな。いくぞ。」
縁は腰を少し落として言った。
「はい!では!」
ヤオは返事とともに、滑るように走り出す。そして空気を切る蹴りを繰り出す。縁はそれを片腕で受け止める。そして左手で掴みヤオを倒そうとする。ヤオはそれを見越して体をそのまま回転させ、腕を振り切った。
瞬きを許さない攻防に、ユエとヤンガは釘付けになる。他で模擬戦をしていた冒険者も、次第に釘付けになっていく。
「はっ!!!」
「はぁっ!!!」
2人の闘気がぶつかって乾いた音が鳴る。
一瞬の隙をついて縁が懐に入る。そのまま殴るのではなく、服を掴んで巴投げをする。
「バコっ!!!」
あまりのスピードにヤオは受身を取り損ない、地面に凹みができる。
「げふっ!!!」
とヤオは唾を吐く。
それを見ながら縁は、
「おっと、やりすぎたか。ウォーミングアップは終わりだな。ヤンガ、アクア・ヒールをかけてやってくれ。」
とヤンガに声をかけた。
「は、はい!ヤオ大丈夫?!」
とヤンガが走ってくる。
「全然何が起こったか分からなかった。」
とヤオ。
「アクア・ヒール!」
とヤンガは全身にヒールをかける。
「僕も全然わからなかった。やっぱり師匠の底は知れないね。」
とヤンガは苦笑いした。
「ヤオ、ヤンガ、あんまり喋らない方がいいわ。私たち注目の的だから。」
とユエ。ヤオが見ると入口から訓練場の奥の方まで、多くの冒険者達がこっちを見ていた。縁も、
「ちょっとやりすぎたな。衆目を集めすぎた。」
と地面の凹みを土魔法で直しながら呟いた。
群衆の中から、
「おい、おめぇ。逃げずによく来たな。」
とどこかで聞いた声がする。黒龍のアギトのアギトだ。手には戦斧を持っている。
「おやおやアギトさん、パーティーの皆さんは?お連れでない?」
ユエはアギトに向かって言った。アギトは顎をしゃくったので背後を見ると、青い顔をしたパーティーメンバーが立っていた。
「あいつら、相手がSランク冒険者の弟子だからってビビってやんの。」
とアギト。
「あー、ご愁傷さま。お気の毒に。」
とヘラヘラしながら笑って言うユエ。
そこに、
「縁さーん!アギトさーん!この決闘、ギルドが審判を行います!」
と芷瑶が走り込んできた。後ろから、ギルドマスター梓乐が入ってくる。
「どういうことだ。ギルドマスター、説明してくれるか?」
縁は眉をひそめて言った。
「話は聞いた。この決闘の結果を加味してランク申請を考える。ユエの方は相手がいないから、ヤオの試合を参考にさせてもらう。」
と梓乐。縁は、
「ヤオ、ユエ、ヤンガ、こういう理由だそうだ。ヤオ手加減しなくて良さそうだな。」
と面倒くさそうに言った。ヤオは、
「寸勁は?」
と縁に聞く。縁は
「使っていい。ただし武器に対してだけな。」
と言った。
「おい、俺抜きで何話してるんだ!?」
とアギトが青筋を立ててがなり立てる。
「アギト、この決闘はギルドがもつ。勝ったら白金貨10枚だ。」
と梓乐は冷ややかに見つめて言った。
「お、それは気前が良いねぇ。」
早くも勝った気になっているアギト。ただ白金貨10枚はヤオの闘争心にも火をつけた。
「白金貨10枚?!それは俺も貰えるんだよな?」
と梓乐に聞く。
「もちろんだ。勝てば君の取り分でもある。」
と梓乐は言った。
「よっし!俄然やる気が出てきたぞ!」
とヤオ。
「では1時より、ヤオとアギトの決闘を行う。ルールは致命傷禁止。ギルドのものを壊した場合は弁償。アギト!その戦斧は刃を潰したものと交換だ。」
と梓乐。
「あ?冒険者は命懸けだぞ?そんなんで決闘になるかよ。」
とアギト。
「致命傷になったらどうするつもりだ!だから〜」
梓乐は頭にきたように言う。それを、
「かまいませんよ。その戦斧使ってください。」
とヤオが遮った。
「お前、こんな所で怪我をするのは蛮勇だ!」
と梓乐は怒鳴った。
「構わない。戦斧があろうとなかろうとヤオが勝つ。」
と縁が言った。辺りはシーンとする。
梓乐は、
「わかった。三者合意ならいいだろう。もう勝手にしろ。」
と梓乐は言った。
「審判はギルドマスターである俺と、俊宇で行う。もう1時だ。用意しろ。」
と改めて梓乐は言った。
ギルドの訓練場にこれ以上ない緊張感が漂う。ヤオ対アギト、これからプライドをかけた戦いが始まる。




