第60話ー瑠華鈴蘭ー
ーー時は暫し遡る。
ヤオ達3人組は昼前に城門を出て、クエストの説明にあった通りに進んでいく。
「今日は中衛がユエで、後衛がヤンガだな。俺は前衛に集中するから、気配探知はユエがしてくれ」
道すがらヤオが指示を出す。
「了解!水辺特有のモンスターとかいるからね。」
とユエは言った。
しばらく行くと沢に出た。
「この上流に湿地があるらしいね。そこの奥にあるのかな?」
ヤンガがクエストの用紙を見ながら言った。
「霊気が濃いって言ったから、探知で引っかかるか分からないわね。」
ユエが振り向いて言う。
「探知の精密さにかかってるな。」
ヤオがユエを見てニヤッと笑った。
3人は早いペースで歩を進める。初めての師匠のいないクエスト、若干気がせいているのかもしれない。霧が出てきた。
「はぐれないように!」
ヤオがリーダーとして指示を出す。
「「了解!」」
2人は返事を返す。石がごろごろとしている中、3人は的確な足取りで進む。すると、霧が立ち込める盆地のようなところに出た。
「「「おお〜。」」」
3人は揃って声をあげた。大樹が立ち並び、霧が立ち込め、よく分からない羽が光る虫がチラチラと飛んでいる。
「ユエ、精密探知はどうだ?できそうか?」
ヤオが聞く。
「何となくわかるわ。左の奥のように、なにか少し点々と圧を感じるわ。」
ユエが言った。
「じゃあ行ってみるか!」
ヤオが先陣を切る。足が濡れるのは仕方が無いが、足場に気をつけて3人は進んでいく。
しばらく進むと、
「あ、ありました!これが瑠華鈴蘭です!」
ヤンガが薄青く光る鈴蘭を採って見せる。
「「おお〜!綺麗!」」
ヤオとユエは目を輝かせて言った。
「お!あった!」
ヤオ。
「ここにもある〜!ちぎっても光は消えないのね〜」
とユエ。
「この青い光が絶えない内に薬として生成するんです。」
ヤンガが丁寧にむしりながら言った。
3人はせっせと無言で採っていく。
「クエストの説明書によると1箇所の群落から採りすぎないようにと注意書きがあります!気をつけて。」
とヤンガ。
「奥にもあるわよ!余裕で60は採れそうよ。」
ユエが奥を指さして言った。3人は奥のほうに進んでいった。
1時間足らずで、3人はクエストを完了した。
「後は早く換金しないと、青い輝きがなくなってしまうから、帰りは急ごう!」
とヤンガは言った。
「じゃあ帰りは走っていくぞ!昼飯食い損ねてるし、屋台で何か食べたい。」
とヤオは言った。
「同じく、お腹減った〜」
とユエ。
「じゃあ走るぞ!」
とヤオを先頭に走り出した。3人は滑るように足場の悪い水辺を走っていく。これも悠淵の里育ちの、面目躍如だった。
その時だった。
「ヤオ!ヤンガ!前方で戦闘してるわ!モンスターと人よ!」
とユエが叫んだ。
「わかった!助太刀する!急げ!」
とヤオ。
「わ、わかった!」
とヤンガ。
「接敵!」
ユエが叫んだ。
「きゃあ!」
「させるか!!!」
目の前で4人の冒険者と7体のリザードマンが戦っている。4人は押されている。
「助太刀する!下がれ!」
ヤオが叫びながら突っ込んだ。
「なに?!!!」
4人組はまだ展開についていけていない。まだ年若い、若いパーティーのようだ。
『バコッ!!!バキッ!』
「ギャァァァ!!」
その間にヤオは1体仕留めてしまった。
「影よ!」
ユエの声にユエの影が反応し、リザードマンの喉笛を噛みちぎった。
「アギャ?!」
リザードマンは気がつく前に絶命した。
「アイス・ニードル!!」
ヤンガが氷魔法でリザードマンの脳天を貫通させる。それも2体。
「大丈夫ですか?動けなかったら僕らの背後に!」
とヤンガ。
「え、ええ、ありがとう!!」
1人の女性がもう1人の男を肩に担いで下がっていく。その間にヤオとユエはリザードマンを圧倒している。
『バコッガスッボコッ』
『パシュッパシュッ!』
その間にヤンガは4人の保護にまわる。
「エア・ウォール!」
空気の壁を作って防護壁にする。
「君たち!なんてパーティー?!」
ヤンガは怪我をしている4人組に聞いた。
「私達は新芽の息吹というEランクパーティーです。」
女性は息を着きながら言った。
「あ、終わったみたい!」
話している間に、ヤオとユエはリザードマンを一蹴してしまった。
「え?!もう終わったんですか?」
女性は呆気にとられている。
「ヤオとユエにかかったら、リザードマンぐらいなら、こんなもんだよ。」
とヤンガは言った。
「みなさん、大丈夫ですか?」
ヤオが、まだ真新しいレザーアーマーをつけた若い男性に声をかける。
「大丈夫だ。だけど、浩然が芷晴を庇って足を怪我してしまった。俺たちは新芽の息吹、リーダーの铭轩と言う。」
铭轩は言った。
「俺はヤオ、この女はユエ、この茶髪の男はヤンガだ。俺たちにパーティー名はないが、一応冒険者だ。」
ヤオはざっくり自己紹介をする。
「俺たちは瑠華鈴蘭を取りに行った帰りに、リザードマンに遭遇したんだ。」
もう1人の男がついてないといった表情で言った。ヤンガは、
「じゃあ浩然さん、傷を見せて。」
と、浩然に言う。
「爪で足をざっくりとやられてな。」
浩然は痛そうに傷を見せた。
「じゃあ傷を洗うよ。」
ヤンガは水魔法を使って傷に入ったゴミを洗い流す。
「じゃ、治すね!」
とヤンガは気軽に言い、
「アクア・ヒーリング」
と唱えた。みるみるうちに切り傷が消えていく。
「よし、治った!」
ヤンガはカラッと笑った。
「え、こんな高等魔法使えるの?!何ランクよ!あなた達。怪しすぎる!」
芷晴は驚いて言った。その言葉に3人は固まってしまった。何しろ自分たちは『ランク検討中』という中途半端な身分だ。
「えーと、私達、その、ランクがまだ決まってなくて…」
ユエが宥めるように言う。
「ほら?カードにも(仮)って書かれてるでしょ?」
とカードを見せて畳み掛けるユエ。
「それ、本物なのか?」
疑いを持ち始めるリーダーの铭轩。
「本物よ!本物!ちゃんと今日ギルドで貰ってきたんだから!」
ユエが頭にきたようで言い返す。
「瑠華鈴蘭は瑠璃鎮にとって重要な収入源。クエストを受ける冒険者しか場所は知られないようになってる。君たち、密猟者じゃないだろうな?」
铭轩は厳しい顔をして言った。
「密猟者が身バレの恐れがあるのになぜ人助けをするんだ?ほっとけば君たち全滅してただろうに。」
とヤオ。
「ぐっそれはそうかもしれないが…。怪しい冒険者を放っておく訳には…。」
铭轩は、命の恩人を早くも不審者扱いしている。ユエは既に青筋が立っているが、ヤンガが、
「そこまで言うなら、一緒に街まで行けばいい。門のところの護衛部隊でも、ギルドの受付でもどこでも確認すればいいよ。」
と間に入っていった。
「ま、そうするか。そんなに離れてないし。」
とヤオ。
「そうね、疑われたままというのは気持ちが悪いわ。一緒に行きましょ。」
とユエも言った。
ーーー城門にて
「「「「ほんっとにすみませんでした!!!!!」」」」
新芽の息吹は全員で頭を下げることになる。何しろ城門の兵士に「密猟者かもしれない」と言ったところ兵士は真っ青。ヤオ、ユエ、ヤンガ、はSランク(本当はSSSランク)冒険者の弟子で、BとCでランク申請中と知らされたからだ。密猟の件は、4人の完全なる勘違いである。ヤオは4人に、
「昼飯奢ってくれたら許すから、頭を上げてくれ。」
と言った。
「高ランク冒険者のお弟子さんだったなんて…本当にごめんなさい。昔っから私せっかちなの…。」
と手を合わせる芷晴。
「まぁ、間違いは誰にでもあるよ。気にしないで。」
とヤンガ。
「とにかく、早く瑠華のをギルドに持っていきましょ。昼ごはんはその後よ。」
とうっすら不機嫌なユエ。
「ほら、早く。新芽の息吹も、ギルド行くぞ!」
ヤオが全体を仕切る。
夕方前のまださほど混んでないギルドで、ヤオ達と、新芽の息吹のメンバーは瑠華鈴蘭を換金する。60本で金貨2枚と銀貨20枚。
そしてその日、新芽の息吹がギルドで手に入れた資金は、大食い3人の昼食代へと消えでいったのだった。




