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双蛇ノ縁ーソウダノエニシー  作者: 環林檎


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51/62

第51話ー暖かい夕食ー

ゴトゴト、ゴトゴトー

2つの馬車は進んでいく。縁たち一行は隙をみせないように気を配って付き添っていく。

馬車の中から、

「ヤオ様、そろそろ野営の準備をしましょう。もう少し進めば野営できる広場があります。」

と、暁東(シャオドン)の声がする。

「分かりました。師匠に伝えます。」

ヤオは返事をする。

向かいからも、

「暁東さん、了解しました。」

とヤンガの声が聞こえる。

…師匠、ユエ、少し進んだ広場で野営だそうです。…

ヤオは思考共有(リンク)により伝達する。

…了解した!…

…わかったわ!…

2人の声が同時に聞こえる。


馬車が平らにならされた広場に入って止まる。馬車は広場の中央にとめられる。それは護衛がしやすいようにである。暁東たちは子供を含めた5人の人々が焚き火などの準備をする。泣き叫んでいた女性は、姿を見せない。それを縁達一行が手伝う。

…1人いない。…

ヤンガが馬車の一行を見て呟く。

…ヤンガ、もれてるもれてる。思念が波になって私たちにも伝わっちゃてるわよ…

ユエが返事をする。

…え、あ、ごめん。…

とヤンガは頭を搔く。

…蜘蛛の巣をイメージしてやるといいぞ。…

ヤオは笑顔でレクチャーする。

…試してみるよ!…

ヤンガは努めて明るく言った。

縁は念の為大規模探知を行う。半径60キロ。

ーー気になる反応、アリ。結局か…。約20キロ地点。近いし街道沿いだが、この集団はほぼ動いていない…。今のところ問題ないか…。待ち伏せだろうな…。ー


縁は暁東に、

「今晩の夕食は私が出していいか?暖かい食べ物があった方がいい。」

と声をかける。

「そんなことをしてもらう訳には行きません!世話になりすぎます!」

暁東は恐縮しきりである。縁は小さい声で、

「…すまない、弟子の1人が人を殺したことに参っているんだ。こちらの都合なんだ、頼むよ。」

と言った。

「あ…。なるほど。私のところも、御者の妻が泣き伏しています。お願いしてもいいですか?」

暁東も納得して言った。

「ありがとう。せめて美味いものを提供するから、安心してくれ。」

縁は礼を言った。


夕闇の中の焚き火がパチパチと音がたてる。小さめの焚き火2つに、大きな寸胴鍋がかけられている。ポトフである。傍らで保温魔術がかかったバスケットが置かれている。ロールパンである。縁は全員に行き渡るようにポトフをついでいく。ヤンガにはウインナーを入れずに渡す。馬車から出てこない御者の妻には、肉を入れない。それが縁にできる精一杯の配慮だった。

「美味しい…。」

ヤンガがポツリともらす。縁は、

「それは良かった。まだあるから好きにつげよ。」

ホッとした様子で言った。新兵が人を殺したあと、食事の時に思い出して嘔吐するのを、縁は戦場で何度も見てきたからだ。

ーヤンガは本人が思ったより、強い心の持ち主なのかもしれないな…。ー

縁はヤンガの評価を1段階あげた。

「うん!美味しい!こんなの食べたことないよ!」

男の子の声がする。

「随分上等な腸詰めだな〜パリッとしてジュワ〜と肉の旨みが弾ける!」

別の男の声が聞こえてくる。

「この厚切りベーコンが美味すぎる!わたしゃこれのブロックが欲しいよ。」

恵蘭(フイラン)のハキハキした声が聞こえてきた。商隊の方も少し気持ちが回復してきたようである。


縁は自分たちの焚き火に戻ってくると、

「何とか、後ろ向きな気持ちは薄まったな。」

と弟子3人に向かって言った。

「ええ。すこしでも回復してよかったわ。次があった時に、ちゃんとしてもらわないといけないから。」

ユエが返事をする。

「…次…ですか。」

ヤンガが俯く。

「あぁ、あるぞ。」

キッパリとヤオが断じる。

「ほぉ。みんなわかってたのか。良くできた弟子だ。今回の砕骨流砂は、恐らく広州まで行く為に護送中に、逃げ出してきたものだ。全員手首と足首にうっすらと金属の擦れたあとがあったからな…。砕骨流砂が7人、護送は結構金がかかる。まとめていたはずだ。まだ恐らく5〜6人の盗賊が送られていたはずだ。」

縁は嫌なことは一気に言ってしまおうと、一息に言った。

「約20キロ地点に5人の集団がいるわね。夕方から動きはないけど。」

ユエはスープをすすって言う。

「正解だ、ユエ。恐らく砕骨流砂と共に逃げたはいいが、奴らより腕利きではないから、待ち伏せしてるんだろ。もしくは奴隷が逃げ出してきたという体をして、あわよくば商隊に拾ってもらう算段だ。」

縁はロールパンを千切りながら言った。

「夜襲は?」

ヤンガが緊張して言う。

「夕方から動いていないから、恐らく夜襲はないと見ている。まぁモンスターは出るかもしれないがな。白曜と黒曜がいるから、多分大丈夫だと思う。」

縁はヤンガの肩に手を置いて言った。

「夜の見張りだが、この人数を守るには、4人では少ない。白曜と黒曜、アオイ、ウスハを入れて8人と計算。ヤオ、ユエ、アオイ、白曜で1組。私、ヤンガ、ウスハ、黒曜で2組。この2組で、4時間交代で警護にあたる。いいか?」

「「「了解です。」」」

弟子3人は冷静に返事をする。


「暁東さん、私たちは私の使役獣も合わせて8名で警護します。4人で4時間交代。大丈夫ですか?」

暁東に話しかける。

「あぁ、縁様。ありがとうございます。それではお任せしてもいいですか?。私たちは男3人で交代しながら、独りでやっていたのですか…。やはりあの襲撃があったあとでは、心配で…。」

暁東もちょうど縁の元へ行こうとしていた所のようだった。

「よかった。では、私たちは持ち場に着きます。今日は修羅場だった。皆さん早くお休み下さいね。」

縁は暁東の肩を叩いて言った。

「ありがとうございます。そうさせていただきます。」

暁東は縁に頭を下げた。


リーンリーンリーン、秋の虫が茂みから音を奏でる。

この一行にとって長い夜が始まる。




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