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双蛇ノ縁ーソウダノエニシー  作者: 環林檎


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第47話ー使役獣契約ー

ーおぎゃぁっ!おぎゃぁ!ー

ー縁様、産まれました!ー

ーあぁ、なかなか難産だったな。おーよしよしいい子だ。ー

ー縁様っ!西の砦に敵兵が!ー

ー今すぐ行くっ。〇〇〇!安心しろ。大丈夫だからな、絶対大丈夫だから!ー

薄闇の中、ズキズキとした頭痛に襲われ、縁はがばりと目覚める。

ーあれは誰の子だったか…そうだ、ソーンの子だ。あの後、西側が陽動で、北側から本隊が攻めてきて…クソッ!!ー

縁は頭を抑える。息が乱れる。はるか昔の記憶が溢れ出て、感情が暴れだしそうになる。しかし、

ー…もう、過ぎたことだ。はるか彼方の…。ー

深く深呼吸し、心を落ち着かせる。外から、

「キャピィ!キャピィ!」

と元気な蒼穹(ツァイチォン)の声がする。

ーあぁ、そうだ。今はここに居るんだ。そんな戦乱の世じゃない…。ー

縁は水筒の水を一気飲みする。

「はぁ。」

ため息を着いて布団に倒れ込む。隣の布団で、

「うーーーーん。んにゃんにゃ。」

とユエが寝返りを打つ。縁はめくれた布団をかけてやりながら、

ーもう一寝入りするか。ー

縁はモゾモゾと布団に入り込んでいった。

一連の縁の姿を、見ているものがいるとも知らずに。

…見たかヤンガ。…

…え、ヤオの声が聞こえる、コレが思考共有(リンク)?…

…そうだ。俺に糸を伸ばすつもりで話せ。バレるからな。師匠の顔色の悪さ、尋常でなかった。まさか、また夢渡りか?!…

…ヤオ、それは考えにくい。夢渡りは神がかった力が必要だ。あれはなんというか、トラウマ?を思い出した時の顔さ。僕には覚えがある。…

男二人は思案する。

…師匠が何も言わないってことは、まだ僕たちが知るべきことじゃないってことだ。そーっとしておこう。ユエにだけ伝えておいて、僕らの秘密にしておこう。…

ヤンガが提案する。

…俺も賛成だ。後でユエにだけ伝えておく。…

ヤオにも、それがいいと思われた。この思考共有は、奇跡的に縁には伝わっておらず、本当に弟子3人だけの秘密となった。


本格的に日が昇る。ウロの中もかなり明るくなってきた。

「うーーん!よく寝た!」

ユエが伸びをして布団から起きる。

「んんん。あ、本格的に明るくなってるな。」

つられて縁も目を覚ました。

「「おはようございます、師匠」」

男二人組は既に起きて髪をブラッシングしている。

「アオバさんが夜泣きを気にされてましたけど、全然気になりませんでしたね!」

ヤンガが努めて明るく言う。

「そうだな。まぁ私たちが疲れ切っていたというのもあるが。」

ヤオが言葉を繋げる。

「ピギャーピギャー」

ヤンガ達の言葉が引き金になったかのように、蒼穹の鳴き声が聞こえてくる。

「エニシサマ!」

テントのそばに大きな影が写り、コンザの声がする。

縁は手早く支度をすると、テントから顔を出し、

「おはよう、コンザ。どうした?」

と返事をした。

「オレ、ゴハントッテクル。ナニカイルカ?」

コンザは縁に気を遣っているのだ。

「あーあー!いいよ!ちゃんと自前のがあるから!早くおチビちゃんのご飯取ってきな。お前達も腹減ってるだろ?」

縁はゴンザを急かした。

「ジャイッテクル!」

コンザは朝日に向かって飛翔して行った。

縁はクロワッサンのサンドイッチが入ったバスケットと、コーンポタージュの入った鍋をを弟子たちに渡すと、アオバの方へ向かう。

「アオバ!蒼穹!おはよう。あの後体は大丈夫だったか?」

縁は2匹の体の気の流れを見ながら声をかける。

「おはようございます、縁様。私たちは大丈夫です。それより、眠れましたか?蒼穹も思いのほか寝る子で、そんなにうるさくはなりませんでしたが…。」

アオバは夜泣きを気にしているようだ。

「みんな疲れて熟睡さ!アオバもおチビちゃんも、身体に異常はなし。良き良き。」

縁は心の底から良かったという表情である。

「それに、まだ生まれて1日目。夜泣きはコンディションで全然違うから、覚悟しとけよ〜。狩りよりも難しいぞ。」

と縁は続ける。

「仲間内からも、夜泣きはきついと聞きますから、覚悟して世話します。その…もう出発されますか?」

アオバは心細げに続ける。

「あぁ。朝ごはんを食べたら出発する。ーーアオバ、子育ては心配の連続だろうさ。でも、豪運の持ち主の旦那と、賢いお前の頭があれば大丈夫。今回の出産に人間の手が加わったことがイレギュラーだったんだ。これも運命(さだめ)さ。」

縁はアオバの首を撫ぜる。

「その、せめてご恩返しがしたいのです。何かできることはありませんか?」

アオバは懇願する。

「師匠ー!サンドイッチ無くなっちゃいますよー!」

そこに場違いなヤオの声が響く。振り向くとテントから3人の弟子が顔を出していた。

「おお!じゃあ、お前の旦那のコンザと、ヤンガに使役獣契約を結びたい。もちろん、まだヤンガは冒険者登録もしてないひよっこ。お前たちも子育ての真っ最中。口寄せ形式による相互同意の使役契約でどうだ?」

「コンザと僕の使役契約ですか?!!」

ヤンガは寝耳に水である。

「これも運命ってやつだ。構わないか?」

「はい!ゴンザも異論は無いでしょう。」

アオバは嬉しそうに行った。

「キャピキャピィ!」

つられて蒼穹も嬉しそうだ。ちょうどそこにコンザが帰ってくる。

「グルルルルルルルルル!」

ギガント・タスク(大きな牙を持つイノシシ)を、どさりとおく。

「アサゴハン!ヤンガ、エニシサマ、ドウシタ?」

コンザが首をひねる。

「コンザ、縁様が、ヤンガ殿とあなたの使役獣契約を結びたいと仰せよ。もちろん両方に不利益はないわ。私は了承したけど、あなたは大丈夫ね?」

アオバがコンザに端的に説明する。

「オレクワシイコト、ワカラナイ。ケド、アオバイイ、イウナラモンダイナイ。」

完璧に"かかあ天下"の発言である。

「あっはははっはっはっ!ほんとにいい嫁さんだ!ヤンガ、コンザここにこい!」

縁は大笑いしながら、空間術式から巻物を出す。

「この巻物の真ん中に、それぞれ血を垂らすんだ。これは相互同意に基づく口寄せ。ヤンガが口寄せして使役したくても、コンザが子育て真っ最中で手が離せないといった時には呼び出しが不成立となる。わかったね?」

縁がもう一度確認する。

「はい!」

「ワカッタ。ナルベクイケルヨウニスル!」

ヤンガとコンザはそれぞれ手に傷をつけ、巻物に垂らす。すると巻物が光り、契約が終了した。

「晴れてふたりは、コンビだ。ヤンガの魔力操作が上手くなれば、口寄せしなくても巻物で意思疎通もできるから、ヤンガは精進するように。」

縁は巻物をヤンガに渡して言った。

「ありがとうございます!よろしく、コンザ!」

「アリガトウ!ヨロシク、ヤンガ!」

ヤンガとゴンザは縁に礼を言った。

「さぁて、あまり長居すると、別れが辛い。ここらで私たちは旅に戻るよ。」

縁は3匹を見つめて言う。

「アオバ、子育て頑張ってね。適度に息抜きしないとダメよ?」

とユエ。

「立派になった蒼穹はさぞかし美しい翼を持つだろう。楽しみにしてる。」

とヤオ。

「早く意思疎通できるように、頑張るからね。皆さんも元気で暮らしてくださいね。」

とヤンガ。

縁は白曜と黒曜を呼び出し、全員が背に乗った。

「アオバ、コンザ、蒼穹、また会おう!さらばだ!」

「どうか元気で!」

「ホントニアリガトウ!」

「ピィピィ!!」

青いワイバーンの家族は、言葉にならない思いを載せて、一言言う。


2頭の使役獣は、朝日ののぼりきった大樹の森へと、駆け出していった。



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