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双蛇ノ縁ーソウダノエニシー  作者: 環林檎


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第46話ー地走りー

縁達はそのままアオバが落ち着くまで手当を続けた。アオバも我が子の相手をしている。


しばらくしてーー

「さて、私はちょっと仕事をしてくる。」

縁はアオバの傍を離れる。

ーさて、これからは人の領域だ。ー

ウロの入口に縁は経つ。その景色は壮観だ。雨がやみ、夕焼けを背に巨木が立ち並び、そのウロにワイバーンが入っていく。だが今ワイバーン達は随分と殺気立っている。その原因は縁の足元にあった。

「おお!人間だ!人間がいる!おおーーい。助けてくれぇーー!!」

山野に溶け込むような服装をした5人の屈強な男が、ウロの入口に吊るされている。

「あぁ。人間だが、ここは私の縄張りだ。知らなかったか?」

縁は威圧的に言う。

「はぁ?ここは俺たちが定期的に卵をとってるんだ!お前誰だ!」

もう1人の男が唾を散らして叫ぶ。

「知らん。死にたいのか?死神はそこら辺にウヨウヨしてるぞ。」

縁は周りを見渡す。

「ギャーーースギャース!」

「グルルルルルル!!」

無数のワイバーンの声。

「「ひいいいぃぃい!」」

男たちの悲鳴が聞こえる。

「お前ら地走りだな。ここを狩場にしているのは許してやるが、この青いワイバーンの事を話せば殺す。話さなければ見逃してやるって言うのはどうだ?」

「なんだと?!この青いワイバーンに、どんな価値があるのかわかってんのか?」

「じゃあお前は死んでいいんだな?」

そう言った男のフードを黒曜が踏みつける。

「ひゃひぃ!!!」

その男の股間にシミができる。

「おい。お前らリーダーいないのか?もう全員死んでいいんだな??」

縁は大声を発する。それに呼応してワイバーン達が「ギャーギャー」と鳴き始める。

「お、俺がリーダーだ。じょ、条件を飲むから命だけは助けてくれ!頼む!この通りだ。」

いちばん小柄な男が震えた声を出す。

「おお。まともなのがいたな。ではお前たちに制約の魔法をかける。青いワイバーンに関すること一切を話すことを禁じる。いいな。」

縁はドスの効いた声をだす。

「わかった!わかったから!早くここから逃がしてくれ!」

パーティーリーダーが命乞いをする。縁は、

「"いでよ見えぬ茨よ。心を縛れ、身体を縛れ。制約すべき事柄が破られしその時には、宿るものの魂を寝床として大輪の薔薇を咲きほこらせよ、戒めの薔薇!"」

と唱える。男たちの体に"何かが"絡みつき、ぎゅっと縛りあげ、そのまま消えていった。

「コンザ、きてくれ!」

縁はウロの奥に声をかける。

「エニシドノ、オレ、カリニデル。ドウシタ?」

ちょうどコンザは表に出ててくるところだった。

「コンザ、こいつらの顔をよく覚えておけ。青いワイバーンに手を出したら死ぬ呪いをかけた。」

「ワカッタ。アリガトウ。ヨクオボエテオク。」

ゴンザはウロから飛び立つと、吊るされている5人の顔をじっくり見る。

「ツギアッタラコロス!!!グルルルル!」

と大声で威嚇し、飛び去って言った。

「白曜、黒曜、こいつらを離してやれ。お前ら、ここは逃がしてやるが、殺気立ったワイバーンの巣の森を生きて帰るのは自分でやれよ。じゃ、頼んだ。」

縁は踵を返し、ウロの中に入っていった。


「縁殿、大丈夫でしたか?」

アオバが声をかける。

「師匠、ヤンガに話は聞きました。どう処理しましたか??その…。」

ヤオが声をかける。

「みんな大丈夫だ。制約の魔法で縛ってあるから、青いワイバーンの話が外に漏れることはない。アオバとコンザが他の冒険者に遭遇しなければ、だが。ただ、殺気立ったワイバーンの巣の中を生きて帰れるかは奴ら次第だ。」

縁は笑みを浮かべて言った。

「一件落着!良かった良かった!」

ユエが嬉しそうに言った。


「ーーまだ1つ。残っていることがあります。」

アオバが静かに言う。

「え、なにかあるのか?!見た感じ体には問題に無さそうだが…。」

縁は慌てて言う。

「縁様、違います。まだこの子の名前が決まっておりません。」

アオバは自分の体にピタッとくっついて寝ている我が子を、愛おしそうに見つめる。そこにバサッバサッと音がして、コンザが戻ってきた。口に大きなチャイナトラウトを咥えている。そして妻の元へそーっと近づいていくと、傍らに魚を置いた。

「エニシドノ、コノコノナマエ。キメテホシイ。」

コンザも妻の意向を理解しているようだ。

「うーむ困った。名前かぁ…。」

縁は困ってしまった。名付けなど腐るほどしたことがあるが、なんだか今回は自分が決めるというのには違和感がある。なぜなら、『助けてやりましょう!』と言ったのはヤンガだったからである。

縁は随分と悩んだ挙句、

「今回、お前たちを助けようと言ったのはヤンガだ。ヤンガに名前を決めてもらおうと思う。」

と結論を出した。いわゆる丸投げである。

「ぼ、僕ですか??!」

縁は、

「アオバ、コンザ、構わないか?」

と2匹に確認した。

「そうだったのですね。ヤンガ殿、ありがとうございました。ぜひともお願いします。」

「シロイフェンリル、トメテクレタ。ヤンガアリガトウ。ナマエ、タノミタイ。」

夫婦の答えは同じだった。

「分かりました。ちょっと待ってくださいね…。」

ヤンガが、必死で考え始める。しばらくして、

「中国語で蒼穹を意味する"ツァンチォン"でどうでしょうか?空より青いこの子にピッタリだと思うのですが…。」

ヤンガは、オドオドと言う。

「蒼穹、"ツァンチォン"、気に入りました。とても特別な響きに感じます。可愛い子よ、今日からあなたは蒼穹(ツァンチォン)ですよ。」

アオバは優しく我が子に話しかける。

「ツァイチォン!オレノコ!スバラシイナマエ!ヤンガ、カンシャスル。アリガトウ。」

コンザは興奮して言った。その声に小竜が目を覚ます。

「ピィピィ!クルルルル!」

なんだか鼻をクンクンさせている。

「ほらほら、名前がカッコイイのに決まったけど、おチビちゃんお腹減ってるみたいよ?」

ユエが優しい笑顔で促す。

「蒼穹、初めてのご飯は、お魚だよ〜」

アオバが優しい声で、チャイナトラウトをくちばしで啄んで与える。4人は微笑ましい気持ちで3匹を見つめた。


怒涛の数時間は濃厚で時を忘れさせていた。外は既に日が暮れ、夜の闇に覆われていた。


「すまない。2匹とも、他のワイバーンを刺激してはいけないから、今夜はこのウロに泊めてもらっていいか?」

縁は親子の時間を邪魔して悪いといった様子で話しかける。

「恩人に出ていけなど言いません。竜の巣でよろしければお泊まり下さい。ただ、この子の夜泣きがうるさいと思いますが…。」

アオバが逆に申し訳なさそうに言う。

「構わないさ!赤子は泣いて寝て育つものさ。ありがとうな。泊り賃として、明日オークを渡すから好きなだけ食べてくれ。」

縁は晴れ晴れとした笑顔で言った。2匹のワイバーンは、静かに頭を下げたのだった。



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