第43話ーヤンガの練習(メシウマ回)ー
「ーー水飲み場があるのに、本当にモンスターが来ませんねぇ。」
昼食後の休憩中、ヤンガがふと呟く。
「ヤンガ、川べりで休憩したのはお前の訓練のためでもあるんだぞ。多分だけど。」
ヤオがお茶を飲みながら声をかける。
「え、僕ですか?」
ヤンガに戸惑いが滲む。
「そうだな、ヤンガにも気配探知を会得してほしいんだ。その鍵になるのが、水だ。」
縁は手のひらに水球を作りながら言った。
「川に魔力を纏わせた小石を投げ込んで、そこから魔力の伝わりを読むのよ。そこから派生して空間の魔力の伝わりを会得するの。」
ユエが言葉をつぐ。ヤンガは合点がいった顔をして、
「なるほど。それは理にかなった習得方法ですね。」
と言った。縁は、
「ではヤオ、ユエ、ヤンガに教えてやれ。人に教えることができて初めて、人は完璧に習得したと言えるからな。」
と、ヤオとユエの肩を叩く。
「りょーかい、私は厳しいわよヤンガ!」
ユエが胸を張る。
「上手く言葉にできないこともあるが、なんとかやってみよう!」
ヤオは自信なさげである。ヤンガは、
「お、お手柔らかに…」
と、おどおどしている。縁は、
「あと1時間で出発するからね〜。」
と言って日陰で白曜の上に寝っ転がって昼寝をし始めた。
ーーー1時間後、縁の目覚めるころ、
「魚がいる!わかる!魚がいるよ!」
「正解よ!そこにはチャイナトラウトがいるわ。」
「もう少し魔力を載せてみたらどうだ?多分行けるぞ。」
若者たちの熱意の声が聞こえてくる。
「ふふふ。いい感じだ。」
縁は呟く。
「どんな感じだ?ヤンガ。」
縁が3人に歩み寄っていく。
「すごいですよ!まだ、石ころを使ってますけど、魔力が水に移って波紋を描くのが分かります!スゴい!これは興味深い!!」
ヤンガは頬を赤く染めて興奮している。
ーヤンガの才能もなかなかだな…。それに興味深いという”探究心”。これは魔法学校で化けるぞ。ー
縁はなかなかの出来に笑みを浮かべる。
「よし、そこまで出来たら上々だ。出発するぞ。」
「「「はーい!」」」
3人は元気な声で返事をする。
白曜と黒曜のお陰で、モンスターに煩わされることなく進む。
ー夕方ー
「よし、この川のほとりで野営だ。私は晩御飯を作るから3人は訓練して待っててくれ。」
縁は言った。
「さぁ!僕も石ころ無しでわかるようになるぞ!!」
ヤンガはやる気でいっぱいである。ヤオは、
「やる気があって大変よろしい。」
と、既に先生モードである。
「ヤンガ、お前が魔力だけで探知できた場合だけ、魚をとってもいいぞ。」
縁は半ば冗談で言った。
「僕!やります!」
と、ヤンガ。
「はいはい、そんなにうまいこといくか!」
と突っ込むユエ。
縁はそんな3人を尻目に、焚き火をおこす。
それも複数。焚き火がおきたら、加工された魔石を投入し、火力を一定にする。この魔石は悠淵の里で補充したものだ。寸胴を3つ。1つはお湯。1つは出汁。1つはカレーである。
出汁はふつふつとしてきたら薄口醤油や、みりん、酒、塩で味を調節する。カレーは焦げ付かないようにおたまでかき混ぜる。というか、おたまが勝手に動いている。
縁はもろぶたに入っている、生のうどんを出してきた。縁はうどんを4玉茹でる。その間に空間術式から小口切りにしたネギと、ワカメ、天かすをだす。
「おーい3人とも〜もうすぐできるんだが、どうなってる??」
「…ちょ、ちょっと、ちょっと待って!師匠静かにして!!!」
ユエが縁を制す。
ーお、これは、まさかまさかの???ー
縁は期待に満ちた目でユエを見返す。ユエはゆっくり頷く。
パチパチ…焚き火の音と川のせせらぎだけが聞こえるなか、
「ヤオ!ユエ!採れた!採れたよ!!」
ヤンガの喜びの声が聞こえる。
ーまさかヤンガも一日で魚を取れるまでになるとは…。私の弟子は才能に溢れてるなー
縁は正直驚いていた。
「「ヤッター!!!」」
ヤオとユエはハイタッチしている。
「晩ごはんがひとつ増えたな。」
縁は満足気に言う。
「師匠、ちゃんと人数分ありますからね!」
「本当か?!すごいじゃないか!」
ーこりゃたまげた。この才能は本物だ。この子の父親はどんな魔術師だったんだ?母君にもっと聞いておけばよかった…。ー
縁はもう驚きが隠せない。
「ヤンガ、お前才能が溢れてるぞ!腹減ってるだろ。まずはワカメうどんだ!食え!」
縁は器にうどんとうどんつゆ、ワカメにネギに天かすを載せて渡す。同様にしてヤオ、ユエにも渡す。
「おお〜半透明のスープにこの嗅いだ事のない魚の匂い…。白いのがうどん?ですか?」
ヤンガが箸をもって尋ねる。
「そうだ。それも日本に数あるうどんの中で最も美味いと評される”讃岐うどん”だよ。魚の匂いは”いりこ”というカタクチイワシの干したものだ。私はグルメだから伊吹いりこの”銀鱗”というブランドしかつかわないんだ。」
と縁がうんちくを垂れる。
「ししょー。早く食べないとのびる。」
ユエが冷静に突っ込んだ。ヤオも頷いている。
「では、合掌!いただきます!」
縁は食事の号令をかけた。
縁は自分の分を大急ぎでかきこむと、チャイナトラウト4匹の下処理をして串に刺して焚き火のそばにさす。ついでに2杯目のうどんを茹で始める。
「おかわり!!!」
早速ヤオが2杯目を催促する。
「ちょっとまって!すぐだから。カレーうどんもできるよ、する?」
「はーい!わたしする!」
「僕はワカメで!」
一時、河原は食の戦場となったのであった。旅の一日目にして、大いに実りある1日だった。




