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双蛇ノ縁ーソウダノエニシー  作者: 環林檎


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第二章 琉球への旅時 第41話ーパーティー編成ー

里をたって1時間ほど。唐突に縁は、

「さて、パーティー編成をするぞ〜小休止だ。みんな止まれ。」

と声をかけた。

「パーティー編成ってどういうこと?」

ユエがとまどう。

「ユエさん、普通、冒険者たちは前衛、中衛、後衛と役割を決めます。その事じゃないでしょうか?」

ヤンガが丁寧に説明する。

「ユエさんとかいいよ、タメ口で。なんかワキワキする。」

ユエがげんなりした顔で言った。

「じゃあ、ユエ…ちゃん?ごめんごめん。呼ばれたこと無かったかなごめん、ユエ!ね、ユエって呼ぶよ。」

ユエとヤンガが寸劇を繰り広げる。それが過ぎるのを待って、縁は、

「ヤンガの言う通りだ。これから大きな森に入っていくからな。」

縁は道端の枝を拾って地面に簡単に図を書く。

「まず前衛はヤオ、中衛がユエ、後衛がヤンガだな。これがポピュラーな感じだ。私はどこでもできるから、本当はユエも前衛でもいいんだがな。今回は道案内がいるから私も前衛に行く。となると、後衛のヤンガが手薄だから白曜と黒曜をヤンガの影に隠遁させておく。」

弟子たちはふむふむと納得する。

「相敵したら、ヤオがまず攻撃、ユエが臨機応変に対応しつつ、ヤンガが魔法で攻撃したり、防御をする。これが3人のパターンかな。」

と縁は説明した。そして、

「ヤンガ、言っていた通り、大きな荷物は私が空間術式に格納する。水分と、背中を守るための簡単な荷物だけ残してあとは私に渡していいよ。」

とヤンガに声をかける。

「はい。事前に聞いていた通りに。」

と、ヤンガは寝袋や日用品などの入ったリュックを縁に預ける。縁は片手で受け取ると空間術式に格納した。

「ヤオとユエは気配探知を怠るな。距離は半径5キロでいい。これからはモンスターも出ると思うから、気をつけて出発。」

縁たちは再び歩き出す。

日本でいえば10月は肌寒いものだが、湖南省あたりはまだまだ暖かい。うっすらと汗が滲んでくる。その時だった。


「「オーク5体接近中。」」

ヤオとユエの声が揃う。

「このまま前進して戦闘を行う。構えだけしてくように。」

縁は淡々と指示するが、またも空間術式からグリーンベアの串焼きを取り出してもぐもぐしている。ヤンガは目を丸くしているが、

「師匠はああなの。いちいちやることに驚いてたら神経持たないわよ。」

とユエはアドバイスする。ヤオは、

「気にしたら負け。」

お手上げポーズをとる。ヤンガは

「はぁ…。」

と溜息をつきつつ、

ーこれからオーク5体くるから気を引き締めないと…ー

と常識のギャップに悶えていた。

一行は慎重にすすむ。

「距離300mをきった。」

ユエの目が鋭くなる。そして視界にオークの集団が入ってくる。

「ブヒヒヒ!」

「ブヒ!ブヒホッ!」

オークは柔らかそうな獲物を見つけて会話をしている。


「行くぞ!」

ヤオが駆け出す。

「ブモォオオー!」

オークは荒削りな大きな棍棒を振りかぶった。

オークはDランクモンスターである。正直ヤオ達の敵では無い。しかし、縁が見たいのは3人の連携である。オーク5体はちょうどいい相手だった。

寸勁(スンケイ)穿内崩センナイホウ)

ヤオは今まで使ったことの無い技を出す。里にいた間に縁に教えられた技だ。

オークはヤオをひ弱な存在だと決めつけ、そんなものの拳などきに傷つけられるとは思っていない。だが、

「ギャブヒィ!!」

重い拳に、引き裂かれるような体内の痛み。

寸勁とは体の内部に打撃を浸透させる技で、穿内崩は特に強い力を持つものでしか使えない。ヤオはむちゃくちゃに振るわれる棍棒をたくみに交わしながら、拳を振るう。その間を、ユエの蛇の形をした漆黒の影が、オークの脚の腱を噛みちぎる。更によく見ると2人には、半透明のシールドがはられている。ヤンガだ。

1匹、また1匹とオークは倒されていく。最後の1匹が、穿内崩の一撃で

「ブフヒヒィ!!!!」

断末魔をあげながら不規則に棍棒をふった。不意にヤオの背中に当たりそうになる。

「あぶないっ!ウォーターウィップ!」

ヤンガが慌てて棍棒を水の触手で掴んだ。ユエがそのオークを影で雁字搦めにする。

「とどめだ!穿内崩!」

ヤオは最後に陽気を纏わせた寸勁でトドメをさした。


「うんうん、なかなか良い連携だね。」

縁は死んだばかりのオークの頸動脈をナイフで切り裂きながら、のほほんと言う。弟子達3人は軽く息をついている。

「ヤオが攻撃に集中したのが良いね。ユエとヤンガのフォローもかなり理にかなっていた。最後はヤオの油断だが、2人がちゃんとカバーしたのはとても良い。初めてにしては上出来だよ。」

縁は評価をする。

「ありがとうございます、ところで師匠は何を?」

ヤンガが聞く。

「もちろん、血抜きだよ。自分たちで食べるにしろ、売るにしろ、血抜きしてないと不味いだろ。」

縁はそこら辺の太い幹にオークの足を縛り付ける。

「「「は、はぁ…?」」」

「あ、これは冒険者として結構大事な事だからな。解体は安全な場所でもできるが、血抜きは死んだ直後じゃないとできないから。お前たちは強いんだから、血抜きの血の匂いに寄ってくる雑魚なんて一瞬だろ?お小遣い出すけど、自分で稼ぐことも考えるべきだ。」

縁は血の匂いに顔を顰めながら言った。

「なるほど、勉強になります。」

ヤオが顎に手をやり答える。

「確かにお小遣いだけじゃ、欲しいもの買えないかも。私たちって街に出たことないから物価がわからないし。」

ユエは髪についたホコリを払いながら言った。

「血抜きの件は、場所も考えないと行けませんね。危険地帯で呑気に血抜きはできませんから。」

ヤンガは相変わらず真面目である。


旅に出て早速モンスターに襲われた一行。チームワークはかなりのものだった。縁はほっとし、若者たちの成長に笑みを浮かべる。

ーこれなら、私を含めた戦力を考えると、普通のドラゴンぐらいなら大丈夫かな〜ー

などと考えつつ、エビの串焼きを出して口にするのだった。


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