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双蛇ノ縁ーソウダノエニシー  作者: 環林檎


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38/62

第38話ー出発前夜の宴(メシウマ回)ー

とうとう旅立ちに向けて残すところ1日となった。今日は統合歴5033年10月14日12:00である。今日は劉家と周家、黄家の顔合わせである。


アリクイダックは1日前に劉家(リュウケ)周家(ジョウケ)に渡されていた。今目の前に並んでいるのは、劉家と周家、黄家(ホワンケ)の母達の心尽くしである。アリクイダックのつくね(タレ、塩)、串焼き、丸焼き、唐揚げ、参鶏湯、生白菜と水菜のサラダ(ごま塩ニンニクドレッシング)、鳥モツ煮込み、蓮根の淡水海老しんじょう、排骨蓮根湯、大根のサラダetc…眼前に広がる料理の品々に縁は目を輝かせる。

「う、美味そうおおぉぉ!」

つくねの醤油の、照り照りとした輝きに思わず唾を飲んだ。

「師匠、食べる前になにか一言あるもんじゃない?!ステイ、ステイステイ!!!」

ユエが待ったをかける。

「うう〜ん。あまりに美味そうだったものだからつい…。」

縁が弁明し、挨拶を述べる。


「では、手短に。明日から新たなる旅に出ることになる。だだっ広い野原な訳じゃない、山もある谷もある。モンスターも出る。そんな旅だ。旅の目的は検討もつかないもの。しかし、私がついている。式神たちもいる。旅の安全は最低限守ろう。後は3人の成長にかかっている。ご家族の皆さん、これは別れではない。成長への旅立ちだ。どうか悲しみの涙でなく、期待の笑みで見送って欲しい。」

参加者から拍手が出る。

「ではみなさん、盃に酒を!」

劉家のヤオの父、志強(チーチアン)が声をあげる。

「縁様並びに我が子らの門出を祝して、乾杯!」

周家のユエの父、陳宇(チンウ)が音頭をとった。

「かんぱーい!」

みなで門出の酒を酌み交わす。


縁は白酒を飲み干すと、早速串に刺されたアリクイダックのつくねに手を伸ばす。パクッと口にほうばる。ただの鶏ではない、モンスターならではの弾力。モニッ!ジュワーと、肉汁が爆発する。そこにコリコリという軟骨がきざんで入れてあることが、食感のアクセントになっている。甘辛の醤油ダレがいくらでも食が進む。

「うますぎるううぅぅぅ!!!」

縁は叫んだ。

「良かったです。アリクイダックは蓮根と並んで悠淵の名物ですから。」

とヤオの母徽因(フイイン)が言う。

「師匠は本当に美味しそうに食べますね。」

ヤオも続けて声をかけた。

「そりゃね、生きがいだよ!生きがい。世界のグルメを集めてるんだから。」

縁がキッパリと告げる。

「あははははは!キッパリ言っててウケる。ちゃんと仕事してくださいよ。」

ユエが茶化す。縁はジトっとした目をして、

「だって歳とらないし、普段田舎に住んでるし、帝にはいいように使われるし、食ぐらい自由でいいでしょ?!」

と、結構マジな理由を言う。

「あーー、アハハそだねー。」

ユエは藪蛇で棒読みだ。

縁は次は塩焼きのつくねに手を伸ばす。こちらはあっさりとしているが、より弾力があり脂の旨みがダイレクトだ。一口かじればその脂と肉汁で、唇がテカテカになる。臭み消しの生姜やニンニクもいい塩梅だった。

ー…これは刻んだ白ネギを入れているのか、甘みが強い。料理のいいアイデアになる。ー

縁は感動しながら料理を貪った。もちろん縁は野菜を取ることも忘れない。白菜のサラダを食べる。シャキシャキ、ザクザク。新鮮な白菜の歯ごたえと削りたての黒胡椒が相性抜群で、脂を上手く流してくれる。

「そのサラダ、ヤンガが手伝ったんです。今まで食事なんてほとんど手伝わせたことがなかったので、旅の中で困ると思ってここ数日は料理の仕方を教えていました。」

と困った顔をしつつ言ったのは思妍(スーイェン)である。

「さすがに手を切るとかそんなことはないですけど、ものが煮えたか、煮えてないかとか、まだ全然分かりません。完全にできるのは固ゆで卵ぐらいで…。」

と後頭部をポリポリかくヤンガ。

「固ゆで卵はとにかく長く煮ればなるから、まぁ料理の第1歩としては懸命だな。」

ふふふと笑いながら答える縁。

「知ってるか?料理人は『卵料理に始まり卵料理におわる』というほど、卵は奥が深いんだ。ヤンガの目の付け所はとてもいいよ。」

縁は参鶏湯の腿の部分を切り取りながら言った。

ー参鶏湯にしてくれたのか。希少な生薬なのに。ありがたい。ー

参鶏湯の汁をすすって口のなかに様々な食材の味が入り乱れる。滋味深い…。力がギンギン沸き立ってくる。


一方、ヤオとユエも負けてはいなかった。ユエは唐揚げにぱくついている。大振りなからあげからは、幾筋も肉汁の筋が光っている。ヤオは淡水海老しんじょうをパクパク食べている。

ーこいつ、エビ好きなんだな。ー

縁は思った。縁も気になって淡水海老しんじょうを口にする。ふわふわ、ぷりぷり、舌触りは滑らか。とんでもなく美味しい。そして縁はこれに合う薬味を悪魔的発想で思いついてしまった。

「ヤオ、器の端っこちょっとよけてみ。」

縁は空間術式から緑色の瓶を取り出してスプーンですくってスプーンの半分ほど入れた。

「師匠、これはなんです?」

「まぁまぁいいから、これをしんじょうにつけて食べてみなよ。」

「は、はぁ?」

ヤオは謎の緑の物体を少しつけてしんじょうを口にした。

「こっこれは!!!」

頬があかくなったヤオに、してやったりという顔の縁。

「スーッとした後にピリッと来てなにか柑橘系の香りが豊かに広がってきます!」

「ふふふふふ。やっぱり合うと思った。やっぱり海老しんじょうには柚子胡椒だよね。」

「「柚子胡椒??」」

ヤオとユエが興味津々で聞いてくる。

「熟す前の青柚子の皮と青唐辛子を合わせたものさ。どこに胡椒の要素があるのかは知らないが、日本の九州で有名なんだ。ユエ、この塩焼きのアリクイダックにつけて食べてみ?」

「んん?では、いただきまーす。」

ユエは恐る恐る食べる。

「うわなんじゃこりゃ。酒がいくらあっても足りねー!じいちゃん酒ついでくれない?!」

随分気に行った様子である。縁は呆気にとられている劉家、周家、黄家の皆さんにも柚子胡椒の説明をして渡した。アリクイダックとあまりの相性の良さに悲鳴が上がる。


縁は今度は唐揚げに手を出した。大振りにカットされた唐揚げは、早く食べてくれと言わんばかりである。カリッジュワッ、バイーンである。皮のカリッと感、肉汁のビックバン、肉の弾力で歯が程よく押し返される。

ーむむむ、美味い。美味いぞこれは!!!たかがアヒル、されどアヒル。そこらの底辺モンスターとはわけが違う!ユニークだから!!!ー

脂の残った口を白酒で洗い流す。そこへ、志強が声をかける。

「縁様、今回は珍味である舌もございますぞ。我らも今まで数回しか食べたことがありません。どうぞどうぞ。あと、縁様が倒されたぶんのアリクイダックの魔石です。」

「お、珍味か。酒のあてに最高だな。が、その前にその魔石をくれ。」

「ええ、もちろん。」

志強はアリクイダックの手のひらサイズの魔石を渡す。すると縁はそれを両手で受け取り、なんと液体化して飲んでしまった。

「え、えええええええ?!!」

志強は今見たことが理解できない。隣で見ていたヤオや、ユエ、ヤンガもだ。

「あー、ごめん。見せたこと無かったかな。私魔石吸収して力にできるんだよね。もちろん雑魚とかノーマル種じゃ無理だけど。今回ユニークだったから。お陰様で砂の魔法が使えそうだよ。」

縁はホックホクである。周りはもう何度驚かせられようと、気にしないと心に決めたのだった。


「さてさて珍味♪珍味♪」

縁の意識は既にアリクイダックの舌に移行している。

「ゴリっゴリゴリゴリゴリ。」

かなり硬い感触だが、コラーゲンとうまみをかんじる。

「これは酒泥棒だねぇ。」

じんわりと感じ入る夜だった。


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