第37話ー欧州魔法学校へー
アリクイダックを仕留めた日から、何気ない日常は続いて行った。午前中はヤオとユエに稽古をつけ、午後は護衛部隊に稽古をつける。そんな日々がいつまでも続くかとも思われた。しかし縁たちは旅にでて、荒波にこぎだし、琉球王国へ行かなくてはならない。
ある日の朝、縁はまた婆様を尋ねた。要件はヤンガのことだ。縁は謹慎を命じる際、ヤンガへ魔法学校への進学を進めていた。
「イュイ、どう思う?確かにお母上は寂しいことと思うが、ヤンガの魔術の才は惜しい。私たちの旅路に付き合う必要はないが、是非とも欧州の魔法学校へ入学させてやりたい。」
「そうじゃなぁ。本人のやる気次第じゃなぁ。お父上は流浪の魔術師であられたからのぉ、魔術師への憧れはあるはずじゃ。」
「出発まで間がなくなってしまったな。今日決めてしまうしかない…か。イュイ、ヤンガとヤンガの母君を呼び出してもらえるか??」
「承知いたした。使いのものをやるでな、しばしお待ちくだされ。」
「…おはようございます。」
「婆様お呼びですか?黄思妍でございます。」
「ヤンガとお母君をお連れしました。」
婆様の下働きの人が言った。
婆様と共にいる縁を見た思妍は、
「縁様、この度は息子が害をなし申し訳ありませんでした。遅くなりましたがお詫び申し上げます。」
真っ先に頭を下げた。
「いやいや、気にするな。若気の至りさ!誰でもあることだから。」
縁は微笑んで言った。
「さて、本題じゃが、ヤンガを欧州魔法学校へ入学させる件じゃ。そなたらどう思っておる?」
婆様は早速話を進めていく。
「僕、いえ、私は…行ってみたい気持ちはあります。でも、入学式費用ありますし物理的に無理かと…。」
自身のなさげなヤンガ。
「私は父君のような立派な魔術師になって欲しいと思っています。ただ費用面が…幸いヤンガは蛟ゆえ、冒険者として働き貯金をして自らの力で行って欲しいと思っています。」
対して思妍は前向きな考えを示していた。
「あぁ!入学資金なら私が全額出そう。入学許可なら学園長であるNo.3(ナンバーサード)に取ってあるし!もちろん全額出してもらうのが申し訳ないって場合は、私が貸すのでもいいぞ。」
縁はあっさりと話す。
「はい?!入学許可をここにいてどうやって…」
ヤンガが素っ頓狂な声をだす。縁は左手のデバイスを見せ、
「ナンバーズはみんなこれを持っている。だから、返事を返してこないやつもいるけど、だいたい誰がどこにいるかわかるのさ。やり取りもできるしな。その点サードは几帳面な性格だからすぐ返事をくれたよ。"あのフィフスが目をつけた人材なら、喉から手が出るほど欲しい!成績次第では費用も全額免除するからカモン!"だってさ。どうだい?」
と学園長の伝言を伝える。親子は顔を見合わせて考え込む。
「ガロンやキース、ヤンガと言った世代はまさに今が伸び盛り。縁様と共に旅ができ、魔法学校に入学できるとなれば、これまたとない機会。わしも若ければついて行きたいほどじゃ。ただ、決めるのはヤンガ、お前じゃ。お前は優しい子じゃ、母のことが心配だろうがそれは心配せんでえい。我らが守ろう。どうじゃ?」
と、婆様は言った。ヤンガは拳を握り込む。彼の中で激しい葛藤が起こっているのは間違いなかった。
その手を両手で包んだのは、母、思妍だった。
「行ってきなさい。またとない機会よ。あなたは気弱だけど、芯は強い子。今外に1歩踏み出すの。」
「母さん…。」
ヤンガは言葉につまる。そして1度俯き、
「縁様、私は欧州魔法学校へ行きたいです。そう…ずっと思っていました。父のような魔術師になりたいと。私でもなれますか?」
縁に問う。
「それは本人の努力次第だ。思いの強さ次第だ。なりたいならば手をかそう。この手を取るか?」
縁はヤンガを真っ直ぐ見つめて言った。
「手を取ります!よろしくお願いします!!」
ヤンガは真っ直ぐ見つめ返して答えた。隣で思妍が目尻を拭っている。
「ヤンガの前途が決まったこと、嬉しいかぎりじゃ。だがもう出立まで1週間を切った。この度は特別にヤンガの謹慎をとき、家族との時間に当てることを許す。」
婆様は優しく言った。
「ヤンガ、これからお前は私の門下となる。ヤオとユエと同じく師匠と呼んで欲しい。少ない時間だが家族としっかりと絆を深めてこい。」
縁はニカッと笑った。
こうして縁たちの旅路に仲間が1人加わるのだった。




