第36話ーアリクイダックー
「おはようございます、師匠。」
「はぁぁうあ〜。おはようございます〜。師匠。」
いつもの訓練場にやってきたのヤオとユエの2人に縁は、
「今日は課外学習だ!魔物を狩るぞ!アリクイダックだ!」
と伝えた。二人は内心、
ーやっぱりそれかーい!!ー
と突っ込んでいた。
「ん、2人ともなんでそんな遠い目してるんだ??」
「いや、本当に師匠は食に貪欲だなと思って…。というか、アリクイダックの取り方知ってるんですか?」
ヤオが誤魔化しながら聞く。
「ん?知らないな。なんか特殊な取り方なのか?」
縁は初めて聞くことに驚く。
「婆様わざと教えなかったのかなぁ?まぁいっか。私たちが教えるっていうことで!」
ユエが勝手に納得する。
「あと、暇そうなこいつらも連れてきた!」
縁は背後を紹介する。
「謹慎3人組!」
そこには気まずそうな3人がちゃんと装備を整えて立っていた。ガロン、キース、ヤンガはそれぞれ視線がさまよう。
「いや、師匠、暇って…。謹慎なんだからちゃんと真面目にやってるわよ。ねぇ〜」
とユエが突っ込む。
「「「はい…。」」」
項垂れる3人組。
「ところで、アリクイダックってどう取るんだ?」
縁は特に気にせず聞く。
「アリクイダックは蟻食と言うだけに、蟻塚に潜んでいます。アリクイダックを取る度に蟻塚を壊していたのでは、資源が守れないので魔具を使用して捕まえます。」
ヤオが丁寧に説明した。
「ほうほう。ならば魔具はどこかに借りにいかないといかないのか?それとも各家庭にあるのか?」
縁が尋ねる。おずおずと手を挙げたのはガロンだ。
「魔具は村の倉庫に5つあります。彼らはユニークモンスターなので猟期がありまして、春と秋になります。ちょうど今ですね。」
「おお、そうなのか。結構数が少ないモンスターなんだな。ヤオ、ユエは装備を整えておいで。謹慎3人組は魔具を借りてきて欲しい。頼んだ!」
縁は気軽に頼んだ。
「了解です。」
各々が若干モチベーション低めに返事をした。
「主様、ユニークモンスターですと、久しぶりになりますね!」
懐から稲ちゃんが顔を出す。
「あぁ!日本のユニークはあらかた食い尽くしたからな!まさかここでユニークに出会えるとは。」
縁はほくほく顔で言った。
ヤオ達は装備と魔具を準備し、同じ場所に戻って来た。
「さて、場所はどこなんだ?」
縁は問う。するとおずおずとキースが、
「里の南側に蟻塚の群落があります。案内しますんで。」
と案内役をかってでた。
一行は広葉樹の林を進む。
「ヤオ、ユエ、探知魔法にビックホーンディアーとかホーンラビットとか美味そうな魔獣がいたら教えてくれ。狩るぞ。」
縁は2人に声をかけた。
「そんなに魔獣が必要なんですか?」
ヤンガが声をかける。
「あぁ、私には使役獣がいるし、私自体が人工生命体だから燃費が悪いんだよ。めちゃくちゃ食うよ?私。」
縁は気軽に答えた。現に縁は片手を空間術式に突っ込んでいる。朝が軽かったので串焼きを食べようという腹積もりである。ついにピンクトード(ピンク色の巨大なカエル)の足の串焼きを取り出してむしゃむしゃしだした。
「え、じゃあなんで私たちとの3人旅では食べ歩きしてなかったの?」
ユエが気配探知を続けながら問う。
「そりゃあ、陰陽の力の件もあったし、魔族の件もあったから、さすがに悠長なことはしてなかっただけさ。常に小腹は空いてたよ。」
もぐもぐしながら返事をする縁。
「あ、ビックホーンディアーがいますね。親子です。」
ヤオが言う。
「ん〜親子はナシナシ!後味悪いから。」
縁はもぐもぐしながら首を振った。
―人工生命体…???サラッと流された…―
と謹慎3人組は思った。
「みなさん、もうすぐ着きますよ。」
ヤンガが声をかける。
見ると視界が開け広大な砂地が広がっている。白っぽい大きな塚が、いくつも立ち並んでいる。
「おおー!すごいな。景色もすばらしい!」
縁は新たな串を出してもぐもぐしながら言った。
「これが魔具です。」
ガロンが縁にネズミに似た魔具をみせた。
「これをどうやって使うんだ?」
縁は魔具を慎重に観察する。
「至ってシンプルです。アリクイダックが居そうな穴に放り込んで、魔力を流して追い立てます。」
キースが説明した。
「なるほどな。なら、私たちには気配探知があるから、それで百発百中だな。」
縁は案外簡単そうな狩りに拍子抜けしている。
「まぁ追い立てるのは簡単なんですが、気性がとても荒く、長い舌をムチのように使いますし、くちばしに鋭い牙が生えていて、俊敏。空も飛べますし。なかなか捕まえるのが大変なのです。」
ヤオが説明する。
「あー、アオイとウスハに結界張ってもらうから、全然大丈夫だろ!じゃあ早速狩りを始めよう!」
縁は楽観的である。魔具に興味を抱いて、やる気満々。
「ヤオとユエは探知をしながら魔具で追い立てる。私と謹慎3人組の内二人は魔具で追い立てる。」
縁たちは各々魔具を持つ。ヤオとユエは探知を行い、
「あそこの穴とそこの穴。あっちの左にいます。」
「そこの右とそこから4つ離れた穴にいるよ。」
2人の指示通り、縁とガロンとヤンガが穴の前に立つ。もちろんヤオとユエもである。
「魔力通すと、この魔具ってこんな感じなのか。いっせーのーでやるぞ!」
縁は声をかける。縁は一抱えもあるネズミに似た魔具に、たっぷりと魔力を通した。すると魔具は、
「キーキー!キーキー!」
まさに凶暴なネズミといった様相である。
ーこれ、大丈夫なのか?ー
内心縁は疑いながら、
「いっせーのーで、はい!」
と声をかけた。すると魔具はうるさい音を立てて穴を走っていく。
そのうち、
「グワァグワァ!!グワァ!」
という声があちこちから聞こえてきた。
「アオイ、ウスハ!空中に広く結界をはれ!」
縁は声をかける。その内、1羽のアリクイダックが穴から飛び出してきた。白い羽はアヒルそのものだが、口に生えた鋼色の歯がその狂暴さを物語っている。
「グヴァグヴァ!!!!!」
羽を広げてこちらを威嚇する。近くにいたユエが針を急所に投げ、アリクイダックの命を奪った。これが最初の1羽で、似た流れであとの4羽を各々仕留めた。ただ1羽のアリクイダックが、砂と舌使をって攻撃をしかけてきた。舌が音速を超えるパンッという音が響く。それをヤンガがサンドニードルという魔術で仕留めた。
「これで5羽か。ユニークモンスターだとして、あと何羽取っていいんだ?決まりとかあるのか?」
縁は適当に声をかける。
「1人当たり2羽となってますね。ですから、今日はあと2羽ですね。」
キースが答える。ユエは、
「じゃあちゃっちゃと捕まえて帰りましょ!ホコリっぽくて嫌になっちゃう。」
と言った。その一言であっという間に残りの2羽は捕まえられた。縁はにっこにこである。
帰りがけ。ヤオが縁に声をかける。
「両家が集まる日の件なのですが。我が劉家も周家もいつでも構わないとの事です。」
ユエが、
「そーそー、かまわないってさ!せっかくだから14日ぐらいにしたらどう?出発前に景気付けにね!」
と、続ける。
「じゃあこのアリクイダックもその日に食べさせてもらおうかなぁ。」
縁はもはや食のことしか目にない。
「はいはい。そういうことにしましょう。」
ヤオが言う。
その時だった。一瞬空気が張り詰める。
「ギョゴョゴゴゴ!ギャギュ!」
と声。1匹のゴブリンである。
縁はかるく振り返りざまに、魔力を纏わせた手刀で
ーザンッー
唐竹割りにする。
「ヤオ、ユエ、雑魚にも手を抜くな。探知に写ってなかったんだろ。」
縁は軽く注意する。
「「んげぇっ。」」
2人の声が被る。気配探知は魔力が小さすぎると探知できないことがある。
「はぁ。私、精密さには自信あったけどまだまだって事ね。」
ユエが頭を抱えてガックシとしている。
「かまわんかまわん。初めはそんなもんさ。」
縁はまた空間術式からビックホーンディアーの串焼きを出しながら答えた。
ー師匠は一体何があったら驚くのやら…。私も探知の精度をあげなくては。ー
とヤオは思った。
ーすげぇ。手刀だぜ…。ー
と思っているのが謹慎3人組であった。




