第28話ー劉家(リュウケ)と周家(ジョウケ)ー
縁は蓮藕排骨湯すすりながら、
「酒の間にちょっと小休止するのに最高だな〜。この蓮根のシャクシャクした感じとオークの出汁が滋味深い味だぁ…。」
―みんなが笑っているのを見ると、胸の奥にじんわり温かいものが広がる。―
と、ほっこりしていた。そうすると人化している使役獣たちが集まってきた。
「今夜は良い宴ですね。」
白曜は水餃子が気に入ったようで沢山食べている。
「それにしても、あのエビ地獄は勘弁です。」
黒曜は遠い目をしている。がしかし、取り皿には大量にエビマヨとエビチリが取られている。2人とも酒は白酒にしたようだ。
「私はこの蓮藕排骨湯が本当に気に入りました!リーさんに作り方を教わってまいります。」
アオイはこの土地の味が随分気に入ったようだ。
「私はあの水餃子の皮の作り方を教わりたいですわね。もちプルで、お腹にも溜まるような!」
ウスハはチャンさんの水餃子に興味津々である。
2人はそれぞれカシスソーダとピーチソーダを飲んでいる。
「稲は食べるのが専門です。海老むきだけでおなかいっぱいです!」
稲ちゃんは若干むくれている。手元にはもつ煮込みが入っている。酒は日本酒である。
みな個性豊かだ。
「みんな、今夜は好きなだけ食べて飲んでいいからね。みんなの好きなニシキエビのハーブ焼き、ここの子供たちに大人気だからなくなっちゃうよ〜。」
「「「「「えー?!」」」」」
使役獣達は大わらわで散っていった。
「ふふふふ。私はもう好きなだけ食べましたからね。」
ヤオは何気ない抜け目のなさを出している。
「もちろん私も食べた。あのバターがたまんないね〜。」
ユエもビールを飲みながら味を思い出して笑っている。
「お前達、モツ煮込みとか、すじ煮込みとか食べてないだろ。上手いから食べてみなよ。」
縁は日本の料理もすすめる。
「もちろん食べますよ!」
ヤオは真剣な顔ををして言った。
「私もモツだいすきだから楽しみ!」
ユエも言う。
「あのコラーゲンと油の感じが罪深いうまさなんだよ。日本酒も私んとこの地酒だけど飲みやすいやつを揃えてある。じゃんじゃん食べてくれ。」
縁は排骨をかじりながら言った。
縁は婆様の方に向かう。婆様は月を見上げながら日本酒をちびりちびりと飲んでいた。あては筋の煮込みである。
「イュイ、盛大な宴になったな。」
縁は隣に座る。
「縁様、これも住民の不安払拭のため、我々の勝利の誇示ですじゃ。料理も美味しゅうございますぞ。日本酒はもう3本目です。」
婆様は盃を縁に捧げる。
「我らの勝利に。」
「我らの勝利に。」
縁は同じように日本酒の盃を捧げた。
「それにしても縁様、謹慎中のものたちへの配慮。感謝しますぞ。」
婆様が頭を下げる。
「いいんだよ。若いうちは誰でも間違いを起こす。その罪を問いすぎれば、彼らの目は曇るばかりさ。」
縁は唐揚げを食べながら答えた。
「にしても、悠淵は良い里だな。自然は豊かで、住民の結束も強い。お前は頑張ったんだな。」
縁は微笑みながら言った。
「縁様…」
婆様は言葉を失う。
「ーー私たちは最善を尽くしました。ーじゃが、ヤオとユエ、彼らは我らの手に負えぬ世界の基軸。ゆえにどうぞ縁様が導いてやってくださいませ。」
婆様は頭を下げた。
「気にするな。イュイ。私は帝の夢見の未来視によって、ここに来た。この先もヤオとユエを導くのはこの私だ。未来が破綻せぬよう、私が手を添えよう。」
縁は婆様の手をそっと握った。
「さて、私もヤオとユエのご両親にまた会っておきたい。後でな。イュイ。」
縁はサッと笑みを浮かべると、席をたった。
婆様は一筋の涙を流しながら、
「誰もが幸せになることを祈るがゆえの、"強欲"。この2つ名に嘘はございませんなぁ。」
と月を見上げた。
人混みの中、ヤオとユエの両親を探す。すると両家は隣同士に座っていた。
「ヤオとユエのご家族の皆さん。楽しまれていますか?」
縁は丁寧に声をかけた。
「縁様!!!」
両家の者たちは一斉に立ち上がった。
「すまないね。私は自己紹介もせずに昨夜は儀式を行ったから。改めて、私は滝野縁。あなた達の名前を教えてくれるかい?」
縁は白酒を持って空いた席に座った。
「私は劉家のもの、ヤオの父の志強と申します。妻の徽因です。奥が祖父と祖母です。昨晩、いえ、封印解放の時からありがとうございました。」
見事な白髪をもつ劉家はみなで頭を下げる。
「私は周家のもの、ユエの父の陳宇と申します。妻の佳々(ジェンジェン)です。奥にいるのが祖父と祖母。この度は誠にありがとうございます。」
みなが黒髪の周家の陳宇が、それぞれ紹介を受ける。
「みなさん、座ってください。そんなかしこまらずに。いっぱいやりましょう。」
縁はあまりに畏まった態度に、軽く声をかけた。縁が座ると劉家から周家の順で座った。
「料理は食べられていますか?ヤオもユエも存分に満喫してくれているようですが、皆さんはどうですか?」
縁は声をかけた。
「もちろん。あのニシキエビ、初めての味で大変美味しかったです。」
徽因が華やかな笑顔で言った。
「バターがあれば簡単にできますけどね、ここにあるかなぁ。ハーブの種さしあげますよ!。」
縁は気軽に言った。
「もつの煮込みと日本酒も美味しかったですなぁ。毎日食べたいぐらいで。」
陳宇がカラカラと笑った。
「ふふふふ。それはありがたい。周家に味噌を一樽差し上げますよ。これで普段とってきたモンスターのモツを煮込めば良いですよ。奥様に作り方を教えて差し上げましょう。」
縁は嬉しそうに答えた。
ーーそしてひと呼吸おき、
「皆さん、ひとつお話があります。端的に申し上げると、ヤオとユエをまた旅に連れて行くということです。」
と全員の顔を見据えた。縁は全員笑顔を失うと思っていたが、そうではなかった。全員微笑んでいた。
「驚かないのですか?」
縁は聞く。
「正直、ヤオもユエも、この里で終わる生ではないとわかっております。こうして我が劉家と周家が隣合ってここにいるのも、それを話し合っていたからなのです。」
志強は答えた。
「ヤオもユエも、陰陽の化身。なにか特別な意味のある子なのです。生まれた時のことを聞いてくれますか?」
佳々が瞳を一度伏せると、もう一度力を込めて目をあげた。
宴のざわめきが遠く感じる。
「それは300年以上前ーーーー…。




