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双蛇ノ縁ーソウダノエニシー  作者: 環林檎


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第27話ー打ち上げ(メシウマ)ー

縁はまずは酒を出していく。氷のたくさん入った樽にビール瓶、ウイスキーにジン、ラム酒、テキーラ、軽めの赤ワインと白ワイン、淡麗辛口で飲みやすい日本酒。変わり種でカシスのリキュールともものリキュールも置いておく。主に外国の酒だ。この悠淵の里は水の都。水が豊かな土地にはその土地の銘酒がある。そのため白酒(中国の酒)は出さなかった。

ー何しろウワバミとも言うからな。酒はいくらあっても足りんだろう。ー

縁はフフフと笑う。


ー体も元気だし、時間もあるし、何品か作るか。出来合いのものばかりでは味気ないしー

と唐突に思いつく。


そして、酒があらかた準備し終わると、次は縁自身の料理だ。空間術式から取り出したのはジャパンオルトロスバードと呼ばれるBランクモンスターだ。群れでいたところ(Bランクモンスターが群れになるとワンランク上のAランクになる)を一網打尽にしたため、余裕がある。まずは胸肉。1口大より大きめに切っていく。どでかいボールに満杯になると、粗挽き胡椒、藻塩、酒、ニンニク、生姜をすりおろして入れ、持ち前の腕力でよく揉む。その後水を入れ、さらに揉み込む。むね肉は普通に揚げると固くなりがちなので、このように給水させることがコツである。

次にもも肉。これも1口より大きめに切っていく。味付けは粗挽き胡椒、岩塩、酒、ニンニク、生姜をすりおろして入れ、小豆島産の薄口醤油を4回しほどする。そしてこれもよく揉み込む。

胸肉、もも肉、それぞれバカでかいボールが3つずつできた。

肉を漬けおく時間に、もうひと品準備する。以前縁が海で格闘してきたニシキエビ10匹。伊勢海老の何倍あるやら、それを頭から割っていく。真っ二つにしたところで臭み抜きの塩を振る。水が出てきたところをキッチンペーパーでよく拭き、粗めの天日塩、ニンニクとハーブの入った発酵バターをこれでもかと塗りつける。そして、土魔術と火魔術で作った即席のオーブンで焼いていく。

あまりの迫力に子供たちが興味津々で近寄ってくる。

「こら!がきんちょども!ここにいたら火傷するぞ。今まで食べたことないもの食べさせてやるから楽しみに待ってろ!」

オーブンの中からバターが溶ける「パシュッ、ブクブクブク。」という音と、なんとも言えないローズマリーの香りが漂ってくる。縁は全てのニシキエビにアルミホイルをかぶせ、余熱を通す。

その間に“揚げ”の時間がやってきた。竈の温度は万端。巨大中華鍋の米油に菜箸を入れると、ふつふつと細かい泡が出る。いざ揚げの時間。縁はまずもも肉のボールに卵を3個入れてよく揉み込む。そして片栗粉(世の中には小麦粉派もいる。3:7派のものもいるが、縁は片栗粉一筋)を均一にまぶし、皮を巻くようにして、次から次へと油に放り込む。揚げ時間の目安はあるものの、縁は全て勘で賄う。

ー時は来た。ー

綺麗なきつね色になった初めの1個を、ザル状になったお玉ですくいあげる。そして次から次へとすくう。もちろんバットの保温魔術も忘れない。そして味見も忘れない。

ー…んーーー、外側のカリッとした皮の食感に溢れ出る旨みと脂。これだから高ランクモンスター狩りは辞められない…ー

そこからは縁はひたすらに揚げた。もも肉を揚げたら、むね肉を。準備していたバットが山盛りの唐揚げで満載である。

ーんんんっ、ジューシーな胸肉。柔らかく、歯触りも最高だ。ー

胸肉も良い揚がり具合だった。

その他にも冒険の途中に購入した、ホワイトロックベアーの北欧風クリーム肉団子や、様々なモンスターのモツの煮込みや、筋の煮込みの鍋が、縁の周りの竈を占領している。わかめや韓国のりがアクセントのチョレギサラダ、キムチ、叩いたきゅうりと梅とポン酢を和えたものなど、酒のあても出していく。もちろんチャーハンやオムライスなどの炭水化物も出しておく。

その手際を見たチャンさんは、

「ただの料理好きって訳じゃなさそうだ。さすがだよ。みんな!私たちも急ぐよ!」

ご婦人たちを鼓舞する。白曜、黒曜、ウスハ、アオイはひたすらエビの殻をむいている。悠淵の里ご婦人たちは、さすが普段からエビを食べているだけあって、もはや神速である。見事なものであった。


夜の帳が降りてきた頃、宴会場には人が集まっている。縁は机に出来たての料理を沢山並べた。チャンさんや、ウーさん、リーさんの料理も湯気を立てている。

壇上で杖をついた婆様が言う。

「皆の者、昨晩は不安な時間を過ごさせてしまったことを詫びる。しかし闇は去った。我らの完勝じゃ。それもこれも、ここにいる縁様がおられたゆえ。一言お願いしたい。」

「ご紹介に預かった滝野縁という。故あって倭国日本から来たものだ。この里に迫っていた危険は皆の奮迅により去った。それを祝して、宴をしたいと婆様に提案させてもらった。そして婦人部の方々のご協力もあり、このような豪勢な料理が出来上がった。感謝を申し上げる。」

縁は頭を下げた。

「皆の者、今夜は無礼講じゃぁ!!!!!!」

婆様は日本酒の一升瓶を掲げて叫んだ。

「「「おおおおーーー!!」」」

里の人々が歓声を上げる。

「ねーちゃん、これエビ?エビがこんなに大きくなるの?」

ニシキエビのハーブ焼きを取りに来た子供が縁にきく。

「そうだよ。これは海のエビで、しかもこれはモンスターじゃなくて普通の生き物だ。元々すごく大きかったんだよ。」

「すっげーー!食べていいんだよね?」

「いいよ。ほれ、これぐらいでいいかい?」

縁は切り取ってやる。

「ありがとう。いただきます。」

子供はブリッブリの身を口いっぱいに頬張る。

「うめーーーー!!!なんだよこれ!ムギュージュワーってなる!他の奴らにも言ってくる!!」

子供は目をきらきらさせながら走っていく。

「こらこら!食ってからいけ!危ないぞ〜。」

縁は微笑みながら言った。その手には食べ物を取り皿に満載している。水餃子の皮がもちっとして、中の餡から濃厚な旨みが溢れ出ている。エビチリは日本のものより少しスパイシーで、酒が進む。

「あー最高だぁ〜」

ビールジョッキを片手に夜空を見上げる。

「しーしょう!」

ユエが唐揚げを皿に山盛りにして現れた。

「あ、師匠。」

ヤオはホ皿にワイトロックベアーの北欧風クリーム肉団子を山盛りにしている。

「おう!2人とも!休めたか?」

縁は水餃子をもぐもぐしながら聞いた。

「ありがとうございます。爆睡でした。」

「あたしもー。」

2人とも元気そうに答えた。

「それにしてもこの料理の量といい、酒の量といい、半端ないね!」

ユエはウイスキーをハイボールにして飲んでいる。

「そりゃあこの里の問題がなくなったんだ。いっちょ派手にな!婦人部のチャンさん達も張り切ってくれたし!もうこの水餃子のうまさと言ったら中華を統一できるぐらいだよ。」

縁もご機嫌に言った。

「この北欧風クリーム肉団子もうまいですね。ホワイトロックベアーなんて聞いたこともないモンスターですが、どうせ高ランクなんでしょう?」

ヤオはもぐもぐと肉団子を食べながら、真面目に縁に尋ねた。

「あったりまえだろ!魔力量が多いモンスターはうまい=高ランクってのは常識だ。まぁ豚や牛なんてのは低ランクでも充分うまいがな。食べるならうまいもの食べたいだろ?」

キョトンとした様子で縁が答えた。

「「あーーー…。」」

2人は随分と呆れた様子だ。

「ま、師匠だからね。」

「だな。」

なんて会話をしている。縁はその間、忘れていたことを思い出した。

「忘れてたことがある。ちょっと2人、手伝ってくれ!」

縁は調理台に戻り、3つ1組のお重を3つ準備した。

「何すんの?」

ユエは首をかしげた。

「いや、謹慎中の3人にも、せめて今晩ぐらいは豪勢にしてやりたいだろ?このお重に片っ端から詰めてやってね。」

縁はビール片手に菜箸をとる。

「師匠ってそういうとこあるよね。」

「な。」

ユエとヤオも菜箸を取り、縁に習った。


30分後。3人は、里の少し離れたところにある家屋に向かった。そこで例の3人が謹慎中なのである。縁は扉を叩く。

「入るぞー」

「「「どうぞ。」」」

縁は薄暗い部屋に入っていく。

「反省中だろうが、食えるものは食っとけってさ!師匠は優しいよね、ほんと。」

「ひと瓶ずつだけだが、白酒も持ってきたぞ。」

ユエとヤオが声をかける。

「え?我々に?良いのですか?」

ガロンが縁に恐る恐る聞く。

「かまわないさ。婆様も無礼講だと言っていたからな。まぁ、謹慎中だから他の連中みたいにどんちゃん騒ぎとはいかないが、そのお重に詰められるだけ詰めてきたから食っとけ。」

縁は笑顔でお重を渡す。

「うっわ何だこのいい匂い…脳がバカになる」

キースがヨダレを垂らして言う。

「ありがとうございます。こんな僕らを気にかけてくださって…ほらキース、ヨダレ垂れてるよ。」

ヤンガが礼を述べる。

「ヤンガ、そんな卑屈になるな。大丈夫だから。ま、ちゃんと食って空っぽにしろよ〜」

と言って、ヤオとユエを連れて部屋を後にした。

「さて、次は蓮藕排骨湯を食べてこようかな!エビマヨもまだだし!チャーハンも食べたいし!」

縁はビールジョッキをまた空にして、スキップで宴会場に向かった。

その後ろ姿を見てユエとヤオは、

…器の大きさって、こういうところなんだろうね〜。…

…どうやったらこんな人になるか、予想もつかない。…

思考共有で伝えあった。



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