第24話ー鉄拳制裁ー
ヤオとユエは縁からの通達により、それぞれ結界の中心地である装置の場所に向かっていた。
「ユエ!」
初めに声を上げたのはヤオ。
「ヤオ!」
それに気づいたユエが嬉声をあげた。
「よし、穢れを探知して叩こう。」
ヤオが提案する。ユエは早速気配探知をおこなう。すると、結界の西の方で何やら、"気に障る"気配がある。ユエは首を捻ったが、
「穢れというより、それより小さなものだけど、西の方に3人分何かある。とにかく行ってみよう。」
とだけ言い、走り出した。民家の扉の隙間から、住民の不安そうな視線が刺さる。ヤオとユエはよりスピードを上げた。
西側の竹林でヤオとユエは出会った。瘴気を放つ3人組、ガロン、キース、ヤンガである。
「あんたたち!なにをしている!というか何されてんだバカ!」
ユエのイライラした声が辺りに響く。
「まさか護衛部隊長の息子がここで操られているとは。ガロが聞いたら血を吐くぞ。」
呆れた様子のヤオ。それを聞いて3人は、
「お前らのせいだ!陰陽の化身なとどともてはやされる人生は、さぞかし気分がいいだろうなぁ。俺だってお前らが封印されていたあいだ、鍛錬に励んだんだ。今回は外の守りから外れろだァ?バカにしやがって!!!」
「お前ら調子乗ってんだよ。陰陽の化身だぁ?そんなの適当に因縁つけただけじゃねえかよ。ちょっとつえーぐらいで調子に乗りやがって。」
「このバカどもと一緒にされる僕の気持ちがわかるか?突出した陰陽の力を持つものと、比べられる俺たちの世代の気持ちが、おまえらにわかるか!」
と口々に叫んだ。
ヤオとユエは思考共有で、
…なんかこれ、思ってたのと違うぞ??魔族側がなんかしたんだよな?…
…私も思った。なんか、魔族っぽい邪気がないというか、ただの僻みだよね。…
と困って顔を見合わせる。そこに、
…おふたりともーすみませぬ。魔族の呪禁は私が解除しましたです。ただ、本人の志向に合わせた、強い暗示がかかっているため、ひとつ、ヤオ様とユエ様で鉄拳制裁をして頂きたく!まぁバカは叩いた方が早く治りますので〜!…
と稲ちゃんから思考共有がはいった。
「はぁぁ?!だっるぅ〜。そういうことかよ。」
ユエは額に手を当てる。ヤオに至っては、
「とにかく1回気を失わせたら大丈夫そうだな。サクッと行くぞ!」
と屈伸と伸びをしている。
「おらぁかかってこいやぁ!!!」
キースが叫ぶ。
「言われずとも!」
瞬きの間にキースの懐に入り、みぞおちに1発。
「ごふぅ!!!」
「はい、1人。」
「見くびるなよ。ヤオ。」
長剣を構えたガロンがヤオと正対する。
「あんた、あたしを無視するっていい度胸ね。」
ヤオの背後から両手に暗器を持ったユエが跳躍し、長剣を受け止める。そして、
「陰気逆流」
自身の膨大な陰の気を逆流させ、耐性のないガロンの意識が吹っ飛ぶ。
「「残りは…」」
ヤオとユエが見つめる先。
額に脂汗をかいたヤンガは必死で唱える。
「我、混沌の蛇。我が名において、命ずる。竹林よ我が命に従え。」
突如竹林がうねりだし、ヤオとユエの足を竹の根が拘束する。
「ほぅ中規模魔法を用意していたか。」
ヤオが目を見張る。ヤオとユエは拘束されているが、別に逃げようと思えば1歩踏み出せば逃げ出せる。ただヤオとユエは、ヤンガがこの2人に着いてきたことが気になるのだ。
「ヤンガ、聡明なお前がなぜこの馬鹿どもど共謀した。叡智ある流浪の魔術師の子であるお前は、誰よりも優秀だ。」
ユエが尋ねる。ヤンガは口を固く結ぶと、
「俺は純血の蛟ではない。そう蔑まれてきた。この里は血統こそが絶対。こいつらにどれだけ苦しい思いをさせられてきたか…」
低く唸るように話した。
「ヤンガ。お前は神に誓って蛟だ。人と交わってもお前の母はちゃんとお前が蛟であるように定めた。現にお前は長く生き、蛇体化できるし、父の叡智を受け継いでいる。」
ヤオは真剣な顔をして説く。
しかし…
「それでも!俺はここで力を示さなければならない!ーー竹葉よ、千の万の刃となりてこのものらを肉片とかえよ!竹葉刃嵐!」
追い詰められたヤンガは大規模魔法に移行する。ヤオとユエは声を合わせる。
「陽気・南風迅」
「陰気・凩の渦」
2人の陰陽の気は全てを相殺し、ヤンガを吹っ飛ばした。
問題児3人組はこれで全員気絶した。
「え?私たちこれ持って帰らなきゃダメ?」
心の底からウザそうにユエが聞く。
「んー。私も遠慮したい。こういう時は、師匠だな!」
東をむくと朝日が射してくる。
…師匠、終わりました。このバカども3人を運びたいので誰かよこしてくれませんか?…
ヤオが縁に思考共有をする。
…遅かったな。私はキュレーにまんまと逃げられたよ。そちらには白曜と黒曜を向かわせよう。…
縁は若干疲れたような声色で返答する。
…さようですか。では、処罰の件もありますので、後ほどこのバカ3人と東の村の入口に向かいます。…
ヤオは素直に答えた。
「キュレーって副官だったよね。逃がしたの、絶対わざとだよね…師匠の考えそうなことだもん。」
思考共有を聞いていたユエは、ヤオに語りかける。
「で、あろうな。なにかしら手を打って逃がしたんだろう。ま、もう当分は魔族に怯える心配は無いだろうさ。」
ヤオは倒れた竹に腰を下ろして言った。
「朝日だね。」
ユエがぽつりという。
「長い…夜だったな。」
ヤオがこたえる。2人は拳を合わせて、グータッチをした。




