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双蛇ノ縁ーソウダノエニシー  作者: 環林檎


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第2話ー夜明けと共に、まずは朝食ー

なれない作業で遅れました〜

なるべく18:00更新に努めます!

よろしくお願いします。

半壊した廟には薄く朝靄が漂う。 昨夜の戦いで乱れた廟は様々なものが砕かれ、ヒビが入っている。早朝の冷気が外の清しい気を運んでくる。

焚き火に当たっている縁の黒曜石のような瞳が、薄明の光を映す。透き通るような白い肌。ひっ詰め髪は腰まで流れ、夜の闇をそのまま溶かしたようで、戦闘の激しさを微塵も感じさせず、血赤珊瑚の簪がよくはえていた。紺色の袖を無造作にまくり、手際よくきのこシチューをかき混ぜる。妙に静謐な時間だった。


「……ふぅ、冷たい」

空気から水を実体化させ、顔を洗ったヤオがしぶきを払う。 白地に銀の刺繍のゆったりとした衣は、土埃に汚れ、釈迦釦が取れかけ裾が所々裂けている。 ユエはといえば、発育の良い体に墨色の薄衣まとい、長い髪を弄びながら欠伸を噛み殺していた。

「おい、もう飯か?」

「もう少しでできる」

縁は鍋を覗き込み、匙できのこシチューをひとすくい味見する。 食欲をそそる暖かい匂いが満ちている。濃厚なミルクの香り。その横顔を、ヤオとユエは並んでじっと見つめていた。

「さてみんな、お待ちかねの朝ごはんだ!黒曜と白曜、ヤオとユエはこのチー牛のブロック肉食べていいぞ。私の分は今から焼くから。」

縁はそれぞれに木製の器とスプーンを渡した。ウスハとアオイには、それぞれ美しい模様の陶器にとろりとしたハスの蜜が入れられた。稲ちゃんは蓮の実がお気に入りのようだ。

「馳走になる。」

ヤオが慇懃に礼を言った。

「いいんだ。2人には私がどうしてここに来たか、私がどうして2人の陰陽の気の乱れを制することができるのか、説明を聞いてもらわなきゃならない。2人が廟でいつから一体どうしていたのかも知りたいんだ。」

縁は言った。

「ご飯とかいつぶりか忘れちゃったよ〜。しかも洋食とか感激…肉も最高!あつっつ!」

ユエはそれどころではないようだ。


縁は自分の分のきのこシチューを口にした。我ながら、絶品である。マッシュルームにしめじ、舞茸、ヒラタケ、ブラッディボアの肉の旨味、そして良質な牛乳とチーズを使用し、よく煮込まれたシチューはまさに天才的な出来ばえだと自画自賛する。良質な食材の香り。コツはメイクイーンと男爵両方使うことで、食べ応えを出すことだ。後は企業秘密。

「「美味しい!!」」

ヤオとユエの声が揃った。きのこシチューは気に入って貰えたようだ。


「気に入って貰えたようで何より。食べながらでなんだが、改めて自己紹介だ。滝野縁、極東日本、倭国から陰陽の乱れの震源をたどって来た。剣士であり術師でもある。まずはよろしく」

「私はヤオ。一族のものには陽の気の化身とされてきた。私とユエは同じ里の出身で、この廟には封印されていた。」

「私は陰の化身とされていた。陰陽は対だから、共に封印された。」

ユエはチー牛にかじりつきながら答えた。自然と笑みがこぼれている。

「そうか、封印されたのは一体どれくらい前なんだ?この廟はかなり古いし、様々な様式の術が使われているが…統合暦はわかるか?」

「統合歴か。混沌の夜明け…ダウンオブカオス以降数百年後から始まったんだよな。確か。我らが封印されたのは統合暦4533年9月9日だったと記憶している。」

「そうそう!重陽の日だった。」

「なるほど。今日は5033年9月9日だ。ちょうど重陽の節句だな。」

ヤオとユエが封じられて500年。そして封じられた日も同じ。偶然とは思えない重なり。


「お前たちは、500歳以上ということか。やはり、蛇と言うよりか蛟だな。」

「そうだな。我らは蛟に相違ない。昨夜、貴様に襲いかかった時は、封印される前と持てる力が違っていた」

「そうなんだよねぇ〜。力がありあまっちゃって使いにくかった!」

「そういえば貴様、我らの力の乱れをどうやって鎮ている?!」

「それは、私の血液を結晶化させて2人にペンダントとしてつけてもらっている。胸元を見てみな。」

2人が胸元を見ると赤いペンダントが輝いていた。

「私が2人の不規則に溢れる力を空間術式の中に溜め込んで循環させているんだ。だが、これだけでは今後予想される更なる力の乱れには対応できない。」

2人は項垂れる。それもそうだろう。長く生きれば昇龍することもある蛟の一族にあって、陰陽の気を制御できなかったのは悔しいに違いない。縁は言った。


「ヤオ、ユエ。よく聞いて欲しい。2人の陰陽の気の乱れは日本まで伝わってきた。それ程までに異質で規模も大きいんだ。もちろん大陸にも大きく伝播しているだろう。お前たちの力を悪用する輩だっているし、それに先んじて私がお前たちに会えたのは奇跡に等しい。」

「それで縁は私たちをどうしたいの?」

「まずはお前たちの生まれた一族の拠点に用事がある。そこである術式を試したい。そうすればもっと陰陽の気を安定させることができるだろう。そして、2人には私に付き従い、自分たち自身で陰陽の気を制御できるようになってもらいたい。何しろ今制御ができるのは、現時点では私だけだ。もちろん、まだ会って数時間。信用出来ないのもわかるし、流石に私を師として仰げとは言わないから。」

「わかった。私は貴様、いや、縁を師としてむかえたい。昨晩の戦闘では全く歯が立たなかった。それに戦いにはそのものの性が現れる。私は縁には悪意がないことが分かる。」

「…わたしも縁の弟子になりたいかな。色んな技を習いたいし、何より私たちの陰陽の乱れは、私たちが思ったより深刻そうだから。それに信頼の件はヤオと以下同文!」

「お前たち、いいのか?いきなり師だなんて決めてしまって。2人の故郷に行ってその間に私の人となりを知ってからでも構わないだろうに。」

「「かまわない!」」

2人の声はピッタリ揃った。

縁はしばし考えた後、答えた。

「ならば決まりだ。では今後師匠と呼ぶように頼む。黒曜、白曜、その他のものも異論は無いな?」

「「「「「主の仰せのままに」」」」」

「では、各々、しっかり食べ尽くすように。お残しは厳禁。これは決まりだからね!」



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