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双蛇ノ縁ーソウダノエニシー  作者: 環林檎


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第16話ー産土神ー

縁は石灰を使って大楠を起点として縁を描いていく。頭の中には術式の図が構築されていく。

ー呪符は4枚、予備は7枚あるが、呪符を5枚で五角形に変更。五行結界を応用した方が良さそうだ。後は、幣串(へいぐし)か、、、特上の幣串がちょうど10ある。大楠の祠に2つ建てて神性を底上げして差し上げよう。ー

縁は普通の陰陽道も修めているが、土佐いざなぎ流陰陽道という特殊なものも修めている。そこで多用されるのが、"幣串(へいぐし)"と言われる和紙で作られた魔除の呪具だ。

里の者に、魔除になる笹竹を切ってきてもらい、五角形のそれぞれの角に刺す。そしてそこに符をしっかりと貼り付ける。緑黄赤白紫の、色とりどりの和紙を使った幣串が古びた祠と少しチグハグさを醸し出していた。周囲に松明がたかれ、周囲に異常な空気感が漂う。


ヤオとユエは少しの時間の間に、自分の両親に会っていたようだ。その身を白装束でかためている。

「縁様…この度は我が子らを助けて下さりなんとお礼を申し上げたらよろしいか…。日ノ本の帝にもなんと申し上げたらよろしいものか…。」

ヤオとよく似た銀髪の女性が声をかける。

「ヤオのお母君か。よく似ておられる。申し訳ないが、まだこれから一山ありますから、息子の身をどうか祈ってあげてくださいませ。」

ヤオの母親の目には光るものがある。それもそうだろう。産まれたときから異質で、封印せざるを得なかった我が子。やっと再会できたと思っても、苦難が続いているのだ。

「ユエがお世話になりまして。自由な子で困りませんでしたか?本当にフラフラした子で…。」

と、気弱そうな声で話しかけてきたのは、黒髪の男性だ。漆黒の黒い瞳がユエと瓜二つ。だが随分と性格が違うようだ。

「ユエの父君であられたか。ユエは良いムードメーカーですよ。才能も溢れております。此度もどうぞ、信じてあげてください。」

縁は笑顔で励ます。

2人の親達はそれぞれの連れ合いと手を繋ぎ、子供の方を抱き、縁に縋るような目を向けている。婆様が縁をまっすぐと見つめる。


…縁の心は決まった。

「これより、ヤオ、ユエの封印術を開始する。ヤオとユエは魔法陣の中心に、大楠が頭の上に来るように横になりなさい。目をつぶり、心を平静に、何も考えないように務めなさい。他の里のものは土地神に祈りを。この2人を助けてくださいと願ってくれると嬉しい。」

縁は大楠と向かい合う位置に座る。そこには長方形に、笹竹と呪符を配置している(短辺に1本の笹竹に、1枚の呪符といった具合だ)。

縁は呪文を唱え始めた。力強く、魔力に満ちた声だ。

「かしこみかしこみ申す。…この地に古くおわす、いと高き尊き神よ、我が声にお答えくださいませ。この地より生まれし、この地の子らに災いがございます。この子らの力、この子ら自身で鎮める力をくださいますように、伏して願い奉りまする。現れいでて、我に力をお貸しください。」

縁は頭を地につけ願う。魔力が魔法陣を何度か巡った時、大楠の祠から木でできた小人がトコトコと歩いてきた。周囲から、

「「おおぉ」」

とどよめきが起こる。

「大楠どの、手伝ってくださいまするか?」

縁は笑顔を浮かべた。大楠の精は、両手を広げた。そこにサラサラと細かい土が集まっていく。

ー産土だー

縁は儀式が軌道に乗ったことを確信した。大楠の精は集まった産土を、ヤオとユエの上に円上に浮遊させた。縁も魔力を流してそれを助ける。産土は少しずつ2人に吸収されていく。大楠が微かに緑に発光している。産土が微かに黄色い光を発している。縁の魔力が紫色に発光している。3つの微光が、少しずつ2人の体に取り込まれていく。周囲からは物音1つきこえない。誰もが息を詰め、ことの成り行きを見守っている。

産土は全てヤオとユエに取り込まれた。縁は、

「いと高き尊き土地の神よ、誉れ高き大楠の精よ、お力をおかしいただき、伏して御礼申し上げる。これからもこの土地のものは御身を尊び、崇拝し、守りゆくことをお誓いいたします。」

深々と額をつけ礼を伝えた。大楠の精は振り返りざまに手を振り、祠に帰っていった。

あたりは静けさに包まれた。


『パンッパンッ』


縁は柏手を打つ。

「悠淵の皆様、儀式はつつがなく終了いたしました。ご協力感謝申し上げます。」

縁は深々と頭を下げた。ヤオとユエもなんだかよく分からない顔をして、縁に並び、深く礼をした。

「「「おおおおおーー!!!」」」

里の人々は大きな声を上げ、ヤオとユエの両親は涙を流して抱き合っている。

縁は額の汗を袖で拭い、

「何とか上手くいった〜」

と腰を落とした。

「なんだか体がポカポカする。」

ユエは手をにぎにぎしながら言う。

「私もだ。なにか、胸の奥に火が灯ったような感じだ。」

ヤオも手のひらを見つめて不思議そうだ。

「これで全力を出しても、2人の陰陽の力が暴れるといったことは無い。陰陽の乱れをたどられて、面倒なことになることもない。これでどんどん修行ができるな!」

縁はニヤニヤしながら言った。

「師匠〜過激な修行はちょっと…。」

ユエが遠慮がちに言う。ヤオは、

「やる気はありますが、死ぬ気はありませんので!」

と、慌てている。

縁は、

「あははははは!2人ともなんともなさそうでよかった!。両親と話してこい!」

と笑って、2人の肩を叩いた。そしてスっと笑顔をひき、婆様の方へ向かった。

「協力のおかげで無事済んだ。後は魔族の襲撃を撃破するだけだ。苦労をかけるな。」

縁はやれやれと言った様子だ。

「さすがは縁様。完璧な封印術でございました。ここは我ら悠淵の蛟一族の地。汚すものは容赦はせぬ。縁様、力をお貸しください。」

婆様は頭を下げた。

「娘々、すまないな。色々と面倒事を持ち込んで。これからが勝負だ!」

縁は冷静に敵を見つめていた。



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