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双蛇ノ縁ーソウダノエニシー  作者: 環林檎


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第11話ー一瞬の攻防、強者の威厳ー

縁達は広場の石に腰掛けた。縁は、

「緊張するなと言っても無駄だろうが、手足が硬直するようでは困るからな。廟で動いたぐらいの動きはできるよな?」

水筒のお茶を飲みながら聞く。

「大丈夫だ。あの時よりコンディションは断然いい。戦闘になったら充分に動ける。」

「私も余裕だよ。でも同郷の者を殺すのは、少し躊躇いがある。」

2人はそれぞれ答えた。

「悠淵の産土神を使いたいんだ、殺しはしないさ。オイタが過ぎると、ちょっとお灸を据えるけどな。」

縁は笑みを浮かべて言った。


そこに馬の蹄の音が聞こえてくる。

ーおいでなすった。ー

屈強な男が3人馬に乗って、一行の前に躍り出る。

「いやはや、お急ぎのご様子で。一緒に少し、一服いかがか?」

縁は笑みを浮かべて話しかける。それに馬上から1番屈強な男が答える。

「封印を破りし者どもよ!

ヤオとユエは拘束して今一度封印する。見知らぬ女、お前は悠淵の敵として抹殺する!……名乗る必要はない、貴様に教える名など無いわ!」

ユエはクスッと笑い、

「ふぅん、かっこつけるのは勝手だけどさ……。でも、あんたら程度なら名前ぐらい伝えといた方が身のためだよ? だって、負けたあと“無名の三人組”で終わるなんて、屈辱以外の何物でもないでしょ。歴史に残らず、ただ雑魚として忘れられるんだから。」

ヤオは吹き出し、

「確かに。無名の三人組……せめて墓碑銘ぐらい残したらどうだ?」

とからかった。

「ヤオ、ユエ、護衛部隊最強のガロ様の名を忘れたか?!お前たちの隣の女の死は確実なんだぞ!!」

隣の弓を背負った男が言う。

「覚えてますとも。副隊長のミロ様、それとロル様。この女性は私共が師匠としたお方。勝手に殺そうなどとされては困ります。」

ヤオが冷静に答える。

「陰陽の蛟が人間ごときを師匠とするだと?!このふんぱんものが!」

ロルと呼ばれた男が答える。

…んー戦闘になりそうだけど、冒険者カード見せて相手納得しないかな?…

縁は思考共有で2人に聞く。

…師匠!!この3人組は封印前から危険分子として、私たちを殺そうとしてた。今の私達は負けたりしないけど、確実に戦闘になる!…

ユエが答える。

馬から降りた3人は、三方から縁たちを取り囲み、鋭い殺気をぶつけてきた。

しかし、当の縁は散歩にでも出かけるような様子だ。

…おお、じゃあちょうどいいな。ヤオ、ユエ、今日は戦闘での連携の鍛錬だ。しっかり着いてこい!…

思考共有で2人に呼びかける。

……はぁぁぁぁぁ!?!?……

ユエは頭を抱え、ヤオ遠い目をしている。

縁は二人の狼狽をよそに、ニコニコ笑いながら肩をすくめ、

「強い相手の方が成長が早いもんだろ? なぁに、ちょっとした体験学習だよ。」

と口に出す。

「「体験学習ってレベルじゃねぇ!!!」」

ヤオとユエはガチめに突っ込んだ。

…戦闘行動開始。目標は、3人の拘束。決して致命傷は与えないように気をつけること。その代わり、どんな手を使っても構わない。いいな。…

……了解!!……

思考共有で3人は目的を確認する。

初めに動いたのはユエだった。

「シャドウ・ガーデン」

辺り一帯を黒い霧が覆う。視界が覆われる。しかし、縁達には気配探知がある。

ミロは何時でも矢を放てるように気を張りつめる。視界の真横に、白銀の髪が見えたと思った瞬間矢を放つが、頭を強打された。何とか意識は保っているのは、悠淵の里の精鋭と言われる由縁だろう。

「はっ!!」

しかしみぞおちに食い込むヤオの拳で、あっさり意識を手放してしまった。

ユエは、

「アハハハハハ!アハ!」

故意に笑いながら、気配に緩急をつけてガロとロルと撹乱する。

ガロは歴戦の猛者らしく、泰然自若として動かない。縁はその中で気配を限界まで消し、ガロの首元に何時でも鞘を抜ける状態で肥前忠広を当てた。

「はっ!」

ガロは反射的に縁の頭を掴もうもした。しかし…

突如縁から強烈な殺気が放たれる。ただびとなら失神するかのような、濃厚で濃密な殺気。

「死にたいか?生きたいか?」

半ば呆然としているガロに縁は軽い口調で問う。ガロは少しも動けない。

「霊子縄索。」

縁はガロを縛った。

ユエと言えば、突如として放たれた圧倒的な殺気に鳥肌を立て、

…しーしょーおー、勘弁してよぉ。…

と半泣きになる。それから縁の殺気にあてられた、ロルの背後にまわこんだ。更にこれ幸いにと新技を試す。

…魔力を極限まで細くして、繊維にするつもりで…

「霊子縄索!」

見よう見まねで縁の霊子縄索を会得したのだった。

ユエがシャドウ・ガーデンを解くと、そこには意識をなくしたミロと、霊子縄索で縛られたガロとロルの姿があった。

「ユエ!すごいじゃないか!霊子縄索を使えるようになってる!ヤオもちゃんと殺さずに仕留めて偉いぞ〜。」

縁は2人の頭をよしよしする。

「師匠、やめてよぉ。子供じゃないんだから。」

ユエがむくれる。

「いいや、私からすれば2人ともまだまだ子供だよ。」

縁はニシシと笑う。

「ええぇ…一体師匠って何歳なんですか?」

ヤオが不思議そうに聞く。そうすると、ゴンッと音が響き、ヤオがうずくまった。

「レディに歳を聞くなんて野暮な男だね!全く。」

縁は憤慨している。

…理不尽だ。…

ヤオは思った。

ミロも霊子縄索で縛り、縁はガロに語りかける。

「私はね、この子達の師匠になった縁というものさ。ガロと言ったか。封印がとかれたから再封印するというのはわかる。だが、あれだけの封印式を組み込んだものを破壊されて封印する術などあるのか?」

「…ないかもしれない。ただ、婆様が連れてこいと仰っていた。ならば再封印するのだと思ったのだ!」

「あんた、随分短絡的な思考だね。封印の廟の術式は現在ある封印式のほぼ全てを網羅していた。これ以上が可能だと?まぁいい。このふたりの力の流れをよく見ろ。」

「もちろん乱れが無くなっているとも。それが婆様が、おかしいと言われる理由なのだ。」

「そこに私の関与を考えないのか?お前ら。」

「なに?!」

ガロは改めて縁を見つめる。一気に冷静になったようだ。

「冒険者カードはもっているか?」

ガロは落ち着いた様子で縁に問う。

「よーーーくみろ。」

縁はランクの隠蔽を取り払い、ガロにみせた。

「SSSrank、ENISHI TAKINOだと…?No.5、グリードの縁…?貴方様が?」

「そうだよ。強欲の縁とかグリードとか呼ばれてるけど、対して欲深くはねーよ。全く。」

縁は深いため息を吐く。

「スリーSであり、ナンバーズの貴方様であれば、陰陽の力を制御できるのかもしれない。お見逸れいたしました。ご無礼をお許しください。」

態度が180度変わる。”グリード”という2つ名に疑問を抱くヤオとユエに、

…後で話すから。…

と思念を送る。

「とにかく、悠淵の使者達よ、私たちと敵対する意思はもうないとみなしてよいか?」

目を覚ましたミロは全く状況が飲み込めていない様子だが、隊長のガロは、

「数々のご無礼、大変申し訳なかった。我々は敵対する意思はない。縁殿に従おう。」

と頭を深く下げた。

「戦闘行動解除。私はガロ殿の謝罪を受け入れよう。ヤオとユエも良いな?」

「私たちは師匠に従う。」

ユエは答え、ヤオは頷いた。霊子縄索が解かれる。


「ただし、ガロ殿達3名は過去この2人を殺害しようとしたと聞いた。よって私の使役をつける。白曜、黒曜ここに。」

「「はっ。」」

ーこの使役獣は只者では無い…ー

ガロたちの背筋に汗が伝う。黒い方の狼らしき使役獣が言う。

「また長虫か。余計なことをしたら即座に咬み殺す。主様に迷惑をかけるでないぞ。」

ー"狼"?これは"狼"なのか?まるでフェンリル…ー

ガロたちは瞠目する。

「しかと、心得ました。」

そう答えるしか無かった。


「さて、ガロ殿、ざっくりと説明する。今、ヤオとユエの陰陽の力は私の血でできたペンダントを介し、空間魔術で循環させている。そのため暴走していない。しかし今後を見据えると、これだけでは足りない。単刀直入に言う。悠淵まで案内して欲しい。悠淵の里の神、土地神である産土神の力が必要だ。協力を頼めるか?」

縁はガロに尋ねた。

「もちろん、悠淵の里まで案内させてもらう。ただ土地神については、護衛部隊の我には分からぬ。婆様に聞かねば。それでもよろしいか?」

ガロはヤオとユエを1度見つめ、縁に面と向かって答えた。

「かまわない。どの道、里の長老には話を通さなければならないことだ。では、ここからは共に悠淵を目指すということで決まりだな。」

縁は満足気に腕を組んだ。


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