表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
双蛇ノ縁ーソウダノエニシー  作者: 環林檎


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

10/62

第10話ー同郷のもの達への不安ー

見張りの最後の2時間は、ヤオとユエの担当だ。コーヒーを飲みながら、2人は気合を入れて気配探知を行う。早くから小鳥が餌を啄み、せせらぎが感じられる。ヤオとユエにとっては、これはまだ慣れない作業だった。しかし、自然にとっていかに自分たちが矮小な存在であるか、というようなことを感じていた。と同時に、その自然界に幅広く影響を及ぼす自分たちの陰陽の力について、各々考えをめぐらせてもいた。

ー私は陽の化身として存在している。卵で生まれた時から、白い光を放ち父母は大変驚いたという。産まれては、度々ボヤ騒ぎを起こした。それは陽の火の力を制御できないからだと、お婆は言っていた…。悠淵に行って我らはどのような扱いを受けるのか…。ー

ヤオは痛い頭を氷嚢で冷やしながら考える。

ー私は陰の化身として産まれたけど、今悠淵に行ってどんなことになるのかな?卵の時には黒い光を放っていたと言うし、時々家を氷漬けにして母様を困らせていたっけ…。お婆は陰の水の力が制御できていないということだったけど…500年封印されていてどう周りと接すればいいんだか…。ー

ユエも考えることは同じ。

2人とも悩みは同じく、500年封印され、里のものとどう接すれば良いかということだった。2人は全く同時にため息を着く。

「「はぁ〜。」」

はたと見つめ合う。そしてクスッと笑った。

「もしかしてユエも自分の力と悠淵のことについて考えていたか?」

ヤオが尋ねる。

「そうだね。500年ぶりだからどうしたらいいものやらって思ってたよ。」

ユエは肩を竦めて言った。焚き火に薪を足しながら、ヤオは項垂れて言う。

「師匠はその事も考えてくれているだろうか…。500年分のひらきは埋められない。師匠を頼らなければ自分自身で力も抑え込めない。そんな我らを悠淵のもの達はどう思うか…。」

「大丈夫だよ。ヤオ。今日の朝は割と大丈夫そうだな。」

唐突に背中から声がした。

「し、師匠!気配探知には何も動きはありませんでしたが!?!」

ヤオが驚いて言う。

「空間魔術の応用だよ。ま、ちょっとこういうヤツもいるんだぞ、という勉強さ!そんなに居ないけどな〜。」

縁は笑って言った。ユエは、

「びっくりさせないでよぉ〜敵だったら1発で殺られてたよ。」

冷や汗をかいたようだ。そんなふたりに構わず、縁は、

「2人とも、朝ごはんは何が食べたい?大抵のものはあるぞ〜。」

ニコニコしながら、頭で空間魔術の収納を確認していた。

「師匠、よろしければ甘いものが食べたいです。その、私は甘党でして…。」

ヤオが遠慮がちに言う。

「見た目は辛口が好きそうなのに意外だよね〜。」

ユエはヤオの肩を小突いた。

「よっし!それならフレンチトーストにしよう!卵液に漬け込んだ食パンと、フランスパンがある!」

縁は早速準備に取り掛かる。バターを取り出し、フライパンを焚き火にセットする。

「メイプルシロップはありますか!!!?」

ヤオが前のめりになって聞いてくる。

「当たり前じゃないかワトソンくん!一番搾りから3番まで揃えてるよ。それにアオイとウスハがいるから、各種蜂蜜もたっぷりあるぞ〜。」

ヤオは感動した様子でガッツポーズを決めている。ユエもホヤホヤした顔になっている。使役獣達も匂いにつられて起きてきた。

「主様、今日はフレンチトーストでありますか。我はメープルシロップたっぷり目にかけてもらえると助かります。」

白曜が目をキラキラさせながら言う。

「もう、甘党なんだから。」

黒曜が茶化す。それを見たユエは、

「白曜様も甘党なんだってね。やっぱり似てるとこあるじゃん!」

とヤオを茶化した。

「なに!ヤオも甘党か!気が合うではないか!長虫!」

白曜はニヤニヤしながらヤオの腰を叩いた。

「いたたたたた!!痛いです!確かに白いもの同士甘いものが好きなのですね!」

ヤオはもう長虫と呼ばれることは無視することにしたようだ。愛想笑いで誤魔化す。

辺りに甘〜い香りが充満している。

「さあ!できたぞ!!!食パンとフランスパンの2種類のフレンチトーストだ!シロップは瓶にあるから好きにかけていいぞ!蜂蜜もな!」

縁がそれぞれ大皿にフレンチトーストを山盛りにして置いた。

芯まで卵液が染みたパンは柔らかく、もはやぷるぷるの感触。綺麗なこげ目に、茶色いメープルシロップをこれでもかとかける。フォークで口に入れた瞬間、パンがジュワッと弾けてシロップと絡み合う。

「美味い…。今まで食べた甘いものの中でいちばん美味い…。」

ヤオが感動の涙を浮かべている。

「ヤオ殿、主様の甘い物はもっと沢山種類がございますから、楽しみになさってくださいね。」

アオイがまたヤオを喜ばせることを言う。

「本当ですか?!これ以上に甘くて美味しいものが?!」

ヤオはもはや美丈夫のクールな感じを忘れている。ユエはやれやれと言った様子で、

「ヤオ、ステイだ。興奮しすぎ!私も気になるけど!」

声をかける。

「喜んでもらえて何よりだ。まだ甘いもののレパートリーはあるから楽しみにしておいてね!」

縁は満足そうな顔で笑った。

朝ごはんはあっという間に済んでしまい、少し休憩をとった。(ヤオとユエはそのまま出発まで仮眠をとった。)その後、縁は野営あとの隠蔽工作をした。

その時、縁はふと顔をあげた。

ー何かが近づいている気がする。ー

こういう時の勘は外れた試しがない。縁は半径50キロの大規模探知を行う。

ーいた。ー

直線距離にして38キロ。早駆けの馬5頭に、魔力のある人型の生き物が3名。あくまで人型であって、魔力量は人ではない。

ーこれは、蛟だ。悠淵のものか…。ここは2人に探知で発見させて経験を積ませるべきだ。早速出発だ。吉と出るか凶と出るか…。ー

縁は気を引き締めた。

「みんな!休憩終わり!出発だ。ヤオとユエはこのまま気配探知を続けるように。何かあったら即報告。魔物が多くなってくるだろうから、白曜と黒曜は臨戦態勢に。では、出発!」

縁はヤオとユエに気取られないよう、努めて笑顔で言った。

ヤオとユエは少しずつ、気配探知の距離を広げながら進んでいく。

「直線距離5キロにポイズンバッドが複数。」

ヤオが声を上げる。

「道からは外れているし、眠っている。攻撃する?しない?」

ユエは縁に問う。

「向こうから攻撃してこないならしなくていい。気をつけるべきなのは、ハチ系のモンスターだな。この時期は気が荒い。」

「「了解。」」

2人はさらに意識を集中させる。

しばらく進んだころ、

「馬らしきものが5頭、この魔力量は…人外です!」

ヤオが大声をあげる。

「よし。探知は成功したか。ならユエももうすぐだな。」

「師匠。これは!蛟です。悠淵のもの達です!」

ユエも大声をあげる。

「そうだな、2人とも良く成長した。正解だ。もう少し先に進んだところに広場がある。そこで悠淵の使者を迎えよう。」

ヤオとユエは呆気にとられる。

「知っていたのですか?」

「え、いつから…?」

2人の疑問に縁は、

「朝からだよ。妙な勘が働いてね。大規模探知を仕掛けたら、近づいてきていた。さ、2人とも気を引き締めろ。同郷のものとはいえどう出てくるかわからん。」

あっさりと答え先にすすんだ。

ーええい、どうにでもなれ。ー

2人は己の師匠を信じるしか無かった。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ