第5話:突撃!自称プロゲーマー、パンイチでボスを殴る
──というわけで、今、俺たちは初心者向けの中ボスがいる「ゴブリンのすみか」の前にいる。
カイト(ラグ持ちの無敵少年)
ユイ(弓スナイプが上手い幼馴染)
そして
だいちゃん(パンイチの自称プロゲーマー)
「準備はいいかい?君たち」
「お前だけ準備が薄すぎるんだよ」
「むしろ軽装だから準備は万端ってことさ。あえてね?」
だいちゃんはすでに戦闘態勢(パンツ一丁)で、やたら自信満々だ。
「それに、俺ってば“プロ”だから。
こう見えて初見でも敵の挙動パターンを3秒で解析できる男だよ?」
「じゃあ一瞬で終わるんですね。期待してます、プロ」
ユイの棒読みが光る。
「よーし、じゃ突入っと――」
パーティで扉を開けると、洞窟の中には巨大なゴブリンが待っていた。
身長2m、でかいこん棒を持ってうなる姿は、初心者にはなかなかの迫力。
「来るぞ!」
「了解!」
俺とユイが武器を構える中――
「おりゃああああああ!!!」
突撃したのは、だいちゃんだった。
素手で。
「待て待て待て待て!!お前なに武器持ってないの!?」
「いらん!プロは素手で十分だ!!」
「プロの定義が迷子すぎる!!」
しかもその素手がなかなか当たらない。ゴブリンの攻撃をかわしきれず、あっという間にピンチに。
「ぐはっ!痛って!なんだこのモーション、初動が速えな!え?スタン?おい!?マジで!?」
「あーもう……仕方ない、俺が行くわ」
そう思った瞬間──
*接続中……
画面の端に、いつものあれが出た。
(あ、ラグったなこれ)
この瞬間、俺は“接続中状態”──無敵モードに入る。
だいちゃんに向かって振り下ろされたゴブリンのこん棒を、
俺は無表情のまま、片手で受け止めた。
「うお!?え、カイト!?お前、さっきまで普通にヘタレだったよな!?なんでいきなり超人化してんの!?」
「え?いや、まぁ……気合?」
「気合で物理を受け止めるなよ!?ゴブリンの顔が『えっ』ってなってるぞ!!」
そのまま俺は、ゴブリンをぶん投げて壁に叩きつけた。
大ダメージ。
ユイがすかさず追撃で矢を撃ち込む。
「はい、フィニッシュ」
*ボスを撃破しました。
*報酬:初心者用ゴブリン装備、経験値+200、パンツ耐久値+1
「……パンツにも耐久あるのかよ」
だいちゃんは、自分のパンツをなでながら呟いた。
「いやぁ、助かったよ。さすがだねカイトくん。
君、ひょっとして隠し職とか……?」
「え、まぁ、ちょっと“島特有の電波スキル”で……」
「電波って言うな!!」
「いやでもホント、君みたいなのがいれば百人力だよ。俺はパンツ一丁で戦術担当、君が火力、ユイちゃんが遠距離ってことでバランスいいし!」
「……バランス、いいのかな?」
俺たちは、なぜかだいちゃんが一番ご満悦な様子を横目に、
報酬アイテムを整理しつつ、次の目的地へと向かうのだった。