第4話:パンイチ爆誕!ヤバいやつ、初対面
初心者ダンジョン「スライムのねぐら」を無事クリアした俺とユイは、街“ラグモール”の広場でひと休みしていた。
武器屋に防具屋、スキルショップ、そしてやたらリアルなパン屋。
まるで現実世界の商店街みたいな空気感があった。
「次は何しよっかー。もうちょい装備整えて中級ダンジョン?」
「うーん、そうだね。でも、あんまり詰めすぎると疲れそう……」
そのとき、広場に響き渡った謎の絶叫。
「よっしゃああああ!!!ついにログインきたああああ!!」
俺とユイが同時にそっちを見ると、
パンツ一丁の男が、ガッツポーズしていた。
「……え?」
「え?」
男は、満面の笑みで回りを見渡すと、感極まったように叫んだ。
「グラフィック最高!!風も、匂いも、現実そっくり!!そして……俺の美学がここに完成した!!!」
「なんでパンツ一丁なのに美学って言えるの……?」
「いや、むしろ選んでやってる感ある……」
俺たちは徐々に後ずさりしたが、男はこちらに気づいてにっこり微笑んできた。
「おっ、そこの君たち!初心者?それとも中堅くらい?いいねえ、楽しそうだ!」
「え……あ、あの……初対面ですけど……?」
「うん、初対面だね!!俺は“Dai_chan_Pro”!リアルでもプロ、ゲームでもプロ!見ての通り、装備は“最小限”。
必要なのは、技術と、風通し!!」
「風通しじゃねえよ!!服着ろよ!!」
「いや、服着ないことでね、防具の動き制限がゼロになるんだよ。つまり理論上、最速なんだよね」
「……そういうバグ的思考って、どうやって育つの……?」
ユイが本気でドン引きしてた。
島で育った女子高生、こういうタイプと接した経験ゼロだ。
「それで? 君たち、今パーティ募集中だったりする?いや、違っても関係ないんだけど、俺、今ヒマなんだよね!」
「自己中心的すぎて清々しいなおい……」
「まあまあ、戦力にはなるよ?俺、昔のMMOでギルドリーダーやってたし、**PvPで課金勢に勝ったこともあるし、あと“イベントの最中にNPC拐った”って言われてバンされたこともあるし――」
「――あ、ごめんそれは言わない方がよかった」
「なにひとつ信頼できる要素がない!!」
にもかかわらず、だいちゃんは当然のように俺たちの前に立ち、手を差し伸べた。
「ま、一期一会だ。ラグもバグも、楽しんだもん勝ち!一緒に行こうぜ、次のボス戦!」
*システムメッセージ:
プレイヤー“Dai_chan_Pro”がパーティに参加しました。
現在のパーティ:カイト、ユイ、だいちゃん(パンイチ)
ユイはこめかみを押さえてつぶやいた。
「……カイト。これ、次の街着いたらパーティ抜けさせようね?」
「うん、たぶん俺より回線早いけど、脳がラグってる気がする」
だが、このパンイチ男が、のちに**“装備ゼロで世界最速タイム”を叩き出す奇跡の戦法を発明する**とは、
このとき誰も想像していなかった――