第3話:初心者ダンジョンで再会トーク!ラグっても気にすんな!
「で、ここが“スライムのねぐら”ダンジョンね」
「めっちゃぬるそうな名前だな」
ユイに連れられて、俺たちは初心者向けのダンジョンに入った。
“ねぐら”という名の通り、モンスターはスライムばっか。
でも、なめてかかると普通に囲まれるらしい。気を抜くと死ぬ、そんな塩梅。
「まあ、今のうちに色々慣れなさいよ」
「わかったわかった。てか、ユイも忙しいだろ?進学校だっけ」
「うん、まあ。勉強とバイトとサークルとゲームで生きてる」
「それ忙しいのか元気なのかよく分かんねーな」
俺は剣をぶんぶん振り回しながら、ぴょこぴょこ跳ねてくるスライムに対処する。
ユイは弓で的確にフォローしてくれるから、安心感がすごい。
「でもすごいなぁ、ちゃんと都会行って、そういう生活してるの」
「え、なに?田舎の人間が“東京の子はすごいね〜”って褒めてくるやつ?」
「うん、島民代表として尊敬してる」
「その代表、VRで世界爆破してるんだけど!?」
「でもラグってる間は世界の真理見えてる気がするよ……時間止まるし……」
「やめて!中二病っぽくなるからやめて!」
スライムを数匹倒しながら、俺たちはゆる〜く進んでいく。
足元からヌルッと何かが這い上がるような気配――でも、それに反応する頃にはもう俺の剣がブン!と振られてる。
「あ、今またラグった?」
「え?わかんねぇ……けど気づいたら2匹消えてた」
「……まじで天然災害じゃん、アンタ」
「でもこのゲームのいいとこは、**“島でも強くなれる感”**あるよな」
「そういうCMありそうだな……“ラグでも夢は掴める!”みたいな」
「それだ!!キャッチコピーできた!!」
「ちょっとスライム倒すよりうるさいのやめて!笑」
なんだかんだで、俺たちは順調に進んでいった。
会話しながらでも敵を倒せるくらいには、もうコンビとして息が合っている……気がする。
「そういや、あの都会の学校って、あれだろ?“毎年東大〇〇人合格!”みたいなとこ?」
「そ。まわりめっちゃガチ勢ばっか。あたしだけ弓持ってVRで爆発されてる」
「ある意味一番強いじゃん」
「爆心地にな!!」
ユイがツッコミを入れると同時に、背後からスライムの奇襲。
が、その瞬間――
カイト「……っ!?」
「またラグったか!?」
「やばい、動けな……あ、復帰した」
気づいたら、周囲のスライムごと壁が崩れていた。
「うわ、ダンジョンの壁吹っ飛んだ!!」
「いや俺なにもしてない!立ってただけ!」
「その立ってるだけでフィールドが更地になるのやめて!!!」
*システムメッセージ:
“スライムのねぐら”をクリアしました。討伐数:39体(個人最高記録)
「えっ、スライムって20体くらいしか出ないはずじゃ……」
「壁の裏の控えスライムも巻き込んだかも」
「何それ!!裏ステージ先に爆破するのやめて!!」
⸻
こうして、俺とユイの冒険は少しずつ始まっていく。
……次は、もうひとり仲間が増えるらしい。
**「自称プロゲーマー(30代・謎のテンション)」**が、今この世界にログインしようとしていた――