第20話:そして旅は続く——第1部・完
ヴァルハラの試練を乗り越えたカイトたちは、神々の加護が宿る「空の大広間」へと足を踏み入れていた。
広大な空間に浮かぶ無数の島々、煌めく光の粒が空を舞い、どこからか神々の祝福を告げるような音楽が響いてくる。
「すご……なんか、RPGのエンディングっぽい……」
ユイがぽつりとつぶやく。
「いやいや、エンディングにはまだ早ぇよ。だって、俺らまだギルドも作ってねぇし!」
だいちゃんがパンツ一丁で誇らしげに仁王立ちしながら叫ぶ。いつの間にか彼の腰には“神々のブリーフ(伝説級防具)”が装備されていた。
「それ、やっぱり正式装備にしたんですね……」
先生が若干引きながらも、優しい笑みを浮かべる。
「ブリーフも進化するんだぜ……このゲーム、奥が深いわ……!」
そんなやり取りをよそに、カイトは静かに空を見上げていた。
この世界にログインしてから、様々な出会いがあった。
ラグとともに訪れる無敵の力。
制御できずに暴走し、それでも少しずつ仲間とともに進んできた日々。
そして今、ようやく「一人じゃない」ことを実感している。
「なあ、みんな」
「ん?」
「そろそろ、“俺たちのギルド”を作るのもアリなんじゃないかって、ちょっと思った」
「え、やっとその気になったの!?」
ユイがぱっと顔を明るくする。
「うむ、タイミング的には良いんじゃないかな。戦いを経て、信頼も深まってるし」
先生が静かに同意する。
「ただし、ギルド名は俺に考えさせてくれ。“ブリーフ・オブ・レジェンド”とか」
「却下でお願いします」
全会一致でノーが突きつけられただいちゃんが、天を仰いで崩れ落ちる。
そんな賑やかな仲間たちを見て、カイトは静かに笑う。
「……まだまだ、俺たちの冒険はこれからだな」
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■エピローグ
画面の外、現実の世界。
東の果ての孤島。相変わらず、電波は弱い。
それでも——。
「よし、今日もいっちょログインすっか!」
カイトがポンとVRゴーグルをかぶる。
ラグっても、ブレても、自分だけの冒険がある限り、彼は前に進み続ける。
この物語は、第2部へと続く——。




