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第1話:ラグの神、爆誕

ログインボタンを押した瞬間――

俺の視界は真っ白になった。


【接続中……】


音もなく、動きもなく、ただ、無機質な文字だけが浮かんでいる。

どうやら、島のネット回線ではこの程度の“遅延”は当たり前らしい。

俺は慣れていた。

……何せ、ゲームのダウンロードに3日かかった男である。


「まあまあ、急ぐ旅でもなし。のんびり接続を待とうじゃないか……」


その時、俺はまだ知らなかった。

“俺が止まっている間”、ゲーム内ではとんでもないことが起きていたことを。



VRMMO《VALHALLA》の初期エリア「初心者の森」では、今日も元気にプレイヤーたちが狩りに勤しんでいた。


その中でも特に注目を集めていたのは、フィールドボス「森の牙王(Lv.25)」との戦いだ。


「タンク、挑発よろしく!」

「ヒーラー、後方支援お願い!」

「あとちょっとで削りきれるぞ!」


緊迫する戦闘の最中――


ズドォォォン!!


突如、空から降ってきた“何か”が大地を揺るがした。

キャラ名「ka1to_Island」

初期装備。武器なし。レベル1。

だが次の瞬間――


ズバァァァァァン!!!


森の牙王、跡形もなく蒸発。

周囲のプレイヤーも、まるで台風に巻き込まれたように吹き飛び、ログアウトする者続出。

フィールドの木々が倒れ、地面に謎の亀裂が走る。


「な、なにが起きた!?」

「今の爆発、誰だ!?ボスが、ボスが一瞬で……!」

「てかあいつ誰!?レベル1!?うそやろ!?」


周囲の誰もが、パニックに陥っていた。


ただし――当の本人は、まだ何も知らない。



現実の俺。

ようやく接続が終わり、視界が晴れた。


「よし、入れた!……え?」


目の前に広がる光景。

地面に転がるプレイヤーたち、煙を上げるフィールド、そして沈黙するNPC。

まるで隕石でも落ちたかのような惨状だ。


「……バグかな?」


そうつぶやきながら、俺はゆっくりと歩き出す。

何もしていない。いや、本当に“俺は”何もしていない。

ただ、ログインして、立っていただけだ。


……ただ一つ、妙な違和感はあった。

足元が、ほんの少し浮いてるような感覚。

手を振っても、少し遅れて動くような妙なズレ。


――まさかこれが「ラグ」なのか?


でも、それを他人は誰一人気づいていなかった。

周囲には、**“俺は普通に見えている”**らしい。


ただ一人、NPCのおじいちゃんが震えながらつぶやいた。


「……まさか……神が……いや、ラグが……」


――俺はまだ知らなかった。

この時から、“ラグるたびに無敵かつ超火力”になり、

しかも“それを制御できない”という、とんでも仕様のキャラになっていたことを。


この日からプレイヤーたちは、俺をこう呼ぶようになる。


《ラグの神》


そして世界中の掲示板が騒ぎ始めた。


「なんかレベル1のプレイヤーがボス消し飛ばしてるんだけど!?」

「しかも本人、何もしてない顔で歩いてるんだが!?」

「VALHALLA史上初のチートじゃね?(※仕様)」

「公式、何してんだよ!」


その中で、俺は一人思っていた。


「……ゲームって、案外派手な始まり方するんだなぁ」

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