第16話:その名も「絆のミニクエスト」!仲間って、なんかいいよねってなる回
拠点村の掲示板に、小さなクエストが貼り出されていた。
【限定クエスト】「大切なものを探して」
内容:老人NPCの失くしたペンダントを探してください
難易度:★☆☆☆☆(とっても簡単)
報酬:おまけ程度の回復アイテムと、謎の称号
「え、なにこれ地味すぎない?」
「でも、なんか逆に気になるよな……“謎の称号”って」
「僕こういうの好きですよ。ちょっと心が温まるタイプのやつ、いいじゃないですか」
というわけで、カイト・ユイ・先生・だいちゃんの4人は、珍しくガチ戦闘ナシのほのぼの系クエストに向かうことに。
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■途中:川でヒント探し中
「なあユイ、さっきの話だけどさ」
「うん?」
「都会でひとりって、大変じゃない? 島にいた時より」
「うーん……まぁ、時々寂しくなるけど。でも、こっちに来たおかげで、こうやってまた一緒にゲームできてるし」
「そっか……」
「カイトこそ。ネット来たばっかで、いきなりこの世界に来て、大丈夫だった?」
「最初は、ラグってる間に変な称号ついて“回線神”とか言われたけどな」
「それ今もじゃん」
「くっ……!」
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■その頃:先生とだいちゃんも川のほとりで
「先生ってさー、リアルで真面目そうなのに、ゲームでは結構……なんか、抜けてるというか」
「それは褒めてます? 侮辱してます?」
「どっちもある!」
「じゃあ両成敗であなたを殴っていいですか?」
「痛いのはリアルだけにしてくださいぃいい!!」
だいちゃんの絶叫が谷間に響き、鳥が飛び立った。
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■クエスト完了時
4人が見つけたのは、木陰にひっそり落ちていた古びたペンダント。
NPCの老人に返すと、穏やかな笑顔で言われた。
「ありがとう。これは、昔一緒に旅をした仲間との思い出なんだ。——お前たちも、いい仲間じゃな」
「……」
報酬はしょぼいポーションだったけど、
4人は、なぜか少しだけ胸があたたかくなっていた。
《称号:「旅路のひととき」》
《効果:パーティメンバーとの絆に応じて、スキル発動時に小さな演出が出る(ただの演出)》
「えっ、これエモいやつ!?」
「派手さゼロだけど、ちょっと好きかも」
「うん……これ、悪くないね」
「ていうか、だいちゃんのスキル演出が爆音すぎるのなんで!?」
「俺の友情、爆発力高いから」
「物理で表現するなよ!」
——こうして、ひとつの小さなクエストが終わった。
戦闘はなかったけど、彼らの心の中にはちょっとだけ、強くなった「なにか」が残っていた。




