第11話:†奈落ノ焔†、再び! ボスより強い中二病
その日、パーティは新ダンジョン「常闇の回廊」に挑戦していた。
推奨レベルは高めだが、最近スキルを習得してノリノリのユイと、バグ技ラグ無敵のカイト、
謎に成長するだいちゃん(パンイチ)と、元†黒き月夜†の先生がいれば怖いものなし。
……のはずだった。
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■ ダンジョン:常闇の回廊
「ん……? なんか……空気が違う」
カイトが辺りを見回す。
「うっわ、真っ暗じゃんここ。見えねぇ……」
だいちゃんがいつもの軽口を叩くが、その瞬間。
ボウッ!!
黒炎をまとった長身の男が、回廊の奥から現れた。
「よう。†蒼刃の祈り†……随分と丸くなったな」
「出たわね……†奈落ノ焔†」
「うわああああ本当に†ついてるううううう!!!」
カイトとユイがもだえる。
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■ †奈落ノ焔†の紹介
見た目は20代後半くらい。黒いコートに片目を隠す銀髪。
武器は、燃える大鎌。
「俺の“焔”は、魂を刻む。お前のような“希望の祈り”など、この深淵では無力だ」
「自己紹介がポエムすぎる!?」
「何してる人なのこの人!?」
「元・高校の情報教師よ。授業で使うパワポのファイル名が毎回“闇夜に散る希望Ver3”とかだったわ」
「ダメだ、根が深い……!!」
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■ 戦闘開始……かと思いきや
「……で? なんで出てきたのよ」
先生が腕を組む。
「ふ……“常闇の回廊”には、我が【焔の輪舞】を伝える石碑がある。
だがそれには“蒼刃”の認証が必要だ……つまり、お前の手が――」
「パーティ組めばいいじゃない」
「……それだと……俺の存在意義が……!」
「普通に協力して!」
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■ 強制協力モード発動
結局、†奈落ノ焔†(本名:渡辺先生)は、一時的にパーティへ加入。
戦闘力は確かに高く、黒炎の大鎌は敵をまとめて薙ぎ払う。
「やば……エフェクトは超かっこいい」
「中二でも見た目は強いのな」
「おいそこ! “でも”って言うな。†焔†に謝れ」
「†焔†って誰!?」
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■ ボス戦:深淵の影獣
ボスは超巨大な影の獣。攻撃範囲が広く、動きも素早い。
「やば、攻撃届かねえ……!」
「カイト、行って!」
「よっしゃ、ラグ発動――!」
《接続中…》
――ゴゴゴゴ……
カイトがボスの懐にワープし、ユイの「魔貫必中矢」が喉元を貫く。
続けて†奈落ノ焔†の黒炎大鎌がトドメをさす!
「焔よ……その魂を、地に還せ……!」
「セリフ長い! ラグ終わるから早くして!!」
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■ ボス撃破後
《隠しスキル【黒炎連鎖】を取得しました》
(†奈落ノ焔†のみ)
「おい、こっちはなにもないのかよ!? 俺のラグ芸どこいった!?」
「私は? 必中の進化は!?」
「……俺だけか」
†奈落ノ焔†がなぜか切なそうにつぶやく。
「帰れー!!」
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■ ログアウト前の会話
「……あいつ、リアルじゃ結婚してんのよね」
葵先生がぽつりと言う。
「え!? まじで!?」
「奥さんの名前、“†紅蓮ノ氷華†”っていうゲームネームらしいわ」
「うわああああ夫婦で中二ううううう!!!」




