怪物幼女と呼ばれる少女
新作を投稿します。
規格外の超身体能力を有する少女の物語です。
読んでもらえたら嬉しいです。
私はトワ。
見た目は幼女だが、十五歳の乙女だ。
実は皇家の影の一員で、主に戦闘と護衛を担当している。
その理由は私が規格外の超身体能力を有しているからだ。
事の起こりは私の八歳の誕生日だった。
「どうしたんだろう。力が溢れてくる」
何故か身体能力があり得ない程に上昇した。
体力も回復力も桁違いだった。
屈強な大人でさえワンパンで気絶させたり、全力で半日走り続けても疲れなかった。
極め付きは即死する程の大怪我でも瞬時に治癒するし、手足が欠損しても瞬時に再生するようになっていた。
全ての状態異常も無効となる。
その代わりに身体が成長しなくなっていた。
「赦して、助けて、死にたくない」
「アンタだけは絶対に赦せない。地獄に堕ちろ」
「きゃあああ」
私は一人の女冒険者を殺した。
「三日以内に孤児院から立ち退け。逆らうなら孤児達を皆殺しにしてやるからな」
上等じゃない。
殺られる前に殺ってやるわよ。
犯罪組織の連中が無茶苦茶な要求をしてきたので、犯罪組織を壊滅させる事にした。
「首領さん、後はアンタだけだよ」
「俺達が幼女一人に殺られるなんて、絶対にあり得ねえ。お前、もしかして怪物王女かよ。いや違うな。確か怪物王女は少女の筈だ。お前は怪物王女の子孫の怪物幼女だな」
「やかましい。誰が怪物幼女だ。孤児院を潰そうとした事をあの世で後悔しな」
犯罪組織の連中を一人残らず撲殺してやった。
「犯罪組織が壊滅している」
「誰が殺ったんだ」
「一人の幼女らしい」
兵士たちが現場を調査している。
「三大犯罪組織の一つが壊滅しました。それも一人の幼女によってです」
皇帝に調査結果が報告された。
「その幼女を探し出し、皇家の影に勧誘しろ」
皇帝からトワを勧誘しろと命令が下った。
「そなたを皇家の影に勧誘したい。担当は戦闘と護衛だ」
「孤児院に援助をしてくれるなら、皇家の影に入ります」
「良かろう。そなたの表向きの身分はパワフル辺境伯家四女だ。既に辺境伯の許可は取っている」
こうして皇家の影の一員になった。
「残った二つの犯罪組織を壊滅させろ」
最初の任務は残った二つの犯罪組織の壊滅だった。
「お前は幼女の姿をした怪物だ」
「それが遺言ね。それじゃサヨウナラ」
一つ目の犯罪組織を簡単に壊滅させた。
「もしかしてお前が二つの組織を壊滅させたのか」
「正解よ。それじゃサヨウナラ」
二つ目の犯罪組織も苦労しないで壊滅させた。
「任務完了しました」
あっさりと最初の任務を完了させた。
そして今現在に至る。
「いよいよ入学ね」
「緊張するね」
同じ孤児院出身のカスミとアフタヌーンティーを楽しんでいる。
カスミは表向きは私の専属侍女だが、実は彼女も皇家の影だ。
カスミは自分の存在を隠す能力を有している。
私はルンバ公爵家令嬢カノン様の護衛が任務だが、カスミはランバ皇子の監視が任務だ。
「あの馬鹿皇子の監視なんて、憂鬱よ、不幸よ、地獄よ」
「御愁傷様、頑張ってね」
「任務を代わってよ」
「私に監視が務まると思う」
「思わない」
「アンタねぇ」
ハッキリ言って、ランバ皇子は完全に馬鹿皇子だ。
取り柄は顔だけで、頭は鈍いし、態度は不真面目だし、性格は最低だし、女癖が特に最悪だ。
あの馬鹿皇子の婚約者のカノン様は本当に気の毒だ。
「馬鹿皇子を始末してよ」
「拒否権を発動します」
カスミがとんでもない要求をしてきたが、拒否してやった。
「おい、此処は幼女の来る所じゃないぞ」
入学式会場に入ろうとしたら、いきなり幼女呼ばわりする馬鹿が現れた。
「い、痛い。おい、止めろ」
その馬鹿の右手を軽く握ってやると、大きな悲鳴を上げやがった。
「ぎゃあああ」
少しだけ力を強くしてやると、更に大きな悲鳴を上げやがった。
「今の悲鳴は何だ」
複数の教師らしいのが悲鳴を聞き付けて来たので、手を放してやった。
軽く闘気を放ってやったら、腰を抜かしやがった。
「私は十五歳だ。二度と幼女呼ばわりするな。それから告げ口するなよ」
耳元で囁くと、馬鹿は涙目で何度も首を縦に振った。
「トワ、やり過ぎ」
カスミが呆れた視線で忠告してきたが、無視してやった。
「怪物幼女だ」
「怪物幼女よ」
目撃者が居た為に周囲から怪物幼女呼ばわりされるようになってしまった。
「目撃者のせいよ」
「自業自得よ」
ド畜生。
目撃者の奴、呪ってやる、怨んでやる、報復してやる。
「それにしても何故に怪物幼女という二つ名で呼ばれるのかな」
「伝説の怪物王女に似ているからじゃない」
「伝説の怪物王女?」
「知らないの」
「うん」
「それじゃ教えてあげる」
「お願い」
「サファイア王国の第一王女エターナル様は怪物王女という二つ名で呼ばれて、王族からも、貴族からも、王宮の職員からも、国民からも、恐れられていたのよ。その理由は全ての物理攻撃、全属性魔法攻撃、毒・石化・呪いなどの状態異常を無効とし、魔力値が無限で、全属性魔法が発動可能で、身体能力が人の限界を超越していて、要するに全ての能力が規格外の怪物だったのよ。しかも成人の儀式を終えてからは成長が止まってしまい、それ以降は十二歳程の身体のままだったそうよ」
「確かに私と良く似ている」
だから皆が私を怪物幼女と呼ぶんだ。
ふざけるな、差別だ、理不尽だ。
理解はしたが、納得は出来なかった。
「その後サファイア王国を見限って、呪われた聖女カミュラと落ちこぼれ令嬢ローラと平民勇者ベルトを引き連れて、我が国に亡命して、冒険者となったらしいわよ」
「ちょっと待ってよ。成長しないのなら、不老よね。もしかしたら今でも我が国で生きているかもしれないわよね。もしかしたら私の母親って」
「・・・・あり得るかも」
「この話を止めようか」
「賛成、同感、止めよう」
トワとカスミは怪物王女の話を打ち切った。
「ハックション」
「エターナル、風邪でも引いたの」
「違うわよ。誰かが噂したのよ」
「そうよね。エターナルが風邪を引くなんて、絶対にあり得ないもんね」
「カミル、どういう意味よ」
「何とかは風邪を引かないって意味じゃないの」
「ローズ、喧嘩を売ってるの」
「三人共、いい加減にしろ」
「ベルン、いきなり大声出さないでよ」
「悪かったわよ」
「反省します」
「次の仕事はサファイア王室からの指名依頼だ」
「サファイア王室の依頼なんて却下よ」
「だけど内容は子供専門の人身売買組織の壊滅だ」
「それを早く言いなさいよ。子供専門の人身売買組織の壊滅なら話は別よ。もしかしたらトワの行方が分かるかもしれないのよ。絶対に依頼を受けるわよ。但し私は依頼者とは会わないわよ」
エターナルの身体から物凄い殺気が周囲に放たれた。
「落ち着け。周囲の冒険者達が卒倒してしまっただろう」
周囲に居た冒険者達が卒倒している。
中には失禁している男も居る。
「冒険者の癖に情けない」
「それでも男なの。軟弱者」
「ゴミ共はどうでも良いから、急いでサファイア王国に向かうわよ」
「分かった」
「了解」
「オッケー」
エターナル達はサファイア王国に向かって出発した。
怪物王女を詳しい知りたい人は『狡猾で腹黒な皇女は野望達成の為に隣国の怪物王女と呪われた聖女と落ちこぼれ令嬢と平民勇者を亡命させる』を読んで下さい。